近年、テレビや住宅雑誌などで自然素材の家が紹介されることが増えてきました。
無添加住宅や健康住宅などと言って、無垢材のフローリングや漆喰、珪藻土などを使用して家を建てる住宅会社も増えている様に思います。
自然素材で建てられた家は、時間の経過と共に深い味わいが出ます。
そして家の中にいると木の風合いが優しく、自然に心も体も癒される。 空気もどこか違うような気が・・・。
自然素材の家では、なんとなく家族みんなが一年中快適で健康的に暮らせそうなイメージがあります。
「でも普通の家と比べるとやっぱり高そう!」 「本当に健康に良いの?」 そう思っている方はきっと多いはずです。
これから自然素材の家を建てたいと思っている方が「事前に知っておきたい5つの知識」を伝授します。
この記事の目次
1.自然素材の家にはどんな家があるのか?
ひとくちに自然素材の家といっても、住宅会社によって様々なものがあります。
内装や仕上げ材のみ自然素材が使用された家、下地材にも自然素材が使われている家、構造材まで自然素材で建てられたオール自然素材の家等々・・。
実は「自然素材の家」に明確な基準や定義がある訳ではないのです。
そもそも無垢の床材や壁材といっても、国産材もあれば輸入材もあります。
中には輸入木材を輸送中に腐食やカビから守るために薬剤が使用されていることや、防虫処理された国産丸太、無垢材のフローリングに傷防止のためのコーティング加工がされている場合などもあります。
「自然素材の家」というと全てが無添加の自然素材で建てられた家というイメージを持つ方が多いと思いますが、実際は「自然素材を取り入れた家」のことなのです。
また、「雨水利用装置のある家」や「太陽光発電の家」などのエコ住宅や「健康に配慮した家」なども含めて自然素材の家と呼ぶ住宅会社もあるほどです。
私達建築の専門家の立場でも、「どんな家を自然素材の家と言うのか?」と聞かれると返答に困ってしまいます。
自然素材の家を建てる際には自分が建てたい自然素材の家と、住宅会社が建てる自然素材の家のイメージや性能に大きなギャップがないかどうかを事前にしっかりと確認しておかないと、完成してから後悔することになる可能性があります。
2.自然素材の家のメリットとデメリット
自然素材には無垢材、漆喰、珪藻土、和紙、石、竹、コルク材、天然リノリウム、セルロースファイバーなど様々なものがありますが、自然素材をふんだんに使用して建てられた家は人体に有害な化学物質が含まれていないので、アトピーやアレルギーを持つ人やお年寄り、赤ちゃんでも安心して暮らすことができます。
また自然素材には
- 耐久性
- 断熱性
- 保温性
- 調湿性
などに優れたものが多いので、自然素材の家では1年を通して快適に過ごすことができます。
素材が本来持つ質感や香りを楽しむことで、癒し効果もあります。
実際に自然素材の家に住む人の中には
- 「アトピーやアレルギー症状が軽くなった」
- 「夜熟睡できるようになった」
- 「子供が集中して勉強できるようになった」
などの例もあるといいます。
そして多くの方が感じる魅力のひとつが、自然素材の家は年月が経つごとに味わいを増していくことでしょう。
新建材で建てられた家が完成した時が綺麗さのピークで、あとは経年劣化していくだけなのとは対照的です。
しかし自然素材の家にももちろんデメリットもあります。
自然素材は乾燥していく過程で反りや曲がり、ひび割れなどの発生や、色むらなどの素材のばらつきが生じる可能性が高い素材です。
参照記事:自然素材の家にデメリットはあるのか?徹底検証してみた
また新建材や集成材などと比較すると、素材そのものの値段や工賃が高くなる傾向があります。
他にもメンテナンスにも若干手間がかかるということもあるかもしれません。
そういうことが嫌いな方には、「わざわざ高いお金を払ったのに、反ったり割れたりしていいことは何もない!」となってしまうので、自然素材の家は向きません。
自然素材の家を建てる際にはそのメリットとデメリットを良く検討して、本当に自分に向いているのかどうかをよく見極めることが必要です。
自然素材の家のデメリットは何?というテーマで、こちらの記事も参考にしてみてください。
参照記事:自然素材の家にデメリットはあるのか?徹底検証してみた
3. 自然素材の家の価格は?
多少値段が高くても、自然素材の家に魅力を感じる方は多いと思います。
それでは実際にどの程度の価格差があるのでしょうか。
プロの立場からお伝えすると、新建材で建てられた一般的な注文住宅と自然素材を使用した注文住宅ではおおむね坪当たり5~10万円位の差が出る様に思います。建坪30坪(約100㎡)の家で約150~300万円の差額です。
もちろんこれは目安なので、自然素材の材種やグレード、産地等によっても異なりますが、だいたいこの位を目安にして検討すると良いでしょう。
4. 部分的に対応するという手もある
一方予算には限りがあるが、どうしても自然素材を取り入れたいと思っている方も多いでしょう。
その様なケースでは、全ての部屋や部位に自然素材を使うのではなく、床だけ無垢のフローリングを使うとか、リビングや寝室など使用頻度が高い部屋だけを自然素材にするなどの選択も十分ありだと思います。
自然素材にどの程度の価値を持っているかによって、かける予算が変わるのは当然のことです。
自然素材に回せる予算に限度があるならメリハリを付けた建築計画を立てましょう。
ただし自然素材の家はメンテナンスサイクルを長期化できるので、長期的な目でみればコスト面で有利です。
5. その他自然素材で知っておきたいこと
シックハウス対策や家族にアトピー症状やアレルギー症状のある方がいるために、健康のため「自然素材」をふんだんに使用した家を建てたいと思っている方も多いでしょう。
しかし、いくら自然素材の家を建てても、シックハウス過敏症などのごく一部の方には残念なことにあまり効果が出ないこともあります。
自然素材に塗られた塗料や防かび剤に反応してしまうことや、自然素材本来の臭いにアレルギー反応が出てしまう場合、また無添加の自然素材だからこそカビや虫害が発生することもあります。
結局個人差があるので、材料サンプルや自然素材で建てられたモデルルームなどで自分自身の目や身体を使って体験してみることが重要です。
使用されている自然素材に触れてアレルギー反応が出ないことを事前に確かめておくと安心です。
自然素材の家を建てる前知るべきことまとめ
現在、ほとんどの方が工場生産された建材に囲まれて暮らしていると思います。
恐らく60代後半~70代以上の人でないと、自然素材に触れながら生活した経験はほとんどないでしょう。
しかし戦前の我が国では自然素材の家が当たり前でした。 戦後になって住宅がどんどん建てられる様になると腕のいい職人が不足し、丁寧な仕事をする時間も無くなってしまいました。
そこで登場したのが工業製品の新建材です。
施工が簡単で品質や価格も安定しているので、新建材の需要は益々増える一方で、自然素材と呼ばれる無垢材や塗り壁はどんどん衰退してしまいました。
今では自然素材を扱うことに慣れた大工や職人もめっきり少なくなりました。
しかし新建材による住まいの健康被害が一時社会問題にもなって、再び自然素材が注目される様になっています。
一般的に高いと言われる自然素材も、産地や種類によっては手の届くものもあります。
自然素材の家を多く施工している住宅会社なら建築主と共に素材をひとつずつ丁寧に決めていくのにも慣れているので、材料を選ぶ際にもいろいろとアドバイスをしてもらえるはずです。
また、自然素材を扱うことに慣れた大工や職人もそろっています。
一方、ハウスメーカーが建てる大量生産の規格型住宅で自然素材を取り入れようとしても、積極的なアドバイスは受けられません。
自然素材の家を建てる際には、自然素材で家を建てるのに慣れた住宅会社に相談する事が大切です。