家のバリアフリー化。種類・特徴をメリットと具体例を挙げて解説

家のバリアフリーの種類

日頃から「バリアフリー」という言葉をよく耳にするようになりましたね。

そういった話を聞くたびに、「年齢を重ねても快適に暮らしたい」とご自宅のバリアフリー化を検討される方も多いのではないでしょうか。

ここでは、バリアフリーの家でのメリットを、その種類や具体例を交えて紹介します。

1. バリアフリーの家が求められる理由と現状

室内は安全だと思われがちですが、そうとは言い切れない事実をご存知でしょうか。

というのも、2017年に行われた厚生労働省「人口動態調査」により、高齢者の家庭内の死亡事故は交通事故による死亡数よりも多い、という衝撃的な結果が公表されたからです。

実際の数値を見てみると、交通事故による死亡数2,883人に比べ、65歳以上の高齢者の家庭内での死亡事故は合計11,879人となっています。

そのうち、 転倒・転落は全体の19.6%、溺死は全体の46.4%を占めているのです。

この結果は驚きですよね。。

このデータ結果からも、多くのご高齢の方にとって現状の住環境が適切な状態ではない、ということになります。

上記の調査結果にある家庭内での事故を未然に防ぐには、家のバリアフリー化が欠かせないでしょう。

一方、バリアフリーと聞くと、ご高齢の方を対象とした設備に感じますが、実はそうではありません。

小さなお子様からお年寄りまで、「安心・安全に、家族みんなが快適に暮らせる空間」がバリアフリーであり、そこに住む全員にメリットがあります。

例えば、段差のないフラットフロアは、小さなお子様や妊婦さんまたペットにも、とても安心・安全に過ごせる空間。

さらに、部屋同士や廊下での段差がないため、日常の掃除もラクになり家事軽減にもつながりますね。 家は人生をともに歩む大切パートナーです。

ぜひ、家のバリアフリー化を検討してみて、安心・安全を整えて、豊かな時間を過ごしましょう。

快適に暮らすために大切なバリアフリー。どんな種類がある?

では実際に、どのような視点に着目してバリアフリーを検討すればいいのでしょうか。

それでは具体的に、生活イメージにつながりやすいよう種類別にわけてご説明します。

段差をなくす

家のなかにある段差は、たとえ小さなものであっても危険が潜んでいます。

健康なときには気にならなかった小さな段差でも、ケガをしたとき、または車イスでの生活になったときには、歩行や移動を妨げる障害物に。

特に、体が不自由になったご高齢の方においては、小さな段差が転倒事故につながりかねません。

ですので、家での安全性を整えるには、部屋同士や廊下との間にある段差を解消させる必要がありますよね。

もし2階建て以上のご自宅にお住まいの方は、「老後には居住空間をワンフロアに変更できるか」を事前に検討することオススメします。

一般的に、お子様を含むご家族で暮らすご家庭は、いずれは夫婦だけの暮らしへと変化するでしょう。

老化により体が思いどおりに動かせなくなった際に、ワンフロアで生活ができると体への負担も減らせますね。

手すりの設置

転倒防止の対策として、適切な場所への手すりの設置も重要になります。

筋力が弱ったご高齢の方にとって、手すりは歩行を手助けする大切な役割。

主な設置場所は、廊下・玄関・トイレ・浴室など。

頑丈な手すりは歩行の手助けになるだけでなく、いざというときに手を伸ばせば体をしっかりと支えてくれます。

ドアは引き戸

多くのご家庭のドアは、前後に開く開き戸か、左右に動く引き戸のどちらかです。

室内・玄関のドアともに引き戸の方が断然使い勝手がいいです。

前後に開くスペースを必要とする開き戸に比べ、左右に可動する引き戸は省スペースで済むため邪魔になりません。

玄関のドアにおいては、突然の強い風で閉まってしまう心配もないので安心できます。

温度差を減らす

バリアフリーにおいて重要視すべきは、目に見えるものだけではありません。

家のなかの温度差をできる限り減らすことも、健康かつ快適に暮らすうえで欠かせないポイントです。

では、家のなかの温度差ではどういったデメリットが生じるのでしょうか。

以下の2つにわけてお話します。

①結露やカビ・ダニの発生

冬場には、屋外との温度差により家の窓ガラスに結露が発生しますよね。

結露はカビの原因になるだけでなく、必要に応じて水滴のふき取り作業の手間もかかり、その都度ストレスに感じている方もいるでしょう。

さらに温度差は結露やカビ以外にも、ダニの発生原因にもなります。

②ヒートショックの危険

室内における急激な温度変化により血圧が急上昇・急下降するため、ご高齢の方にとってはヒートショックの危険性が高まります。

特に寒い時期には、部屋の移動や浴室での急な温度変化に体が負担を感じやすいです。

以上の事態を防ぐため、適切な冷暖房・換気システムの導入と同時に、家の気密性や断熱性を高める必要があります。

水まわりでのバリアフリー具体例

家族みんなの使用頻度の高い水まわりは、快適に暮らすうえで動線も工夫したい場所ですね。

具体例とともに、各箇所でのバリアフリーポイントを取り上げてみたいと思います。

トイレ

介護の場面を想定したトイレのバリアフリー化を意識しましょう。

  • 手すりを付ける
  • 寝室のそばに配置
  • 自動洗浄

トイレを寝室のそばに配置するメリットは2つあります。

①ヒートショック防止

冬場の温度変化で起こるヒートショック対策です。

寝室に隣接または近くにトイレを配置することで、毎日積み重なる体への負担を最小限に抑えます。

②介護の負担軽減

寝室からの移動距離を少なくし、介護サポートの利便性を図ります。

一日に何度も排泄に使うトイレは、介護においても切り離せない場所。

寝室近くにトイレがあれば、介護される方はもちろん、サポートする介護者の負担軽減にもつながります。

なお、狭い空間になりがちなトイレでは、できるだけ動かずに済むように自動洗浄の導入もオススメです。

参考記事:バリアフリーのトイレへリフォームする前に知るべき10の項目(基準や寸法等)

浴室

濡れた足元が滑りやすい浴室は、より一層の注意が必要とされます。

  • 手すりを付ける
  • 滑りにくい床
  • 出入口の段差をなくす
  • 40cm以下のまたぎやすい浴槽
  • 浴室乾燥機の設置

浴室はヒートショックの危険性が高く、急な立ちくらみが起きやすい場所でもあります。

対策としては、事前に浴室乾燥機を使って浴室を温めておく方法が有効でしょう。

さらに上記以外にも、シャワー用車イスごと浴室に入れる間口の幅、介助する方も一緒に入れる広さが確保できると理想的ですね。

洗面所

毎日使う洗面所もひと工夫したい場所です。

なかでも洗面台は、老後も使いやすいように、下部分を空洞にして車イスごと入れるようにしたり、高さを少し低めに設定したり、長期的に使いやすい空間にしましょう。

関連記事:工事別・洗面所リフォームの費用相場と検討したい4つのこと

廊下でのバリアフリー具体例

行き来の多い廊下の広さを詳しく見ていきましょう。

用途別に必要となる具体的な廊下幅は以下のとおりです。

  • 車イスのみ → 78cm以上
  • 車イスと介護者 → 90cm以上
  • 車イスでUターンが可能 → 150cm以上

将来むかえる介護を想定すると、車イスと介護者が並んで移動できる90cm以上は確保しておきたいですね。

車イスでのスムーズな移動を希望するならば、Uターン可能な150cm以上の広さがあると心強いです。

また、歩行の手助けとなる手すりも付けておきましょう。

玄関まわりでのバリアフリー具体例

玄関まわりの快適性を高めることで、外出時や帰宅時に生じる一連の動作をスムーズに行えます。

ドアは引き戸

室内と同様に、玄関ドアも引き戸を取り入れましょう。

玄関は車イスだけでなく、ベビーカーや大きな荷物の出し入れに配慮した広さを確保すると、日常の快適さが増します。

そこで間口の広い引き戸を設置し、ゆっくりと閉まるドアクローザー機能が付いたものを選ぶと、より安心して出入りができます。

スロープ

外と玄関をつなぐスロープの設置もオススメです。

初めの段階でスロープを付けない場合は、後付けできるか業者に確認を取っておきましょう。

あとから「あればよかった」と思ったときに検討できるので、このひと手間が大切なポイントとなります。

また上記以外では、玄関から居住空間に入る「上がり框(あがりがまち)」の段差を解消することや、転倒防止のために足元を照らすライトの設置もぜひ検討してみてください。

快適に暮らせるバリアフリーの家にするために

お子様からお年寄りまで、家族みんなが快適に暮らせる「バリアフリーの家」の種類・具体例をメリットとともにご紹介しました。

暮らしやすい空間は、世代を問わず私たちの日常を豊かにしてくれます。

安心・安全に加え、快適さを提供するバリアフリーの家を、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。

家の購入またはご自宅のリフォームに関しましては、専門の業者にお見積もり・詳細を含めぜひ一度ご相談ください。

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