省エネ住宅や断熱リフォームなどを検討する際は断熱材の仕様を気にしがちですが、同じく重要な要素になるのが、窓の性能です。
いくら断熱材の仕様が高くても、窓の断熱仕様が低ければ、熱は窓から逃げていきます。
窓の断熱性能を上げるために有効になるのが、Low-Eガラスを使用することです。
ここでは、Low-Eガラスを使う効果とデメリット、価格や補助金などについて詳しく説明していきます。
この記事の目次
Low-Eガラスとは?
日本の古い住宅のほとんどの窓はガラスが1枚のみの単板ガラスを使用していましたが、最近の新築住宅では複層ガラスを使用するのが一般的になっています。
複層ガラスとは2枚のガラスの間に乾燥空気やアルゴンガスが封入された空気層があり、外気からの熱の侵入を防いで断熱性を持たせたガラスです。
その複層ガラスの性能をより向上させたガラスがLow-E複層ガラスです。
Low-Eとは、Low Emissivity(ロー・エミシビティー)を略したもので、低放射という意味があります。
どう向上させたのかというと、複層ガラスのうち室内か室外のどちらか1枚のガラス表面にLow-E膜と呼ばれる、透過性のある金属膜をコーティングして熱を逃がさないようにしたガラスです。
熱貫流率(熱の伝えやすさを表す指標で、小さいほど熱を伝えにくい)が小さく、近年の省エネ住宅では、このLow-E複層ガラスを採用した事例が増えつつあります。
Low-Eガラス、どれだけ効果あるの?3つのメリットとは
断熱を目的とするイメージがあるLow-Eガラスですが、金属膜によるコーティング面の使い方によって、夏の遮熱にも使うことができます。
コーティング面を室内側のガラスに用いるか、室外側のガラスに用いるかによって効果が変わってくるのです。
ここではLow-Eガラスを使用することによる効果を説明していきます。
1. 断熱効果がある
コーティング面を室内側ガラスの中空層側に使用した場合、断熱効果を高めることができます。
太陽光をよく透過し日射熱を取り入れる反面、室内の熱を室外に逃がさず閉じ込めることができるためです。
この使い方は、寒冷地に向いた冬型の断熱仕様と言えます。ガラスの室内側の表面温度が低下しづらいため、結露もしにくくなります。
2.遮熱性能がある
コーティング面を室外側ガラスの中空層側に使用した場合、遮熱効果を高めることができます。
太陽光は中空層に届く前に、室外側ガラスで大部分が反射され、日射熱が室内へ侵入することを抑えることができます。
加えて、紫外線も80%以上カットすることができるので、温暖地に向いた夏型の遮熱仕様と言えます。
3.地域や方角に合わせた使い分けが大切
以上のように、Low-Eガラスはコーティング面の場所により断熱・遮熱機能をそれぞれ使い分けることが可能です。
実際には、住まいの地域や窓を設置する方角によって使い分けることが有効です。
冬の日差しを取り込みつつ断熱を行いたい南向きのリビングや、日射が少なく気温が低い寒冷地では、断熱仕様を採用します。
この場合夏の強い日射はガラスでは防ぐことができないので、ひさしやブラインドなどを用いることが重要です。
Low-Eガラスと併用することで夏の日射を遮りつつ断熱性の高い住まいとすることができます。
一方、日射熱が強くなるべく遮りたい東西の窓や日射量が多い温暖地域では、遮熱仕様を採用します。
加えて外付けルーバーやブラインドを用いることで、明るさは取り入れつつも不快な日射熱を有効に遮ることができます。
ガラスの色や機能の種類は?防火や防犯機能との併用は可能?
Low-Eガラスはコーティングが施されていることを解説しましたが、コーティングによって色はつくのか?疑問に思う方もいるかもしれません。
また断熱や遮熱のみならず、場所によっては防火や防犯といった機能も必要になります。
そうした機能ガラスとの併用は可能なのか、開設します。
コーティングにより様々な色の製品がある
Low-Eガラスは金属膜によりコーティングが施されているため、若干色がついたような印象を受けますが、近年ではほぼ透明に見えるタイプも発売されています。
大きくはクリア系、ブルー系、グリーン系、ブロンズ系とメーカーによって様々な種類の色があるため、実際に使うメーカーのサンプルを確認することが大切です。
機能ガラスとの併用も可能
ガラスは求められる機能によって多くの種類があり、
- 防火地域などで必要となる防火ガラス
- 破損しにくい防犯ガラス
- 室内の音を周囲に漏らすことを防ぐ防音ガラス
などがあります。
Low-Eガラス自体は「Low-E複層ガラス」として必ず複層ガラスとして製品化されているため、1枚をコーティングされたLow-Eガラス、もう片方を機能ガラスとすることで他の機能との併用も可能になります。
NSG(日本板硝子)やYKK APといった主要メーカーで各機能ガラスを併用したLow-E複層ガラスが販売されています。*1
フィルムよりもガラスで対応した方が無難
プライバシーのため目隠しを行いたい場合や飛散防止のために、ガラスにフィルムを貼って対応する場合もありますが、フィルムとLow-Eガラスの相性によっては熱割れやフィルム剥がれのリスクがあります。
前述のように複層となっている2枚のうち、一方のガラスを目隠し効果のある型板ガラスや、破損されにくい防犯ガラスとすることは可能なので、ガラス自体の性能で対応する方が無難と言えるでしょう。
Low-Eガラスにデメリットはある?使用の注意点とは?
優れた性能を持つLow-Eガラスですが、デメリットはあるのでしょうか。
ここでは、Low-Eガラスを使用する上で注意するべき点を説明します。
結露を防ぐにはサッシも断熱効果のある仕様にする必要がある
断熱性能が高く結露を防止できるLow-Eガラスですが、ガラスのみをLow-Eガラスとしても、そのガラスを納めているサッシの断熱性能が悪ければ、サッシ部分に結露が発生してしまいます。
窓全体の結露を防止するには、サッシも断熱効果のある仕様とする必要があるので注意が必要です。
日本ではアルミ製のサッシが使用されることが多いですが、近年では断熱性能の高い樹脂製のサッシが普及してきています。
また木製サッシも断熱性能が高く、結露防止に有効です。
今まで木製サッシはアルミサッシに比べ気密性の確保が難しいことが懸念されていましたが、近年では気密性能も確保した木製サッシが各メーカーから販売されています。
また古い住宅の窓を改修する場合、サッシが単板ガラス用の仕様となっていることも多く、そうした場合はガラスに加えてサッシも交換が必要になってきます。
複層ガラスよりも価格が高い。おおよそ1.3〜1.5倍
Low-Eガラスは複層ガラスよりも性能が高いため、当然、価格は複層ガラスや単板ガラスよりも高くなります。
Low-E複層ガラス自体の価格は一般の複層ガラスに比べ、㎡あたり1.3~1.5倍程度の価格となります。
ガラス価格はガラスの厚みによって異なりますが、例えば5mmのペアガラスに中空層6mmの場合、複層ガラスですと㎡あたり7,000円~8,000円、Low-E複層ガラスですと9,500円~11,000円程度となります。
予算よりも高くなってしまう場合は、普段の時間を過ごすリビングはLow-Eガラスを使い、洗面所や浴室には複層ガラスを用いるなど、部分的に使い分けることで調整するとよいでしょう。
Low-Eガラスを使うことで補助金はもらえる?
改修・新築問わず、Low-Eガラスを使った省エネ化を行うことで、補助金の対象となる場合があります。
改修の場合、「高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業」といった制度があり、住宅の断熱改修工事が対象となるもので、窓の断熱改修といった部分的な改修も補助金の対象となります。
補助金額は補助対象費用の1/3、最大120万円となっています。新築の場合も「次世代住宅ポイント制度」「地域型住宅グリーン化事業」など、新築する住宅全体の省エネ化を図ることで補助金の対象となることがあります。
断熱材などの考慮も必要ですが、Low-Eガラスを使用することで補助対象の条件を満たしやすくすることができます。
Low-Eガラスについてのまとめ
Low-Eガラスを使用するときに最も大切なポイントは、断熱・遮熱の目的を明確にし、目的に応じて使い分けることです。
Low-Eガラスの特性を理解し適切に用いることで、快適な住空間を実現することができるでしょう。