スレート屋根の種類や特徴解説。メリット・デメリットや必要メンテナンスとは

スレート屋根の種類や特徴解説。メリット・デメリットや必要なメンテナンスとは

屋根材として使われる素材には、古くから使われている「瓦屋根」以外にアルミやガルバリウム鋼鈑を使った「金属屋根」や「スレート屋根」があります。

「スレート屋根」は、どんな素材でどのような特徴があるのでしょうか?メリットやデメリット、主なメーカーや商品、メンテナンスの方法と価格についてまとめました。

関連記事:【こんな症状は要検討】スレート屋根の塗り替え・塗料の選び方と補修費用

この記事の目次

スレート屋根とは?

「スレート屋根」には、

  • 天然スレート屋根
  • 化粧スレート屋根

の2種類があります。天然スレート屋根の素材は粘土板岩の薄い板の天然素材です。

東京駅の屋根などに使われていますが、高価なため、一般的の住宅などではあまり使われる材料ではありません。

一般的にスレート屋根と呼ばれている屋根材は、「化粧スレート屋根」です。

化粧スレート屋は「カラーベスト」や「コロニアル」と呼ばれることもありますが、これは化粧スレート屋根の商品名です。

化粧スレート屋根の素材やメリット、デメリットを見てみましょう。

化粧スレート屋根の素材

化粧スレート屋根は、繊維状の素材をセメントに混合し平板状に成形した工業製品です。化粧スレート屋根の素材は、使われる繊維や基材の種類により製品の特長が違います。

石綿(アスベスト)スレート

石綿スレートはセメントに石綿(アスベスト)を混合している化粧スレート屋根材です。

ただ、石綿(アスベスト)の健康被害が問題となり、平成18年以降は石綿(アスベスト)の使用量が制限されています。

製品重量の0.1%を超える石綿(アスベスト)の使用や製造が禁止され、現在は製造されていません。

石綿スレートは平成18年まで多く使用されていたため、廃棄やメンテナンス、リフォームを行う場合は市町村への届出が必要な場合があります。また、安全な施工となるように十分な配慮が必要です。

無石綿(ノンアスベスト)スレート

無石綿スレートは、石綿(アスベスト)の代わりにパルプなどの繊維とセメントを混合して製造されたスレート屋根です。

現在、主流となっている化粧スレート屋根で、形状やカラー・デザインが豊富にあります。基材には、硬質木片セメント板やアスファルトが使用されています。

化粧スレート屋根の特徴

化粧スレート屋根は工業製品であるため、天然スレート屋根や瓦屋根、金属屋根にない特徴を持っています。

① 工業製品のため、製品が安定している

製品の大きさや厚みなどの寸法が一定している。

② 厚さが薄い

工業製品のため、天然素材のスレート屋根と比較すると薄い形状になっています。厚さは5㎜前後です。

③ 軽い

素材も軽く、厚さも薄いため、重量が軽く、屋根全体の重さを軽くすることができる。

④ 形状・色が豊富

工業製品のため、形状や色が豊富に作れる。

⑤ 価格が安く、安定している

原材料の価格に左右されることが少なく、屋根材のなかでもリーズナブル。

化粧スレート屋根のメリット

化粧スレート屋根のメリットは、主に4つです。

① 運搬しやすく、施工性が良い

製品形状が安定していて厚さを薄いため、運搬しやすく(一度にたくさん運搬できる)、施工性が良い。

施工性が良いため、工事期間が短いというメリットもあります。

② 耐震性が高い

軽い素材のため、建物の耐震性が高くなる。

③ 施工を含めた、価格がリーズナブル

工業製品であり、輸送費が安く、施工性が良いため、いろいろな屋根材の中でもリーズナブルな素材。

④ いろいろな屋根デザインが作れる

スレートの形状や色が豊富なため、いろいろな屋根デザインに対応できる。和風や洋風、いろいろな外観デザインにあわせられる。

化粧スレート屋根のデメリット

化粧スレート屋根のデメリットは、主に4つです。

① 断熱性能が低い

化粧スレート屋根は素材の断熱性能が低く厚さも薄いため、瓦屋根と比較すると屋根全体の断熱性能が低くなります。

天井内や屋根直下の断熱を確実に行うことで、屋根全体の断熱性能の低さを補う必要があります。

② 割れたり、色褪せしたりする

他の屋根材と比較すると厚さが薄いため、施工中や点検時の踏み抜きなどにより割れたり、ヘアークラックが入りやすく、経年劣化による割れも発生しやすい。また、紫外線による色褪せもしやすい。

定期的な点検とメンテナンスを行うことで、割れによる雨漏りを防ぎ、きれいな状態を保つことができます。

③ 耐久性が低く、寿命が短いと言われている

割れや色あせが起きやすく、経年劣化の影響を受けやすいため 耐久性が低く寿命が短いと言われています。

定期的な点検と的確なメンテナンスを行うことで、寿命を長くすることが可能です。

④ 複雑な屋根や役物を多く使う場合は高額になる

化粧スレート屋根のメリットとしてリーズナブルなことがあげられますが、屋根の形状や施工方法によっては割高になるケースがあります。

谷や棟が多い複雑な屋根形状の場合、使用する材料が多くなり施工も難しくなるため、価格が割高になるケースがあります。

単純な屋根形状(切妻・片流れ・寄棟など)にすることでリーズナブルにできます。

また、屋根のデザイン性を高くするために、棟やケラバなどに役物(ケラバや棟を差し棟にする場合に使用する部材など)の化粧スレートを多用すると価格が高くなるケースがあります。

見積もり内容を細かく確認することで、価格をリーズナブルに抑えることができます。

化粧スレート屋根の種類:主なメーカーと商品

化粧スレート屋根の主なメーカーは、3社あります。

  • KEMWケイミュー株式会社
  • ニチハ株式会社
  • 田島ルーフィング株式会社

です。各メーカーの主な特徴と商品の種類をまとめました。

KEMWケイミュー株式会社の化粧スレート屋根の特徴と主な商品

ケイミューは、化粧スレート屋根の「コロニアル」を扱っていたクボタ株式会社と「カラーベスト」を扱っていいた松下電工株式会社が合併したクボタ松下電工外装株式会社が2010年に社名変更をした会社です。

ケイミューは化粧スレート屋根のトップメーカーで、商品量が豊富でデザインや価格帯も色々と揃っています。

ケイミューの化粧スレート屋根の商品名は「カラーベスト」で、その中に「グラッサ」、「遮熱グラッサ」、「クアッド」、「シャッフルカラー」などの種類があります。

特徴は、

  • 強くて軽い
  • きれいが長持ち
  • 選べるデザイン
  • 優れた防火性能

の4つです。基材に硬質木片セメント板を使用することで、無石綿で強くて軽い、防火性能優れた製品となっています。

(参考:ケイミュー(株)HP

① グラッサの特徴

グラッサは紫外線に強い「グラッサコート」で表層がおおわれているため、色変化が目立ちにくい商品で、屋根がきれいで長持ちするという特徴を持っています。

厚さ5.2~6.0mmで、カラーリングが豊富です。

② 遮熱グラッサの特徴

遮熱グラッサは、グラッサコートに赤外線を反射する特殊な顔料を配合した商品で太陽光の赤外線を反射する機能を持っています。

屋根から入ってくる太陽熱を軽減できるため、夏の暑さを和らげる効果があります。

③ クアッド

クアッドはカラーベストのベーシックな商品で、表面と同色の無機採石層と耐候性の高いアクリルコートで色落ちなどの劣化に対応しているという特徴をもっています。

トップコートが色落ちしても下の無機採石層の色が色感をキープします。

厚さ5.2mmで、12色~のバリエーションやシンプルなデザインで和風・洋風でどんな住宅にもマッチする商品です。

④ シャッフルカラー

シャッフルカラーは、グラッサシリーズのコロニアルグラッサ16色とグラッサ4色を自由に組み合わせて、屋根のデザインする商品です。

特徴的な屋根デザインを作ることができます。

シャッフルカラー

(参考出典:ケイミューHP

ニチハ株式会社の化粧スレート屋根の特徴と商品

ニチハは、屋根材以外に外壁材や外観部材を多く取り扱っている外装材総合メーカーです。屋根材に耐候性の高いアスファルトを使用しています。

軽量で、耐候性が高く、衝撃に強いことが特徴で、商品は「アスファルトシングル アルマ」の一種類です。

① アスファルトシングルアルマ

アスファルトシングルアルマの特徴は、CO2の排出量が少ない環境に優しいことです。

原料の天然石をセラミックコーティングすることで、自然な美しい色合いを維持しています。

自然な素材感のあるカラーで、色々なデザインの屋根を作ることができる屋根材です。

アスファルトシングルアルマ
(参考出典:ニチハHP

田島ルーフィング株式会社の化粧スレート屋根の特徴と商品

田島ルーフィングは、内装床材、屋上防水材、屋根材を製造している防水材のトップメーカーです。

屋根材は、耐候性の高いアスファルトを使用しています。軽量で、耐候性が高く、衝撃に強い特徴を持っています。

商品は「アスファルトシングル」と「アスファルトロフティ」の二種類です。

① アスファルトシングル

アスファルトシングルは、ガラス繊維にアスファルトを含浸し、コーティングされた基材に、スレート砂・色付けの焼成砂を圧着して製造されています。

このため、耐候性が高く、色落ちがしにくいという特徴を持っています。

田島ルーフィングは防水材メーカーであるため、改質アスファルトルーフィング「ガムクールM」と組み合わせて施工することで、急な勾配や緩い勾配、曲面の屋根など、防水が難しい屋根の防水性能を高くする施工ができます。


(参考出典:田島ルーフィングHP

② アスファルトロフティ

アスファルトロフティは、厚手のガラス繊維の基材をブローンアスファルトでコーティングした商品です。アスファルトシングルと比較すると2倍高い耐久性を持った商品です。

化粧スレート屋根の価格

新築の場合の屋根材価格は、瓦屋根(日本瓦)>瓦屋根(セメント瓦)・金属屋根(ガルバリウム鋼鈑)>化粧スレート屋根の順番で高くなります。

※屋根材の目安施工価格
・瓦屋根(日本瓦):8,000~10,000円/㎡
・瓦屋根(セメント瓦):6,000~8,000円/㎡
・金属屋根(ガルバリウム鋼鈑):6,000~8,000円/㎡
・化粧スレート屋根:6,000~8,000円/㎡

屋根材の施工価格は、材料費+施工費+直接経費で見積もられます。シンプルな屋根形状は材料費も施工費も安くなるため、リーズナブルな価格になります。

屋根の施工価格は、屋根の形状と屋根面積がわからないと正確な金額はわかりません。相見積りをとって比較することで、適正な価格がわかります。

化粧スレート屋根の寿命とメンテナンス

化粧スレート屋根は、定期的に状態のチェックし、メンテナンスを行うことで良い状態を長く保つことができます。

化粧スレート屋根の定期チェックと寿命

化粧スレート屋根の状態は下記の内容をチェックしましょう。

  1. 割れているところや細かいひび(ヘアークラック)がはいっているところはないか
  2. はがれているところはないか
  3. 浮いているところはないか
  4. 苔が発生しているところはないか
  5. 縁きり部分にゴミはつまっていないか
  6. 色褪せや色落ちの状態はどの程度か

化粧スレート屋根の標準的な寿命は、15~20年と言われています。これはあくまでも目安で、建築地の状況や定期的な補修、メンテナンスを行うことで寿命を延ばすことができます。

化粧スレート屋根のメンテナンス

化粧スレート屋根のメンテナンス方法には、再塗装や葺き替えなどいくつかの方法があります。それぞれの方法を解説します。

① 化粧スレート屋根の再塗装工事

再塗装は、化粧スレート屋根をメンテナンスする方法での中で、最も手軽で費用がリーズナブルな方法です。

屋根を再塗装するためには足場が必要となります。そのため、多くの場合は費用を安くするために外壁の再塗装工事の時に一緒に屋根の再塗装工事が行われています。(足場費用は20~30万円かかります

再塗装工事は、まず点検を行い割れていたり浮いていたりする化粧スレートを1枚ずつ交換します。また、屋根回りの鈑金金物の確認と補修を行います。

その後下塗り・中塗り・上塗りの塗装を行い、雨の通るすき間を作る縁切り作業を行って、工事が完了します。

約20坪(約60~70㎡)の屋根の再塗装工事費用は、30~45万かかります。費用は、屋根の補修費用と塗装の種類により変わります。(足場費用は別)

関連記事:【こんな症状は要検討】スレート屋根の塗り替え・塗料の選び方と補修費用

② 化粧スレート屋根の上に化粧スレート屋根を葺く、重ね葺き工事

古い化粧スレート屋根をそのまま残し、その上に新たな化粧スレート屋根を葺く補修方法があります。

古い化粧スレート屋根を撤去する必要がないので、剥がして葺きかえる工事より費用がリーズナブルにできます。

約20坪(約60~70㎡)の屋根の重ね葺き工事費用は、50~80万かかります。費用は、屋根の形状や新しく葺く化粧スレート屋根の種類により変わります。(足場費用別、20~30万円)

③ 違う素材の屋根材を新しく葺くカバー工法で屋根全体をリフォームする工事

既存の化粧スレート屋根の上に、そのまま新しい違う屋根材で屋根を葺く工法です。

既存の化粧スレート屋根を剥がす葺き替え工事より費用はリーズナブルですが、下地材の位置や状態の確認が必要です。

また、屋根の重さが増加するので、屋根や小屋裏の状態の確認や屋根の重さが増える構造確認が必要です。

カバー工法では、アルミやガルバリウムなど軽い素材を使って工事をするのが一般的です。

約20坪(約60~70㎡)の屋根のカバー工法工事費用は、60~100万かかります。費用は、屋根の形状や新しく葺く屋根材の種類で変わります。(足場費用別、20~30万円)

④ 化粧スレート屋根を剥がして、新しい屋根に葺きかえる葺き替え工事

既存の化粧スレート屋根を剥がして、下地の野地板、ルーフィング(防水シート)の補修をしてから、新しい屋根材に葺き替える工事です。

必要があれば、野地板、ルーフィング(防水シート)も新しくします。

既存の化粧スレート屋根の撤去・処分費、野地板・ルーフィングの補修費用、新しい屋根材を葺く費用がかかるため、補修工事の中では一番費用がかかります。

費用がかかりますが、雨漏りや屋根の劣化の心配がなくなるリフォーム工事です。

約20坪(約60~70㎡)の屋根の新しい屋根に葺き替える工事費用は、70~120万かかります。費用は、補修範囲や処分費用、新しく葺く屋根の種類で変わります。(足場費用別、20~30万円)

まとめ

化粧スレート屋根はリーズナブルで施工性が良く、デザインが豊富なため、新築時に取り入れやすい屋根材です。

特徴やメリット、デメリットを良く理解した上で採用し、定期的なメンテナンスや適切な補修を行い、きれいで雨漏りの心配のない屋根を保つようにしましょう。