日本ではこれまで、住宅は築30年も経てば「古くなったから、そろそろ建替えようか」と考えられることが多く、実際に取り壊された家の平均築後年数も30年と短命でした。
最近では人口減少で空き家も多いため既にある住宅をリフォームして利用しようと思っても、構造や性能上の理由でやむ終えなく取り壊すこともあります。
そこで「世代を超えて長い期間利用できるいい家をつくろう!」とスタートしたのが長期優良住宅です。
では具体的に、長期優良住宅とはどんな制度なのか、9つの認定基準とメリットデメリットを紹介します。
この記事の目次
長期優良住宅制度とは?4つの大きな特徴
長期優良住宅制度は「長期優良住宅の普及促進に関する法律」に基づき、平成21年6月より新築を対象とした認定がスタートしました。
平成28年4月には既存住宅の増築・改築を対象とした認定もはじまり、いまでは、持ち家や分譲住宅として新築される戸建・集合住宅のうち、およそ5件に1件が長期優良住宅の認定を受けています。(平成29年度実績 国土交通省 住宅経済関連データより)
長期にわたって使用できるための認定基準には、大きく4つの特徴があります。
- 長期に使用するための構造及び設備を有していること
- 居住環境等への配慮を行っていること
- 一定以上の住戸面積を有していること
- 維持保全の期間、方法を定めていること
これらの基準を満たした住宅として、着工前にまでに申請し認定審査を受けます。
9つの認定基準がある
それでは、具体的に新築の場合の認定基準を見ていきましょう。
1.劣化対策
構造躯体とは、建物の構造を支える、基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床、屋根、梁などの骨組みをさします。
これらの部分が、通常に想定される維持管理下で、使用継続期間が少なくとも100年程度となる様に、建築されることと定められています。
例えば木造の場合は、床下や小屋裏に点検口を設置することや、点検のために床下空間に一定の高さを確保することなどで、維持管理しやすいつくりにする基準があります。
鉄筋コンクリート造では、強度に関わるコンクリート内の水とセメントの比率や、かぶり厚と呼ばれる、コンクリート内の鉄筋の配置についての基準があります。
2.耐震性
構造や強度によって異なりますが、大きな地震が起きても、生命を守り、また改修を行えば利用できる程度の損傷ですむような強度にするための基準があります。
具体的には、耐震等級2や、住宅品確法に定める免震建築物であることなどの基準が設けられています。
関連記事:耐震等級付の住宅はメリットある?調べ方や等級123の特徴や違いを解説
3.維持管理・更新の容易性
構造を支える建物の骨組みを壊さなくても、配管の点検交換を行えるつくりになっていることなどの基準があります。
4. 可変性
※共同住宅と長屋のみ
人生100年時代といわれ、ライフスタイルや家族構成、住み替えによって居住する人や使用用途も変わる可能性があります。
建物は壊さなくても、こうした変化し対応できるつくりにしておこうというのがこの基準です。
具体的には、間取り変更で配管の位置を大きく変えるためには床下の高さが必要となるため、床を上げますが、その時に天井が低くなってしまうことがないようにあらかじめ高さを確保する基準があります。
5. バリアフリー性
※共同住宅と長屋のみ
集合住宅の共有部分で、車いすや介助者がある場合でも通行を容易にし、転倒や転落のないように設けられている基準です。
具体的には、共用廊下の床に段差がないこと、段差がある場合にはスロープなどを設けること、手すりの位置などの基準があります。
他にも、共用階段の幅と勾配等、エレベーターの開口幅等について必要なスペースを確保するために基準が設けられています。
6. 省エネルギー性
建物の断熱性を高めて、冷暖房費用を抑えるための基準です。
外気に接している屋根、床や土間、壁や窓などの、熱の伝わりやすさの数値に基準があります。また、窓、玄関などの開口部からより熱が伝わりやすいことから開口部の面積割合の基準や、結露防止策についての基準があります。
7.居住環境
地域によって、地区計画や景観計画、条例によるまちなみ等の計画などで、敷地、構造、設備、建物の形態や意匠の制限などが定められている場合は、それらに適合し認定を受ける必要があります。
8.住戸面積
- 戸建住宅 75㎡以上
- 共同住宅 55㎡以上
地域の実情に応じて上記の面積要件は引き上げ・引き下げが可能となっています。
9.維持保全計画
構造耐力上主要な部分や、雨水の侵入を防止する部分、給水・排水の設備について、点検の時期と内容を定め、少なくとも10年に1度の点検を実施することなどの基準があります。
長期優良住宅のメリット ~5つの優遇~
長期優良住宅の認定を受ける住宅は、さまざまな点で優遇を受けることができます。
1)地域型住宅グリーン化事業(長寿命型)の補助金
補助対象経費の1割以内の額で、かつ住宅1戸当たり上限110万円を受けることが可能です。
※施工業者の補助金活用実績によって、100万円となる場合があります。
※上記は2019年度の内容。年度毎に策定されますので、最新の内容は施工会社などよりお確かめください。
2)住宅ローンの金利引き下げ
質の高い住宅取得を応援するフラット35S(金利Aプラン)
→ 借入金利を当初10年間、年0.25%引き下げ
※2020年3月31日までの申込受付分に適応
※フラット35Sには予算金額があり、予算金額に達する見込みにより受付が終了する場合があります。
詳しくは、住宅金融支援機構のホームページ、フラット35Sよりをお確かめください。
3)税の特例措置①
所得税から税額控除される住宅ローン控除の金額が、一般の住宅に比べて多くなります。
長期優良住宅: 控除期間10年×住宅ローンの年末残高等の1%。最大で年間50万円迄、10年間の最大5000万円迄
※上記は2021年12月31日までに居住した場合の基準です。
詳しくは国税庁のホームページよりご確認ください。
4)税の特例措置②
所得税の他にも、登録免許税、不動産取得税、固定資産税でそれぞれに優遇が受けられます。
登録免許税の税率の引き下げ
保存登記
0.15% → 0.1%
移転登記
0.3% → 0.2%(戸建)
0.3% → 0.1%(マンション)
不動産取得税の課税標準からの控除額増額
控除額1200万円 → 1300万円
固定資産税の減税措置(1/2減額)適用期間の延長
戸建 1~3年間 → 1~5年間
マンション 1~5年間 → 1~7年間
5)地震保険の割引
所定の確認資料を提出することで、耐震等級に応じた保険料割引を受けられます。
耐震等級2 → (割引率)30%
耐震等級3 → 50%
免震建物 → 50%
関連記事:耐震等級付の住宅はメリットある?調べ方や等級123の特徴や違いを解説
長期優良住宅のデメリットもある?
これらの認定基準を満たす長期優良住宅を建築するには、一般住宅よりも建築費用が掛かります。
申請に際しても申請費用が掛かり、手続きには時間を要します。
建築後も、長期優良住宅として申請時に策定したように適切に維持管理していくことが大切になりますから、修繕コストも掛かります。
限られた予算とスケジュールの中で住まいを考えるときには、これらがデメリットとなっています。
メリット、デメリットをしっかり把握し長期優良住宅を検討しよう
長期優良住宅を考えるとき、金銭面だけを見れば、必ずしもメリットが大きいとは言えないかもしれません。
しかし50年後の暮らしや、長く使用できる建物の構造や性能から得られる安全性と快適性、そして何より住宅を次世代に残す資産だと考えるならば、魅力的な住まいと言えるのではないでしょうか。
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