低炭素住宅の申請費用は?知っておきたい制度と適用条件

低炭素住宅の申請費用は?知っておきたい制度と適用条件

東日本大震災を契機としたエネルギー需要の変化や環境問題への関心の高まりにより、低炭素・循環型社会の構築は、国の大きな方針の1つとなっています。

低炭素住宅とは、上記の方針のもと国が定めた基準をみたし、低炭素建築物認定制度による認定を受けた住宅のことを指します。

つまり、「環境に優しい素材や工法を用いて建築物から排出される二酸化炭素の抑制に寄与すること」という国のお願いに応えた建築物を計画するということです。

では、具体的にどのような基準なのか、認定を受けることのメリットなどを詳しく見ていきましょう!

低炭素建築物認定制度とは?認定の対象となる4つの項目について

低炭素建築物認定制度とは、平成24年12月4日に施行された「都市の低炭素化の促進に関する法律」(エコまち法)に含まれる制度の一つです。

市街化調整区域内において、ある一定基準以上の「低炭素化のための措置が講じられた建築物の新築等」をすれば認定を受けることができます。

認定の対象とは

新築「等」と表記されている通り、対象は新築に限らず下記の4つとなっています。

  1. 建築物の低炭素化に資する建築物の新築
  2. 低炭素化のための建築物の増築、改築、修繕若しくは模様替え
  3. 低炭素化のための建築物への空気調和設備、その他の政令で定める建築設備の設置
  4. 建築物に設けた空気調和設備等の改修

新築時に考慮されていなくても、それなりの規模の改修であれば当てはまることの方が多そうですね。

エリアによっては認定を受けられないエリアもある

低炭素建築物認定制度の注意点は、エコまち法が「都市の低炭素化」を目的にしているため、認定の対象が市街化調整区域内に限られることです。

認定を受けようと検討している方は、まず対象区域内であるかを確認するところからスタートしましょう。

低炭素住宅の申請費用は?審査のための手数料がかかる

もう1つの注意点は、申請自体にコストがかかるという点です。

一戸建て住宅であれば、基本料金として50,000円(性能評価書の取得又は断熱性能基準の審査が省略できる場合は30,000円)がかかります。

その他事前相談等が必要になる場合は別途コストが発生します。

決して安くないコストですので、しっかりと認識しておきましょう。

細かいフローなどは、専用の案内サイトがありますので、是非参考にしてみてください。

低炭素建築物業務のご案内:https://www.sumai-info.com/examination/tanso.html

気になる認定基準とは?

ここからは国土交通省のパンフレットを参考に認定の基準について見ていきましょう。

https://www.mlit.go.jp/common/000996590.pdf

まず低炭素の定義は下記の3点を満たすことです。

  1. 省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を持つこと、かつ低炭素化に資する措置を講じていること
  2. 都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
  3. 資金計画が適切なものであること

この定義を満たす具体的に認定基準についてご説明します。

大きく定量的評価項目(必須項目)と選択的項目の2つがある

認定基準には、定量的評価項目と選択的項目の2つがあります。

最終的な認定には定量的評価項目を満たすことと、選択的項目の中から2つ以上を満たす必要があります。

定量的評価項目

定量的評価基準は下記の2つを満たすことが求められています。

  1. 省エネ基準と同等以上の断熱性能、日射熱取得性能が確保されていること
  2. 省エネ基準に比べて一次エネルギー消費量が−10%以上であること

選択的項目

選択的項目は下記の8つが候補となっています。

  1. 節水に資する機器の設置
  2. 雨水、井水または雑廃水の利用
  3. HEMSまたはBEMSを設置していること
  4. 太陽光などを利用した発電設備及びそれと連携した定置型の蓄電池設備の設置
  5. ヒートアイランド対策
  6. 住宅の劣化の軽減に資する措置の実施
  7. 木造住宅、もしくは木造建築物である
  8. 高炉セメント、またはフライアッシュセメントを構造耐力上の需要な部分に使用

実際の認定のハードルは低い!?

これだけ項目があると、認定を受けるにはそれなりにハードルが高いのでは、と思ってしまう方もいるかと思います。

結論から言うと、しっかり狙えばさほどハードルは高くないといえます。
なぜそうなのか、詳しく見ていきましょう。

定量的評価項目を満たすためのハードル

定量的評価項目は、国の省エネ基準と比較して同等以上であり、かつ一次エネルギー消費量が−10%以上を確保しているかという点でした。

現在の省エネ基準は平成28年基準といわれていますが、その基準値は平成25年に大幅に改正されたものの、断熱性能のレベルは平成11年からほとんど変わっていません。

基準としている数値が20年ほど前からほとんど変わっていないのです。

さらに、住宅設備メーカーや断熱材メーカーにとって省エネは最重要項目であり、日々開発競争を行っているため、非常に高い性能を有しています。

つまり、断熱材の性能や住宅設備の性能が国の省エネ基準を大幅に上回っているため、定量的評価項目に関しては、少し気にして機器や素材を選定すれば条件を満たすことは難しくないといえます。

選択的項目を満たすためのハードル

選択的項目は8つもありますが、前述した通り8つのうち2つを満たせば良いわけで、全てを満たす必要はないのです。

例えば、木造であるだけで選択項目の1つを満たすことができるので、残りの7項目から1つだけ満たせば良いということになります。

また、小さい設備投資でも満たせる項目もあり、例えば節水項目であれば節水型のトイレや水栓を採用すれば条件を満たすことが可能です。

しっかりと項目を見定めることで、認定のためにかかる手間やコストはさほど大きくないといえそうです。

認定を受けることによって様々な税優遇を受けられる

低炭素建築物認定を受けることにより、様々な税優遇などを受けることができます。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000134.html

住宅ローン減税

所得税から控除される住宅ローン減税額の上限が一般の住宅と比べて引き上げられます。

一般住宅の場合

住宅ローンの年末残高の1%(上限40万円)が10年間にわたって最大400万円の控除されます。

さらに、消費税の増税に伴い住宅ローン減税の拡充措置があり、控除を受けられる期間が3年間伸びます。

11年目〜13年目に関しては、住宅ローンの年末残高の1%(上限40万円)、もしくは購入価格(上限4,000万円)の2% ÷ 3のうち小さい方の金額が控除されます。

低炭素住宅の場合

住宅ローンの年末残高の1%(上限50万円)が10年間にわたって最大500万円の控除が受けられます。

こちらも、増税に伴い3年間の控除拡大措置が適用され、11年目以降も3年間にわたって、住宅ローンの年末残高の1%(上限50万円)、もしくは購入価格(上限5,000万円)の2% ÷ 3のうち小さい方の金額が控除されます。

つまり、最大で一般の住宅と比べて最大で100万円以上も多い税控除を受けることができます。

投資型減税

低炭素住宅を新築した場合に限られますが、性能強化費用として支出した額の10%分、所得税から控除を受けることができます。

性能強化費用は43,800円/㎡で試算されます。例えば300㎡の住宅であれば、

43,800円 × 300㎡ = 13,140,000円(=性能強化費用)

となり、その10%にあたる1,314,000円の控除を受けることができます。

この制度は一般の住宅にはない控除制度になりますが、住宅ローン減税と併用して利用することはできません。

ローンを組まない場合や、住宅ローン減税の恩恵が投資型減税と比較して小さい場合などに利用することをおすすめします。

登録免許税の税率低減

所有権の保存登記、移転登記をする際の登録免許税が一般住宅に比べて引き下げられます。

一般住宅の場合

  • 保存登記:0.15%
  • 移転登記:0.3%

低炭素住宅の場合

  • 保存登記:0.1%
  • 移転登記:0.1%

決して大きな数字ではないですが、利用できる制度は積極的に利用しましょう。

住宅ローンの金利引き下げ

低炭素建築物認定を受けた場合、住宅ローンの金利引き下げプラン、フラット35sの金利Aプランを適用することができます。

※フラット35sは年度予算があり、予算に達する見込みとなった場合受付を終了する可能性があります。

一般住宅の金利Bプランは金利引き下げ期間が5年間であるのに対し、金利Aプランは引き下げ期間が10年間であるため、5年長く金利引き下げが適用されます。

税控除はあるがあまりあてにしすぎるのはよくない?

ここまで様々な税控除について見てきましたが、場合によっては受けられるメリットは限られることも考えられます。

例えば住宅ローン減税ですが、一般住宅の場合も上限40万円の控除を受けられるので、低炭素住宅の恩恵を受けるには、それなりのローンを組まなくてならなりません。

簡単にいうと、大きな額のローンを組まないなぎり、一般住宅の減税範囲内で賄えてしまうことが多いということです。

低炭素住宅の投資判断をするには、しっかりと減税制度等を理解した上で精緻な試算をすることをおすすめします。

補助金を受けられる可能性もある

条件は限られますが、低炭素建築物認定を受けることによって、補助金を受けられる可能性があります。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000929.html

全ての低炭素住宅が補助金の対象となるわけではない?

その補助金は、「地域型住宅グリーン化事業」によるもので、低炭素住宅で補助金を受けるためには下記が主な条件となります。4つありますが、重要なところは上の2つです。

  • 新築であること(増築、改修、修繕等は対象外)
  • 主要構造部が木造であること
  • 主要構造部の木材は地域材を使用すること
  • 国の指定を受けた中小住宅生産者等により供給された住宅であること(参照:http://chiiki-grn.jp

低炭素建築物認定を受けるためには、木造や新築であることは条件の1つでしたが、補助金を受けるためには必ず満たさなくてはならない条件なので注意しましょう。

気になる補助金の額は

気になる補助金として受けられる金額は下記の通りです。

  • 補助対象経費の1割以内の額で、上限は1戸あたり110万円(施工事業者の補助金活用実績によっては上限100万円)
  • 主要構造部の過半に地域材を使用した場合は20万円を上限として加算
  • 三世代同居対応適用の場合には30万円を上限として加算

全てを満たせば、それなりの補助金を受けることができるようです。

ですが前述した通り、低炭素住宅全てが補助金の対象となるわけではないので、補助金をあてにする場合はしっかりを事前確認をしましょう。

まとめ

ここまで、低炭素住宅の概要から減税制度や補助金などのメリット、それぞれの注意点をまとめてきました。

1つ見失わないでいただきたいのが、低炭素住宅というのは投資をした分、質の良い住宅になっているという点です。

室内で快適に過ごせるだけでなく、省エネに特化した住宅ですので光熱費などのランニングコスト削減が期待できます。

長く住む家ですので、高品質で快適に過ごせるに越したことはありません。

そのための投資を減税や補助金で補填してもらえると思えば、長い目で見たときに良いお金の使い方なのではないでしょうか。