【こんな症状は要検討】スレート屋根の塗り替え・塗料の選び方と補修費用

【こんな症状は要検討】スレート屋根の塗り替え・塗料の選び方と補修費用

住宅に使用されているスレート屋根は、「コロニアル」や「カレーベスト」という商品名で呼ばれたりする工業製品の化粧スレート屋根です。

リーズナブルで施工しやすいというメリットがありますが、割れやすい、色落ちがしやすいというデメリットもあり、定期的な点検と補修が必要な屋根材です。

リーズナブルで手軽な補修方法の一つとして「屋根の塗り替え」がありますが、ここでは塗り替え工事の方法や塗料の選び方、塗装費用を解説します。

関連記事:スレート屋根の種類や特徴解説。メリット・デメリットや必要メンテナンスとは

化粧スレート屋根の耐久年数はどれくらい?比較的短いものも

化粧スレート屋根は、日本瓦や金属製の屋根材と比較すると耐久性が低いと言われています。

屋根材の耐用年数は施工地域や気候条件により大きく変わるので、各メーカーでははっきりとした耐用年数を公表していません。

化粧スレート屋根のトップメーカーである「ケイミュー株式会社」のカタログでは、商品ごとに保証期間を設けています。

化粧スレート屋根のベーシック商品の「カラーベスト」は、本体の雨水侵入10年、色感の著しい変化は2年間の保証期間を設けています。(保証期間は施工完了日より起算)

また、耐候性グレード★★★商品は、「色10年保証」として、色感の著しい変化は10年間の保証を実施しています。(保証期間は施工完了日より起算)

保証は、施工マニュアル通りの施工や施工チェックシートの提出、保証書の発行などの規定を満足していなければ保証されません。

塗り替え時期の目安と塗り替え工事の方法

化粧スレート屋根の状態を長く、きれいに保つには、定期的な点検と塗り替え工事が必要になります。

塗装時期の目安と塗り替え工事の方法をまとめました。

塗り替え時期の目安・10年前後で現れる症状とは

化粧スレート屋根の塗り替えは、屋根の状態が悪くなる前に行うことが重要です。

では劣化状態は、どんな症状なのか?

主に現れる劣化は

  1. 屋根自体に割れやヘアークラック(細かいひび割れ)が入る
  2. 屋根が反ってしまう
  3. 全体に浮いてくる
  4. 上に苔やカビが生える(特に北側や日陰になる屋根部分)
  5. 色が色落ちしたり、褪せたりしてくる
  6. 棟や谷、ケラバなどの板金部分が浮いたり、釘が抜けたりしてくる
  7. 屋根の一部が落ちる

このような症状は10年前後であらわれる場合があります。長く放置すると、雨漏りの原因や強風の被害にあう原因となります。

放置しないで、補修及び塗り替えを行いましょう。

塗り替え時期の一般的な目安は、10~15年です。その頃にはなにもなくても点検を行いましょう。

劣化の症状がひどくなった場合は、塗り替え工事ができない場合やカバー工法、屋根の葺き替え工事を行った方が良い場合もあります。

劣化症状がひどくなった場合は、塗り替え工事で屋根を補修しても劣化した部分をすべて直すことができません。

この場合は、塗り替えよりもカバー工法や屋根全体の葺き替え工事を行ったほうが良い場合があります。

塗り替え工事は、劣化症状が進行しないうちに行いましょう。

化粧スレート屋根の塗り替え工事の方法

化粧スレート屋根の塗り替え工事は、屋根を塗装するだけではありません。

屋根を長くきれいに保つためには適切な補修が重要です。化粧スレート屋根の塗り替え工事の方法を見てみましょう。

① 足場及び足場ネットの設置

屋根の塗り替え工事は、高所作業になることと近隣に屋根材や塗料の飛散を防ぐために足場や足場ネットを設置します。

② 化粧スレート屋根の高圧洗浄

塗料がしっかり定着するように、また屋根の不具合を見つけるために屋根全体の高圧洗浄を行います。洗浄することで、汚れや苔、カビなどを落とします。

③ 屋根全体の点検

洗浄が終了したら、屋根全体の点検を行います。

屋根のわれやヘアークラックのチェック、釘抜けはないか、板金部分の浮きがないかも確認します。

④ 乾燥と補修

洗浄と点検が終わったら屋根を乾燥させます。乾燥後、われやクラックのあるスレートの交換や浮いている釘を直します。

雨漏りの恐れのある場所がある場合は、屋根裏を点検して雨漏りがないことの確認も行います。

屋根の点検は屋根や板金部分以外に樋の確認も一緒に行いましょう。

樋が割れていたり、外れていたり、樋の勾配が変わっていると屋根からの雨水を正しく処理できません。

屋根の点検を行う時に一緒に確認し、問題があれば直してもらうと良いでしょう。

⑤ 塗装

屋根の塗り替えを行う時には、塗装を2~3回行います。

下塗り、中塗り、上塗りです。劣化状況によっては下塗りを2回行う場合もあります。

下塗りは、化粧スレート屋根と塗料の密着性を高めるために行う塗装です。中塗りと上塗りは同じ塗料を用いて塗装を行います。

それぞれの塗装は、乾燥させてから重ね塗りすることで性能が発揮されるので、数日間雨が降らない時期を選んで施工します。

⑥ 縁きり作業

塗装が完了したら、縁切り作業を行います。縁切り作業はスレート屋根同志のつなぎ目に詰まった塗料などを取り除き、雨水が流れる場所を確保するために行います。

屋根の防水性能を左右するのでとても大事な作業です。

縁きり作業は、スレート屋根1枚ずつ行うため時間がかかる工事です。

そのため、最近では塗装前に「タスペーサー」という仕切り板を差し込みながら塗装して、塗装詰まりを防ぐ工法を採用する塗装方法もあります。

化粧スレート屋根の塗り替え工事は、きれいな屋根にして外観の美観を良くするだけでなく、

  • 屋根が劣化した部分を補修する
  • 汚れなどを取り除き、屋根本来の防水性能を高く保つ

このために行う工事になります。

防水性能が高くなると凍害の影響も受けにくになるため、雨が少ない寒冷地でも塗り替え工事は重要です。

平成18年以前の化粧スレート屋根には、石綿(アスベスト)が含有されていました。健康被害が明らかになり、現在では使用されていません。

平成18年以前に施工された化粧スレート屋根を塗り替えする時には、石綿(アスベスト)の含有を確認し、関係役所への届け出や施工に注意しましょう。

化粧スレート屋根の塗り替え工事で使用する塗料の種類

化粧スレート屋根の塗り替え工事で使用される主な塗料は、6種類あります。

それぞれの特徴や耐用年数、メリット、デメリットをまとめました。

① アクリル系塗料

耐用年数は4~8年。リーズナブルで扱いやすい塗料のため、長く使われてきた塗料です。

耐用年数が短く、塗膜表面が堅くひびが入りやすいため、屋根の塗料としてはあまり使用されなくなっています。

② ウレタン系塗料

耐用年数6~10年。柔軟性のある塗料のため、扱いやすく防水性が優れていて安定しているという特徴があります。

耐用年数は、施工場所や環境に左右されされやすいため注意が必要です。

③ シリコン系塗料

耐用年数は8~13年。耐用年数が比較的長いため、人気がある塗料です。

汚れをはじきやすい塗料のため、汚れにくい特徴を持っています。

④ ラジカル系塗料

耐用年数は10~15年。比較的新しく開発された塗料で長い耐用年数と色褪せの少なさ、施工性の良さが特徴です。

しかし、新しい塗料で実用年数が短いため、実験上の長い耐用年数を保てるか実証されていないため、使用を控えている塗装会社も多い塗料です。

⑤ フッ素系塗料

耐用年数は15~20年。汚れにくく、耐水性が高い塗料のため、耐用年数が高い塗料です。

しかし、価格が高いため住宅ではなく、公共建築物や商業建築物に多く使われてきました。

最近では、長い耐用年数があるため、メンテナンス時期を長くしたい住宅の屋根の再塗装に使われることが多くなっている塗料です。

⑥ 遮熱塗料(又は断熱塗料)

耐用年数は、15~20年。遮熱塗料は耐用年数が長い塗料ですが、屋根に塗装することで太陽からの熱を反射し遮断する機能が一番の特徴です。

遮熱する機能があることで、夏の室内温度を抑える効果があります。

区市町村の自治体や環境省が認定している遮熱塗料を使用した場合、自治体や環境省から補助金や助成金を受けられるケースがあります。

塗装工事を行う前に補助金や助成金の制度がないか確認してから工事を行うと良いでしょう。

遮熱塗料の効果は、屋根の表面温度が15~20℃ほど下がり、室内の温度は3℃低下させることができ、冷房効果も上がるという実験結果があります。

屋根の表面温度が下がっても住宅の構造によっては室内で効果が得られない場合もあるので、天井裏の断熱や小屋裏換気の性能を確認しながら使用すると良いでしょう。

また、遮熱塗料を使用すると、冬季はその分暖まりにくいといわれています。

総合的な効果を考慮しながら塗装会社と相談しながら採用を決めましょう。

化粧スレート屋根の塗り替え工事。各工事と塗料別の費用相場

化粧スレート屋根の工事は、足場掛けから塗装、縁切り工事までの工程があります。工程ごとの費用相場をまとめました。

① 足場掛け払い工事の費用相場

足場掛け払い工事の費用相場は、1㎡当たり600~850円です。

隣地との離れ距離や階数、ネットの使用範囲、階段設置の基数により金額が変わります。

狭小敷地や3階建ての場合は費用が割高になる傾向があります。

② 高圧洗浄の費用相場

高圧洗浄の費用相場は、1㎡当たり200~300円です。

屋根形状が複雑な場合や屋根の重なり部分が多い場合は、割高になる傾向があります。

高圧洗浄だけでは落としきれない汚れや雨水の流れを妨げるものは、「ケレン掛け」という作業で取り除きます。

ケレン掛けは汚れがひどい場合に見積もりされています。費用は汚れの程度により変わり、㎡当たり100~800円かかります。

③ 補修費用

補修費用は、化粧スレート屋根の補修と屋根周囲の板金、樋の補修に費用がかかります。

費用の金額は、補修範囲や状況により大きく変わります。

④ 塗替え塗料の費用相場

塗装は下塗り、中塗り、上塗りの塗装があります。1回目は下塗り塗装で一般的にシーラーと呼ばれています。

下塗りをすることで、中塗り塗装が密着しきれいな塗装ができます。

化粧スレート屋根の表面の劣化状態が悪い場合は、2回目の下塗り塗装が必要な場合があります。

下塗り塗装の費用相場は、㎡当たり500~1,000円です。

中塗り、上塗り塗装は、同じ塗料で塗装います。

下塗り(シーラー)の上に塗装する塗料の厚みを全体に均一にし、耐久性を高めるために、中塗り・上塗りと2回の塗装を行います。

各塗料の㎡当たりの単価は、以下の様になっています。同じ種類の塗料でも塗装メーカーにより価格が違うため、㎡当たりの単価に差があります。

価格を比較する時には塗料のメーカーと性能を比較するようにしましょう。

(塗料ごとの㎡当たり目安単価)

  1. アクリル系塗料:1,400~1,600円
  2. ウレタン系塗料:1,500~2,200円
  3. シリコン系塗料:1,800~3,000円
  4. ラジカル系塗料:2,500~3,500円
  5. フッ素系塗料:3,500~4,500円
  6. 遮熱塗料:3,500~5,000円

⑤ 縁きり作業の費用相場

スレート屋根同志の間には雨水が流れるすき間があり、すき間があることにより雨がたまらず、毛細管現象などによって屋根の裏側まで雨水が入り込むことを防ぐようになっています。

屋根の塗り替え工事を行うことでこのすき間を塞いでしまうため、この作業を行い1枚ずつふさがっている箇所を剥がし、すき間が正常に機能するように作業を行います。

屋根の大きさにもより費用が違いますが、25.000~60,000円かかります。

縁きり作業のかわりに塗装前にスレート屋根の間にタスペーサーという専用金具を挟む施工では、30,000~60,000円の費用がかかります。

急勾配な屋根の場合は、縁きりとタスペーサーの施工が必要ない場合があります。見積もりに項目がない場合は、理由を確認しておきましょう。

化粧スレート屋根の塗り替え工事は、外壁の塗り替えと同時に行うと足場の費用がかかりません。

中塗り、上塗りの塗料を選ぶ時には、外壁の塗り替え時期と塗料の耐用年数を比較しながら選びましょう。

(例)化粧スレート屋根の塗り替え工事の費用相場(屋根面積30坪・シリコン塗料の場合)

  • 足場費用:130,000円
  • 高圧洗浄費用:20,000円
  • 補修費用:30,000円
  • 下塗り塗装(1回塗り):75,000円
  • シリコン塗装(2回塗り):200,000円
  • 縁切り作業:30,000円
  • 合計金額:485,000円

まとめ

化粧スレート屋根の塗り替え工事は、丁寧な施工と塗料の性能により耐用年数が変わります。

塗り替え工事の施工方法や塗料の種類を施工会社とよく打合わせし、確実な施工を行い、きれいで長持ちする塗り替え工事にしましょう。

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