バリアフリーのトイレへリフォームする前に知るべき10の項目(基準や寸法等)

バリアフリーのトイレへリフォームする前に知るべき10の項目とは

バリアフリーというと特別なものに感じる方もいるかもしれませんが、今は健康な家族も、病気や事故にあう可能性や、いずれは歳をとり高齢者になって体力が落ちていくということは想像に難しくありません。

段差解消などの物理的障壁だけでなく、心理的障壁も含めて除去するものをバリアフリーデザインといいます。

お年寄りや介護が必要な家族、小さな子供まで安全に暮らせるように家のバリア(障がい、あるいは不自由)を少しでも取り払って配慮をすることで、家族全員が快適に安心して暮らせる、一生ものの住まいにしたいですね。

では具体的にどのようにすれば安全な家にできるのか、部屋や設備の詳しい寸法まではなかなかわからないという方も多いと思います。

今回はトイレ空間のバリアフリーに焦点をあてて、一般的な基準から、車いすの方、介助が必要な方、そうでない方まで、詳しく解説していきます。

高齢者というと一般的に60代、70代以上ととらえがちですが、実は視力や聴力の低下は40代から始まっているといいます。

働き盛りの人にとっても、バリアフリーに配慮した住まいは毎日を快適に過ごせる空間になりますね。

これから解説する基準寸法から便器、手すり、出入口、設備、費用のことまで知れば、それぞれのご家庭に合ったバリアフリートイレを計画できるでしょう。

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介護においての排泄計画は最も重要

介護において排泄が自立できるかできないかは、人間の尊厳に関わる重要な要素。

本人や介助者の排泄の負担が最小限に抑えられる配慮が必要ですよね。

しかし、トイレに関わる不満・不便はデリケートな話題であるため、なかなか本人の意向を聞き出しにくいという問題があったりもします。ですので、様々な事例を良く知る専門家の意見を聞くなどして失敗しないトイレ・リフォームにしたいものですね。

介護の場面で、もしも十分な配慮なくリフォームがなされてしまうと、本人がトイレに行くことに非消極的になり、次第にベッド周辺での排泄行為しかできなくなり、結果として寝たきりの生活を誘発してしまうことにもなりかねないため、正しい知識を知ることがとても必要になります。

そこでバリアフリートイレの基準寸法や、留意点について確認していきましょう。

トイレをバリアフリーへ。抑えたい10項目を紹介

1. バリアフリートイレの配置場所は寝室の近くに

高齢者はトイレに行く頻度が高くなるので、トイレと寝室の距離を短くして移動や移動介助が容易にできるようにしましょう。

トイレと寝室を隣接させたり、寝室から扉1枚で直接トイレに行けたりするような平面計画にすることが大切です。

2.バリアフリートイレの基準寸法

排泄動作が自立している場合

高齢者や障がい者は筋力が衰えているため、同じ姿勢を保持する能力が弱まります。

ですので、和式便器の使用が困難です。

和式便器の場合は、立ち座りの動作が楽な洋式便器への交換が必須です。

ここからは洋式便器を前提とした基準寸法をまとめていきます。

洋式便器の必要寸法

排泄動作が自立している場合、トイレの間口は壁芯から壁芯で

間口910mm×奥行き1,365mm(一般的なスペース)の広さ

でよいとされています。

また、奥行きが1,515mmあれば、立ち座り動作がゆったりでき、間口を1,515mmに広げると、介助が必要となった場合にも対応できます。

洗面カウンターをトイレ内に設置すれば、伝い歩きの手がかりとしても利用できます。

介助が必要になった段階で取り外して、介助スペースを広げることもできるので安心です。

排泄動作要介助の場合

便器側方および前方に500mm以上の介助スペースを確保します。

トイレの大きさは壁芯から壁芯で1,515mm四方(一般的なスペース)になります。

奥行きが1,820mmあれば、前方介助が行いやすくなります。

3.車いすを使用する場合の基準寸法

自走用車いすと開口部

奥行きが1,820mm、出入り口の有効開口幅員が800mm

あれば、前方アプローチによる自走用車いすが使用できます。

介助用車いすと開口部

奥行きが1,820mm、出入り口の有効開口幅員が750mm

あれば、介助用車いすが通行できます。

4.便器

トイレの間口を広く取る場合、便器の位置は介助スペースを便器の左右どちらにとるかということを検討してから決定します。

せっかく間口を広くとっても、便器を間口中央に配置したのでは、介助スペースが確保できず、手すりにも手が届かないなど、意味が無くなってしまうので、注意しましょう。

片側が麻痺している人の場合、介助者が患側に立って介助することを基本としてスペース確保の検討をします。

一般的な洋式便器の高さは370~390mmです。立ち座り動作は座面高さが若干高いほうが行いやすいです。車いす使用者用は450mm(車いす座面と同じ高さ)にすると車いすに移乗しやすいです。

車いすが便器に十分接近できるように、便器下方のくびれが大きいものを選びましょう。

座ったりする動作が難しいようであれば、電動で昇降する便座も登場していますので検討してみてはいかがでしょうか。

また、便の色を確認しやすいように、便器内側は白色にします。

温水洗浄便座は、排泄の後始末を簡略化できるので高齢者にも適していますが、下半身に麻痺があると状況の確認が難しいため、介助者と一緒に確認しましょう。

高齢者はリモコン操作など、機能を使いこなせない場合もあるので、事前に確認してから導入するか判断するとよいですよ。

5.手すり

種類は、

  • 立ち座り用の縦手すり
  • 座位保持用の横手すり
  • 双方を合わせたL型手すり
  • 車いす使用者に適した可動式手すり

などがあります。

横手すりは便器の中心線から左右対称に350mm、高さは車いすのアームレストと同じ高さになるよう、便座面から220~250mm上方、介助スペース側は可動式にするとよいでしょう。

縦手すりは、便器の先端より150~300mm前方、上端は立位姿勢の肩の高さより100mm上方までに設置します。

身体機能の低下に伴い、前かがみの姿勢のままでも手すりを握りやすいように、便器から遠く、低い位置に設置すると使いやすくなります。

可動式手すりは、横手すりを便器両側に固定すると、車いすなどから便器へ移乗したり介助の際に邪魔になるので、片方は可動式にします。

手すりの直径は、握りやすい28~32mmとしましょう。

手すりの材質は、触感が冷たい金属製よりも木製や樹脂被覆製のものにします。

将来の設置位置の変更も考慮して、手すりの取り付け下地補強は広範囲に施した方がよいでしょう。

6.出入口

出入り口の段差は解消し、建具は引き戸とします。

開き戸にしなければならない場合は外開きにします(廊下の引き戸は部屋側に開くようにしましょう)。

開き戸を内開きにしてしまうと、トイレから出る時に狭くなり、動作が大変になります。また、トイレ内で具合が悪くなって倒れた時に外から救出できなくなってしまうので避けましょう。

7.臭いや排水音への配慮

寝室に隣接すると、排水音や臭気が気になることもあるので、消音型便器や、換気・消臭の付いた便器にするのが望ましいですね。

8.暖房機器の設置

冬期間は急激な温度差が大変危険になります。

心疾患や急性の呼吸器疾患を防止するため、トイレへの暖房設置が必要です。

室暖房と暖房便座の併用を検討しましょう。

パネルヒーターのような輻射暖房を足元付近に、壁に埋め込んで設置するのが最も望ましい環境です。

できれば居室と同じ室温を保つようにするとよいですね。

9.費用は専門知識のある業者で無料見積もりをしてもらいましょう

バリアフリー・リフォームの予算が事前にわかりづらいのは、バリアフリーが必要となる方の障がいがどの程度かや、お住まいの状況によってそれぞれ改修内容が異なること、そして公的な助成金が適用されるかどうかによっても大きく変わってくるためです。

「トイレの手すり取り付けは5万円だった」と知人に聞き、「5万円なら」とリフォームを依頼したところ、現場は手すりの設置によってドアが開閉しにくくなることがわかり、ドアを引き戸に取り替えると総額30万円かかったという事例もあります。

一方で、自治体独自の補助金制度を利用できたので、50万円くらいの予算を考えていたバリアフリー工事が半額程度の費用で済んだという事例もあります。

これらの事例のように、事前に考えていた予算と実際に工事を依頼した際の価格に大きく差が出ることがあります。

特に介護認定を受けている方、障がい者手帳を持っている方は、行政の補助制度がありますので市町村にまず確認しましょう。

また、介護認定を受けていなくても利用できる補助金制度がある自治体もあるので、お住まいの地域の制度を調べてみるとよいでしょう。

自分では詳しいことがなかなかわからないという場合は、リフォーム業者に一度無料見積もりをしてもらい、ご自宅の改修状況を金銭面も含めて検討することもできますので、一度相談してみることをおすすめします。

10.リフォームではトイレと洗面・脱衣所をワンルーム化する方法も

トイレスペースは、できれば広いほうが本人も介助者も楽ですが、限られた居住空間でトイレに広い空間を用意できるご家庭はそう多くありませんよね。

したがって、スペースを広げるリフォームでは、隣接の洗面所や脱衣所をワンルーム化して、アコーディオンカーテンで仕切るなどし、介助スペースを確保する方法もあります。

戸建て住宅で、トイレから外の敷地に余裕がある場合、外側にトイレを拡張することも可能か検討するとよいでしょう。

まとめ

トイレのバリアフリー化で抑えておきたいことをまとめておくと、

  • トイレは寝室の近くに配置
  • 出入口は引き戸
  • 本人や介助者が不自由なく動ける広さ
  • 握りやすい位置に手すりを設置
  • 便器は座面高さが若干高い方が立ち座りしやすい
  • 臭いや寒さ対策に換気・消臭・暖房設備を設置
  • 費用面では介護認定、障がい者手帳、自治体独自の補助金制度も確認
  • トイレ内に介助スペースを確保できない場合は、洗面・脱衣所とワンルーム化する方法も

以上のことに配慮して、失敗しないバリアフリートイレを計画しましょう。

トイレは一日に何度も、場合によっては夜中にも行く場所ですし、後始末も身体の自由がきかなくなってくると大変なものです。

細かい配慮をすることで、事故やケガを防止し、大切な家族が毎日安全に暮らせるようにしたいですね。

使う人に寄り添い、将来もしっかりと計画した、バリアフリーなトイレをぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

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