究極の住み心地?名作住宅に学ぶ狭小住宅の設計の工夫9選!

住まいの価格は、土地も建物も面積によって決まります。

面積の小さい狭小住宅にすることで、建築価格を抑えることができます。

一方、限られた敷地の中に建てる狭小住宅では、設計の工夫が不可欠です。

狭小住宅を建てるときに必ず押さえておきたいコツと設計の工夫をご紹介します。

狭小住宅の定義とは?一般的には30坪程度

土地の値段が高い都市部などでは、小さい土地に工夫を凝らして家を建てることが多くあります。

小さい土地に建てる家を狭小住宅と言います。

では、何坪程度を狭小住宅というのでしょうか。実は明確な定義はありません。

単世帯の住宅では概ね30坪程度が一般的だと言われていますが、それより小さい25坪以下から狭小住宅と考える設計者もあれば、都市部では20坪くらいの住宅も多いため10坪以下を狭小住宅と考える設計者もあります。

不動産会社で土地を探すときや、工務店やハウスメーカーなどの依頼先へ意向を伝えるときには、具体的に何坪位のイメージなのか伝えるようにしましょう。

狭小住宅を建てるときの価格相場

建築費用は、材料費と職人の作業費用、管理に関わる諸費用を組み合わせた価格。

標準的に使用している材料や仕入れ先、営業や広告、管理にかかる経費は会社によって異なるため、依頼先によって建築価格に差があるのが一般的です。

建築工事費を延床面積(又は施工床面積)の坪数で割った価格を坪単価とよび、高いか安いかの比較に使われます。

狭小住宅の場合は、30坪程度の家を建てるときの坪単価よりも割高になります。

理由は、面積が小さくても必要となる住宅設備は同じだからです。

建築工事の坪単価は、30坪程度を境にして、広ければ安くなり、狭くなれば高くなるということを覚えておきましょう。

しかし、坪単価としては高くなっても、そもそもの総坪数が小さいため、総工事費としては、30坪の家よりも費用が抑えられる場合が多いのが狭小住宅なのです。

狭小住宅のメリットとデメリット

狭小住宅では、床面積に制限があるため、敷地によっては採光や通風をとることが難しい場合があったり、プライバシーの確保が難しいなどのデメリットがあります。

一方で、メリットも沢山あります。

  • 面積が小さいことで建築価格を抑えられ、土地値の高い都市部など利便性のよい立地に家を建てることができる
  • 冷暖房のロスが少ない
  • 掃除が楽
  • 家族の存在感を感じられる親密な空間になる

といったメリットが挙げられます。

また、限られた敷地に工夫を凝らして建てるため、無駄の少ない効率的で使い勝手のよい家になります。

このようにメリットの多い狭小住宅ですが、設計の工夫が大きな鍵となります。

ここからは9つのポイントを紹介したいと思います。

究極の住み心地?名作住宅に学ぶ狭小住宅の設計の工夫9選!

日本で名作住宅と呼ばれ後世に語り継がれている住宅には、無駄を省いた小住宅が多いことをご存じでしょうか。

狭小住宅は、徹底的に無駄を省いた中に、暮らしの豊かさを感じられる設計の工夫が盛り込まれた究極の住宅ともいえるのかもしれません。

これらの工夫は、狭小住宅に限らず多くの住宅で活用することができます。

これから家を建てようと考えている人にぜひチェックして欲しい、代表的な設計の工夫9選をご紹介します!

① 2室を1室に、部屋を兼ねる

間仕切を省いて、できるだけ大きい一つの空間をつくります。

代表例は、LDK 。

リビング、ダイニング、キッチンを一つの空間にすることで、より広いオープンな空間となります。

このように 二つ三つの用途の部屋を、一室にして「兼ねる」ことで大きな空間をつくることができます。

洗面室とトイレを一室にする、寝室と趣味室を兼ねる、玄関や階段とギャラリーを兼ねる、書斎と通路を兼ねる、といった様ないくつかの用途を兼ね合わせることもあります。

子供室、書斎、家事室などを部屋にせずに、リビングの一角にコーナーを作るのも方法の一つです。

② 回遊できる

例えば、ホールを中心にリビング、キッチン、洗面、浴室、玄関、階段、トイレなどがぐるりと回れるように配置された間取りは、廊下がなくてもつくることができます。

ぐるぐると回遊できる間取りにすることで、効率的な動線になり、限られた家の中で視線が移り変わり広がりを感じることができます。

単なる通路となる廊下は出来るだけつくらずに、使い勝手のよい動線となり一石二鳥です。

③ 内と外の境界線をなくす

リビングは広ければ広いほうがいい、と思いがちですが、広さがとれずとも心地よい空間にする方法もあります。

リビングをデッキやテラスと連続させて、アウトドアリビングという居住空間をつくります。

デッキやテラスは、屋根がついていなければ、建築面積や延床面積に含まれずに有効活用ができます。

ポイントは、室内の床面とデッキやテラスの床面を同じ高さにそろえること。

間に入るサッシは、出来るだけ大きめにすると内と外の境界を感じにくくなり、より効果的です。

屋根がないため、雨の日や風の強い日に使えないこともありますが、部屋からデッキが見えるだけで空間の広がりを感じることができます。

また、都市部などで隣家と近接している場合には、アウトドアリビングを中庭として建物の中心に設けることで、プライバシーを確保しながら、風通しよく光が差し込む空間をつくることができます。

④ 引き戸

大きな1室で使用したり、2室区切って使用する場合に活躍する「引き戸」。

全て戸袋にしまえるつくりにすることで、戸を全て隠してしまうこともできます。

壁と扉ではこうはいきません。一つの部屋を分けたり、いくつかの用途で使い分ける場合にも欠かせない狭小住宅の必須アイテムです。

⑤ 吹き抜け

平面的ではなく、立体的な広がりをつくる「吹き抜け」。

小さな吹き抜けであっても、差し込む光や通り抜ける風、高さ方向に抜けがあることで、広がりのある空間ができます。

吹き抜けを止めて、わずかな床面積を増やすよりも、より広さを体感できる空間になることが多いものです。

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⑥ 階段

建物の中で、実は結構な面積を占めている階段。

蹴込板をなくして、段と段の間から向こう側の空間が透けてみえるつくりの階段を「スケルトン階段」といいます。

空間が見通せるつくりにすることで、より広さを感じることができます。

同様にリビングの中に階段をつくる「リビング階段」なども効果的です。

⑦ スキップフロア

「スキップフロア」とは、1階と2階の間に半階ずらしたフロアを設けることをいいます。

1階から1.5階、1.5階から2階と半階毎にゆるやかに空間がゆるやかにつながり、室内の開放性が高まります。

1.5階にいながら、1階と2階に視線が抜けることで、家の中の空間の広がりを感じられるつくりになります。

⑧ 収納

狭小住宅では、家の中にあちこちに散らばる、わずかなスペースを収納に活用します。

定番の階段下収納、床下、天井裏、ロフトの他、押入のような大きなスペースが取れなくても、廊下に浅めの収納があるだけでも使い勝手に差が出ます。

収納の基本は、使う場所に備え付けること。

特に玄関やキッチン、洗濯機や掃除道具のスペースはしっかり計画してつくり込みます。

⑨ 窓

大きな窓が効果的なのはもちろん、小さな窓の配置で差し込んだ自然光によって広がりを感じることができます。

トップライトと呼ばれる天窓や、ハイサイドライトといった部屋の上部に設ける窓は、プライバシーを気にせずに光を取り入れることができます。

後悔しない狭小住宅を建てる3つのコツ

狭小住宅の実績のある依頼先を選ぼう!

心地よい狭小住宅には、細かな工夫を凝らしてつくられています。

そのため高い設計力が必要です。

狭小住宅を沢山建てている依頼先は、狭小住宅ならではの設計の工夫に慣れているものです。

これまで狭小住宅をあまり建てていない依頼先よりも、これまでに狭小住宅をより沢山建てている依頼先の方が、ノウハウの蓄積があると言えます。

狭小住宅の実際の事例を見せてくれたり、事例を素敵だなぁと感じられる、実績ある依頼先を選びましょう。

また、10坪未満の土地や大きく変形したより条件の厳しい敷地の狭小住宅では、部材に規格があるハウスメーカーは不向きな場合もあります。

どんな依頼先であっても建築のプロには変わりありませんから「狭小住宅は出来ますか?」と聞かれれば、「可能です」というかもしれません。

しかし「出来る」と「得意」は別モノ。

実績、事例を確認し、2~3社の設計提案を比較した上で依頼先を選ぶようにしましょう。

実際の狭小空間を体感しよう!

折角、工夫を凝らして狭小住宅を建てても、一番残念なのは「こんな感じだとは思わなかった」ということ。どれだけ図面や写真で確認しても、実際の広さを体感しないことには、広さというのはよくわからないものことが多いものです。

プロではないので当然のことです。

そのため「狭小住宅にする」と決断する前に、できるだけ実際の狭小空間を体感しましょう。

実績のある依頼先は、過去に建築して引き渡した住宅の中から、見学させてもらえる住宅がある場合があります。

新築したばかりの家で内覧会を開催していることもあります。建てた後で後悔しないためにも、事前に実際の狭小住宅へ足を運び、狭小空間を体感しておきしょう。

土地を決める前に、依頼先候補に見てもらうこと

「この土地しかない」と思って購入したのに、後から思った様な家が建たないとわかっては、もともこうもありません。

もちろん設計の工夫で解決できる場合もあるのですが、狭小住宅に限らず、ご要望の内容によってはどうしても実現の困難な場合もあります。

そうしたことは土地を購入してからわかっても、後戻りはできません。

特に狭小住宅の場合は、 購入前に依頼先候補の担当者に必ず現地を確認してもらいましょう。

依頼先にお願いをすれば、だいたいの家の広さや、どんな間取になりそうか、ざっくりとした図面を作成することも可能です。

図面作成は、依頼先によって実費がかかる場合もありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

狭小住宅設計のコツまとめ

無駄を省いた狭小住宅を設計する過程では、日ごろの生活の細かな様子や、暮らしをていねいに見つめ直す作業も欠かせません。

住まいづくりは、百人いれば百通りあります。自分たちにとって心地良い空間とはどんなものだろうか、どういう時間が生活の中で大切なのかを突き詰めて考えることが大切です。

限られた予算に限られた面積、スケジュールといった制限もありますが、折角の住まいづくりですから後悔のないように取り組みたいものです。