家づくりでは、工事費の他にさまざまな費用が掛かります。
その中の一つに設計料がありますが、提案された価格がはたして相場なのか、なかなかわかりにくいものです。
設計料は、依頼先のタイプや工事の規模などによって変わります。
また、設計料は、依頼先毎の家づくりの過程や特徴の違いでも異なります。
ここでは、設計料の依頼先別の相場と注意点を解説します。
この記事の目次
家の設計料には何が含まれる?
家を新築したりリフォームする際に、どのようにしたいのか要望を整理し、図面を作成して具体化する作業を「設計」といいます。
新築においては、
- 家の間取りを決める「基本設計」
- 具体的に工事をはじめるに際して、どの材質と寸法の部材を使うかといったことまでを決める「実施設計」
の2段階に分けて行われます。
あらかじめどのような家にするのかを考え、予算を左右する部材を決める重要な工程です。
よくモデルルームへ行くと、無料で間取り図を作成してくれることもありますが、これだけでは家は建てられません。建築基準法をはじめとした法規にのっとり、
- 敷地の中にどのような位置に建てるのかを記した配置図
- 各階の間取りを記す平面図
- 外から見た様子や高さ、窓の位置を記した立面図
- 縦に切断し高さ関係を記す断面図
- 部材の構成などを細かに記した矩計図
など、複数の図面をつくり、建て主との打ち合わせを重ね、建築基準法に適合しているかの審査等の申請手続きを行います。
建築の準備にかかるこれらの作業の対価が「設計料」となります。
施工に際して作成された全ての図面が、建て主に渡されないこともますが、設計者が建て主の要望を叶えるために、よりよい提案をするために、アイディアを練ったり様々な材料や事例を調べたり、沢山の時間と手間が掛けられています。
目に見えにくい工程ですが、家づくりの満足度を大きく左右する大切な作業なのです。
依頼先によって設計料の相場は違う。5つの主な依頼先とは
依頼先のタイプによって、設計作業の過程や期間、つくる図面の量、依頼形態などの差によって、設計料の相場には差があります。
依頼形態には、
- 設計と工事を一括で請け負う「工務店・ハウスメーカー」
- 設計監理を独立した立場で請け負う「設計事務所」
の2タイプがあり、家づくりの流れにも大きな違いがあります。
ここでは新築の場合の依頼先別の設計料の相場を見ていきましょう。
工務店
設計と工事を一括で請け負う工務店の設計料は、工事費の2~5%程度が相場です。
工事費が3000万円であれば、60万円~150万円程度。
金額に差は、設計作業の差であるというよりも、見積スタイルや考え方の違いである場合が多いようです。
設計料としては少額の場合でも、工事費用の中に見えない様に含めている場合もあります。
設計契約と工事請負契約を別に取り交わす会社と、着手金などを設けつつ契約は工事請負契約一本の会社となるタイプの会社があります。
工務店の場合は、設計期間はおよそ2~3か月程度、工事期間が3か月程度見込んでおきます。
地域密着で建てたあとも相談がしやすかったり、モデルルームや広告料といった経費が少ないため建築工事費も抑えられるのが特徴です。
ハウスメーカー
ハウスメーカーの設計料の相場は、工事費の2~5%です。
工務店と同様に、設計と工事を一括で請負うタイプです。
会社の規模が大きく独自の工法をもっていたり、保証やアフターサービスなどの体制が整っているのが特徴です。
一口にハウスメーカーと言っても、大きく分けて規格住宅、セミオーダー住宅、注文住宅の3つのタイプがあり、それによっても異なります。
規格住宅
あらかじめ決められた間取りや仕様の中から選んでいく住宅。
規格化されているため、設計期間や工事期間も短縮でき、設計料・工事費が最も抑えられます。
関連記事:規格住宅とは?そのメリット・デメリットなど押さえるべきポイント解説
セミオーダー住宅
規格住宅と注文住宅の中間に位置するタイプ。
間取りや外観デザインは、ある程度自由が利くが、設備などの仕様は決められた中から選んでいく住宅です。
フルオーダーの住宅よりも、コストや設計期間を抑えることができますが、一定の制限があります。
フルオーダー・注文住宅
基本仕様はあるのものの、間取りも仕様も自由に選ぶことができる住宅です。
その分、設計料も工事費が最もかかる傾向があります。
ハウスメーカーの設計料は工務店の場合と同様で、工事費の中に営業経費などと共に見えない部分に隠されている場合があります。
そのため特定の項目について値引き交渉をしても、あまり意味がありません。
またハウスメーカーの営業マンは、値引き交渉がある前提で見積もりをつくっていることも覚えておきましょう。
契約のとき「今回は特別に○○○万円お値引きさせて頂きます」というのは、よく行われているセールス手法なので動じないことです。
設計事務所
いわゆる「建築家」と呼ばれる人に依頼するパターンです。
設計事務所へ設計を依頼する場合には、設計・監理委託契約を締結し、施工者ではない独立した立場から、設計し工事を監理します。
設計事務所は、変形した敷地や難しい条件であったり、個性的なデザインやこだわりに対して提案力があるのが特徴です。
設計期間に6か月前後、工事期間も6か月前後かかります。
設計料の相場は、建築工事費の10~15%程度。
工事費用1億円であれば10%で1000万円、3000万円であれば13%で390万円、といった様に工事規模などによって、事務所毎で設計料率を設定しています。
独立したばかりで一人で行っている設計事務所は12%、人気で多忙であったり、複数のスタッフを抱える設計事務所では15%など、仕事状況や事務所の規模や体制によっても料金体系に差があります。
気になる設計事務所では、どのような料金体系なのか直接問い合わせてみましょう。
設計事務所は、建て主の要望に寄り添って設計料も建築工事費も大きくなる傾向にありますので、時間と予算に余裕がない場合には向きません。
工務店やハウスメーカーにはない設計提案が点が特徴です。
反対に、時間がかかるのは困る、予算オーバーは絶対NG、という方には不向きな依頼先といえるかもしれません。
リフォームの設計料の相場は?
リフォームは新築と比べて、規模も工期も短い一方で、壊してみなければ正確に把握できない部分が多く、非常に手間がかかります。
予想していないかった劣化箇所がみつかったり、想定通りに工事が進まない場合に備えて、新築よりも多めに経費を確保していることが多いのが特徴です。
リフォームの設計では、既存の状態について調査し、何を残し何を新たにするのか検討します。
実は新たにつくり直した方が簡単なケースも多々あります。
新築より手間がかかるのに、大きな報酬が得られないのが、リフォームなのです。
リフォームの設計料は、依頼先のタイプと工事規模や内容によってかかる場合と、別の形で見積もりに含まれている場合があります。
それでは、タイプ別に設計料の相場を見ていきましょう。
工務店・ハウスメーカー・リフォーム会社
図面を引かない工事など多くの場合は、「諸経費」として5~15%の工事管理費や営業経費と合わせて、見積もりに含まれています。
確認申請を要するような増築や、大規模な間取り変更であったり1000万円超~の工事費になる場合などは、独立した設計料となる場合があります。
設計事務所
新築よりも設計料の%は大きく設定している事務所が多く、工事費の15~20%程度が相場になります。
併せて最低設計料150万円などと決めている設計事務所もあります。
設計料Q&A
Q.設計料は、いつ支払うもの?
依頼先によって、設計契約として工事とは別に契約を結ぶ場合と、工事請負契約の中に設計も含まれる場合があります。
設計契約を結べば、契約の中での取り決めに基づいて、着手金、中間金、完了時などの2~3回程に分けて支払います。
Q.住宅ローンを使うことはできる?
設計料についても、住宅ローンを使って支払うことができます。
ただし、土地購入費用や工事費用と共に、審査するため、依頼先や支払いのタイミングによって、一時的に自己資金で立て替える必要がある場合があります。
Q.住宅ローン控除は利用できる?
住宅ローンで設計料を支払った場合には、住宅ローン控除の対象となります。
初年度には必ず確定申告が必要になりますので、契約書等の書類を整えて手続きを忘れない様にしましょう。
依頼先選びの注意点
ハウスメーカーの規格住宅など、ある程度決まったものの中から選ぶタイプの依頼先では、設計期間も工事期間も短く、設計料・工事費も抑えられます。
一方で、設計事務所は、設計期間も施工期間も長く、材料も規格品以外にオーダーでつくる場合もあるため、工事費が大きくなる傾向があります。
予算オーバーに注意が必要です。
予算やスケジュールの他、家づくりのどのような部分にこだわりがあるかによって、選ぶ依頼先は変わります。
ハウスメーカーの規格住宅が出来上がりの様子がイメージしやすくてよいと考える人があれば、地域密着できめ細かなサポートが期待できる工務店がいいと考える人もあります。
こだわりを実現するには、設計事務所がいいという人もあるかもしれません。
家づくりの要望や大事にしたい部分は、ひとりひとりで異なりますので、Aさんにとってとてもよかったとしても、Bさんにとっていいとは限りません。
口コミや評判は、トラブルがあったり対応に問題はないかといった点の参考にはなりますが、自分にあうかどうかは別物であることを覚えておきましょう。
依頼先タイプの特徴を知り、相性のよい依頼先を見付けることが、満足できる家づくりのポイントです。
判断が難しい場合には、いくつかのタイプの依頼先から、実際に話を聞いてみるといいでしょう。
設計料の金額だけに惑わされずに依頼先を判断していくことが大切
設計料の設定には、依頼先の特徴がよく現れています。
それぞれの依頼先のタイプの中でも、会社によって差がありますので、複数の候補から提案をもらい比較しましょう。
比較検討に際しては、設計料や工事費の他、設計図面に表現された提案が要望にあっているか、担当者とのやりとりはスムーズか、保証やアフターサービス、会社の体制など、総合的に判断することが、依頼先選びのポイントです。