重厚な外観や、オシャレな打ち放しの壁など誰もが一度は憧れるのが鉄筋コンクリート住宅というもの。
そんな鉄筋コンクリート住宅を検討している方へ、特徴や注意点、他構造との比較を紹介していこうと思います。
この記事の目次
鉄筋コンクリート住宅のメリット・デメリット
まずは、鉄筋コンクリート住宅を採用した場合のメリット・デメリット、その他の主な主要構造である鉄骨造・木造と比較しながら纏めておきます。
その後に、鉄筋コンクリートの詳細の特徴を解説していきたいと思います。
メリット
- 耐震性が高く、地震などの災害に強い。
- 鋳型である型枠さえ組むことができれば、曲線などあらゆる形状の建物をつくることができる。
デメリット
- 建物自体が重くなるため、より強固な基礎が必要となる。
- 材料費、工期の長さなどから木造住宅と比較してコストがアップする。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造を構造種別に徹底比較
鉄筋コンクリートの重さ、耐震性、コスト、自由度をその他の構造種と比較してみると、
1.重さ
鉄筋コンクリート>鉄骨造>木造
※構造材料の単位あたりの重量の参考値
- 木 → 8【kN/㎥】
- 鉄鋼 → 78【kN/㎥】
- コンクリート →23~24【kN/㎥】
2.耐震性
鉄筋コンクリート造≒鉄骨造≧木造
3.コスト
鉄筋コンクリート造>鉄骨造>木造
4.形状の自由度
鉄筋コンクリート造>木造>鉄骨造
鉄筋コンクリート住宅の建築費用
上記で比較した通り、 他の構造と比較すると鉄筋コンクリート造は建設費が高くなる傾向があります。
ここでは具体的にどのくらい高くなるのか、長期的に考えればどうなるのかという部分について詳しくみていきます。
坪単価
まずは間取りや仕様などによって違いはありますが、一般的な目安の坪単価の比較です。
構造種 | 坪単価 |
木造 | 70万円/坪 |
鉄骨造 | 85万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 100万円/坪 |
鉄筋コンクリート造は木造に比べて1.3~1.5倍のコストがかかります。
法定耐用年数の比較
次に法定耐用年数(減価償却の年数。≠建物の寿命)の比較です。
構造種 | 坪単価 |
木造 | 22年 |
鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
鉄筋コンクリート造は木造に比べて 2.1倍の耐用年数があります。
耐用年数から考える建築費用を算出すると・・
実際の建物の寿命はそれぞれ上記の年数より長くなりますが、明確な基準がある法定耐用年数に基づいて1坪当たりの長期的なコストを比較していきます。
構造種 | 坪単価 |
木造 | 3.2万円/年(70万円÷22年) |
鉄骨造 | 2.5万円/年(85万円÷34年≒) |
鉄筋コンクリート造 | 2.1万円/年(100万円÷47年≒) |
上記の結果から長く住むこと、次の世代に引き継ぐことなど長期的な目線で考えると、建物の耐用年数に対する経済性は木造と比べて鉄筋コンクリート造は各段に良くなることがわかります。
ここまで、鉄筋コンクリートの重要ポイントを抑えました。
ここからは、さらに詳しく鉄筋コンクリートについて深掘りしていきたいと思います。
鉄筋コンクリート造の特徴
鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete 略してRC)とは、組み立てた鉄筋の周囲にコンクリートを流し込んだもの。これを柱や梁(はり)などの構造上主要な部分に用いた建物を鉄筋コンクリート造といいます。
鉄筋とコンクリートについて知っておこう
まずは、鉄筋とコンクリートそれぞれについて理解をしておきましょう。
1.鉄筋(異形鉄筋)
鋼を圧延し表面に凹凸を付け、コンクリートの付着性を高めた棒状の鋼材です。引張りに抵抗する力が強いです。
2.コンクリート
セメント・水・骨材を練り混ぜたもの。(セメントの中でも最も一般的な普通ポルトランドセメントは、粘土と石灰石を主原料とし、これに石膏を加えてつくられます。)
圧縮に抵抗する力が強い。品質は現場の施工に大きく依存します。
鉄筋は引っ張り力には強いが、圧縮力を受けると座屈しやすく、熱に弱くて錆びやすい。一方で、コンクリートは圧縮力に比較的強く、耐火性に優れている反面、引張り力には弱い材料です。
両者はお互いの付着性がよく熱膨張率がほぼ等しいため、一体化してお互いの欠点を補い合った構造をつくることができます。さらに、コンクリートは鉄筋を火熱から守りつつ、アルカリ性であることから錆の発生を防ぐ役割も果たしています。
鉄筋コンクリート住宅・構造の種類
主なものとして
- 柱と梁の接合を剛接合としたラーメン構造
- 耐力壁を構造要素とした壁式構造
があります。それぞれの特徴をみていましょう。
1.ラーメン構造
柱や梁(はり)で構成されており、地震や風の水平荷重には柱と梁が一体となって抵抗します。
壁式構造に比べ階高・スパンが大きくとれ、開口も自由に設けることができます。
2.壁式構造
耐力壁・壁梁・床スラブで構成されており、耐力壁をバランスよく配置することで、外部からの荷重に抵抗します。
上下の壁位置を合わせる必要があり、シンプルな間取りが望ましいです。
鉄筋コンクリート住宅を検討する際の注意点は何がある?
1.ひび割れ
コンクリート造は型枠を組むことができれば、複雑な形状でも施工が可能なため、いろいろな形態の様々な用途の建築物に採用されています。
しかし、コンクリートはひび割れを起こすことがあるという大きな問題点を抱えています。
このひび割れは建物の景観を損なうだけでなく、耐久性を低下させることにもなります。外壁面に生じたひび割れが、漏水をもたらすことも少なくありません。
ひび割れの種類には、
- コンクリートの硬化中に起きるもの
- 温度変化による膨張や収縮によるもの
- 地震などの振動により発生するもの
があります。
ひび割れの発生を最小限にするためには、密実なコンクリートを打設するとともに、あらかじめひび割れが予想される箇所を鉄筋で補強したり、ひび割れを特定の場所に集中させるための誘発目地を設置するなどの対策が必要となります。
寿命はどの程度なのか?
鉄筋コンクリートの寿命は60年〜100年と言われています。
寿命の長さを決める要因となっているのが、コンクリートがアルカリ性を失い中性化が内部の鉄筋まで到達する年月です。
内部の鉄筋が錆びると膨張し、表面のコンクリートにひび割れや剥落などの悪影響を及ぼします。
(少し専門的になりますが)その為、建物の寿命を伸ばすにはコンクリート表面から鉄筋までの距離であるかぶり厚さを適正に確保することが重要となってきます。(3cmのかぶり厚で、2時間の耐火性、30年の耐久性がある)
3.鉄筋コンクリートの断熱種類
断熱種類には大きく分けて2種類あります。
- コンクリート躯体(くたい)の外側で断熱を行う外断熱
- 躯体の内側で断熱を行ううち断熱
です。
外断熱はコンクリートに対する外気温の影響が小さく、室温の変動が少ないメリットがあります。しかし、冷暖房立ち上がり時は、コンクリート自体が温まりにくく、冷めにくいため内断熱に比べ室温が適温になるまで時間がかかります。
また、外壁の外断熱は躯体の耐久性向上にも効果がありますが別途仕上げが必要になりコストアップの一因にもなります。また、バルコニーなどでは、断熱層を連続させるのが難しいため屋根の外断熱ほど普及していません。
4.外壁仕上げの種類
外壁に求められる性能の中でも、 防水性と防火性は特に重要です。
鉄筋コンクリートは表面のひび割れなどから雨が浸入して内部の鉄筋に達すると、発錆の原因となり建物の寿命に悪影響を及ぼします。
そのため防水に関しては、塗装を施したりタイルを張るなどしてその性能を高める必要があります。
1.打放し仕上げ
コンクリート面をそのまま仕上げにしたもので、型枠のパネルやPコン穴がデザインのアクセントのなります。しかし、表面が剥き出しの仕上げとなるため鉄筋コンクリートの耐久性や雨の躯体内部への浸入が弱点となるため、施工時にはかぶり厚さを注意し表面に撥水剤を塗布するなどの配慮が必要になります。さらに、コンクリート素材の美しさをできるだけ表現するように仕上げるために、コンクリートの色、通りや不陸等の精度、パネルやPコンの割付など、それ相応の施工計画および現場管理が必要となります。
2.塗装仕上げ
塗料の種類(フッソ、シリコン、ウレタン、アクリル系等)の違いにより耐久性は5〜20年と言われています。施工には刷毛やローラーが使われ様々な仕上げ表現ができます。
3.タイル張り仕上げ
タイルにはコンクリート表面を保護する効果があります。しかし、経年劣化などにより
タイルが剥落する可能性もありメンテナンスにコストがかかります。
鉄筋コンクリート住宅を取り扱うハウスメーカー
住宅メーカーでは以下のようなシリーズで取り扱っています。
・大成建設ハウジング:Palcon
・三菱地所ホーム:Extra
・ミサワホーム:Mcon
まとめ
鉄筋コンクリート造は戸建て住宅で一般に広く用いられている木造に比べ、耐震性に優れ、形状を自由に計画できるという良い面があります。
その一方で材料費が高いことに加え、建物自体の重量が重くなることでより強固な基礎が必要となったり、工事期間が長いためその分の仮設費用がかさむなど建設費は高くなります。
さらに、施工時のかぶり厚さや鉄筋間隔、コンクリートの充填性などが鉄筋コンクリート造の品質を左右するため、信頼できる施工店に依頼することが重要となってきます。
しかし、これらの留意点と向き合い鉄筋コンクリート住宅を実現することができれば、周囲の住宅と一線を画すことは間違いありません。
良い面、悪い面をしっかりと理解し、他構造と比較したうえで鉄筋コンクリート造を選択肢の一つとして入れてみてくださいね。