新たな断熱性能・HEAT20の特徴やメリットを詳しく解説

新たな断熱性能・HEAT20の特徴やメリットを詳しく解説

最近の住宅は、断熱性能が高くなってきており、各住宅会社や工務店は、断熱や気密に関して、約30年前ぐらいの住宅に比較すると断然変わってきています。

新築を検討されている方などは一度は聞いたことはある、「ZEH(ゼッチ)」や「低炭素住宅」という言葉がありますが、 さらにそういった住宅より断熱性能の良い住宅「HEAT20」について、解説していきたいと思います。

HEAT20とは?

HEAT20とは、温暖化対策のため発足した団体で、「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」と言い、 2009年に発足、HEAT20はその略称であり呼称です。

ここの団体は、室内温熱環境をどうあるべきか、住宅の省エネルギー基準とは少し異なる観点からG1~G3という断熱基準を提案にしている団体で、その団体名自体が、断熱の新しい基準のような形になっています。

このHEAT20委員会では、住宅の生産者側が購入者(施主)に対して、HEAT20の基準を単に省エネ対策のツールとしてではなく、室内環境性能の向上に大きな効果をもたらす、外皮性能の向上の重要性と必要性を理解するために、「室温」という最もわかりやすい指標を用いて、エネルギー性能やコストバランスを考慮して目指すべき水準を示しています。

3つのグレードを設定・G1~G3

断熱性能に3つのグレードを設定しています。

3つの目は最近できたグレードではありますため、公式のページにもG1とG2しか載っておりません。

G3レベルは、さらにレベルの高い断熱性能を示すUA値で0.26(7、6地域)となっているようです。

そもそも公式にこの水準を設定するのか否かも正式には決定していない様子ですが、昨今断熱性能の高まるムードは継続している状況は間違い無さそうです。

そもそも断熱性能とは?

断熱性能とは、住宅から熱が逃げたり(主に冬のイメージ)、反対に外から熱が入ってきます(主に夏のイメージ)。

その熱の移動を、様々な断熱材を使って、熱が逃げにくく入りにくくして、省エネや快適性を高めていきます。

国の基準では、外皮計算という計算を施して、出てきた結果は0.87という数字を切っていれば問題ないとされています。
(九州・四国・本州の温暖な地域5地域~7地域の場合)

ただ、このHEAT20の基準では、5地域では0.48、6~7地域では
0.56とさらに高レベルな断熱性能を、標準基準として設定されています。
 
断熱性能の向上が、快適性の基礎となる部分で、断熱材やサッシの性能が良いものを選ぶことが、住宅の快適性につながっていくことになります。

HEAT20にするメリット

体感温度が違ってくる

断熱性能の高い家と低い家では、エアコンの設定温度で暖房をしていても、「体感温度」が変わっていきます。

室温が仮に同じだったとしても、断熱性能の低い住宅は、外気に接している壁や窓、床が冷たくなっており寒く感じられます。

また、断熱性能の低い家ではよく「隙間風」がする、と言いますが、本当にどこからか隙間が空いていて、直接的に風が入り込んでいるような家はなかなか無いのではないでしょうか。

この現象は実は「コールド・ドラフト」と呼ばれる現象であることが多いです。

これは冬に起こる現象ですが、壁や窓で冷やされた空気が、部屋の下の方(床面)に向かって風のように空気が対流してしまう現象です。

そのため、冬に窓や壁付近にいるとスースーして寒く感じられるのは、折角温めた空気が冷やされてできた対流の風であります。

こういった現象は、断熱性能の高い住宅では起こりにくく、エアコンを同じ設定温度で運転させていても、壁が冷たくならず、窓も同様に冷たくないため、コールドドラフトも起こりにくく、体感温度としては全然変わってくるんです。

実際に外気温が2.4度の真冬の想定で、エアコンを20度設定で運転した場合:

  • 断熱性能の低い家は表面温度(室内側)は約13度で、体感温度は約16度
  • 断熱性能の高い家は表面温度(室内側)は約17度で、体感温度は約18度

と差が出てきます。

廊下や玄関などの暖房していない場所も暖かい

真冬に、玄関まわりや廊下が寒くて…というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。

これも住宅全体の断熱性能が高い低い家では、居室は暖房をして20度前後になっていたとしても、玄関やトイレなどは15度以下、ということになってきますが、 断熱性能の高い住宅では、ホールやトイレも温度差が1度以内で、居室間の移動も楽に行うことができます。

これによる最大のメリットは、「ヒートショック」の軽減です。

ワイドショーなどで聞いたことがある方も多いかもですが、冬場によく起きますが、血流の急激な変化で心臓などに大きな負担がかかって、急に倒れしまい、最悪死に至る危険な現象です。

暖かいところにいる時点では、血圧が落ち着いていますが、寒いところに移動すると血管が収縮して血圧が一気に上がります。

また、そのまま、例えばお風呂に入ったりすると、反対に急激に血圧が下がります。

また風呂上りに寒い廊下に行くと、血圧が上がる、という急激な上下を繰り返すことが危険でありますが、断熱性能の高い住宅では、そういったことが起こりにくいです。

断熱性能を高めることは、命を守ることにも繋がる場合があるんですね。

結露やカビも少なくできる

断熱性能を高めること、壁の表面温度を上げることは、 壁に発生するカビや結露の防止になります。

水分があるとカビが発生しますが、その水分の原因としては「結露」です。主に冬場に窓が水滴でいっぱいになるものですね。

これが壁の内部で発生することがあります。

室内が暖房で暖かく、加湿器などで湿気を上げていたりすると、先ほどの話で、壁が冷たいと、冷たい壁に水分(水蒸気)の状態から、水(液体)へ変わって付着します。

その水分にカビが発生し、ぜんそくなどの原因になってきたりします。断熱性能を上げることが、そういった健康面での効果が生まれてきたります。

健康にも良い断熱住宅

10年以上前にシックハウス症候群という言葉が出てきましたが、新しい住宅に住むと身体の調子が悪くなる、という現象がありました。

関連記事:家のシックハウス対策!考えうる対処法を伝授します

様々な原因がありますが、多くは新しい建築資材から出る物質によるものでした。

今はそういったことにならないように、☆4つのF☆☆☆☆材がほぼ全ての国産の建築資材には対策がされていますので、問題はかなり少なくなってきていますが、ここでも室温環境により、例えばアトピー性皮膚炎や喘息などの発生を軽減することができる場合があります。(個人差があります)

アトピー性皮膚炎や喘息の原因のひとつとして、室内の空気環境があります。

小さいお子様などは、家にいる時間が長いことが多いですが、その室内の空気にカビが多く含まれていたりすると、上記のような身体の不調に繋がる場合があります。

必ずしもではありませんが、古いアパートから新築にしてから、そういった症状が軽くなったというケースは少なからずあります。

暖寒差の大きい住宅では、結露やカビの抑制をすることが難しいですが、HEAT20レベルの住宅では、住宅の寿命だけでなく住んでいる人の健康寿命を伸ばすことに繋がるかも知れません。

HEAT20レベルの住宅にするためには?

HEAT20レベルの住宅は、一般的には大手住宅メーカーでもかなりハイレベルな断熱性能を持っているメーカーでようやく対応できるぐらいの性能になっています。

一般的な感覚からすると、かなり断熱性能が高いため、コストもその分上がります。

正直、街場の工務店や住宅会社では、そこのレベルに達して標準として設定している会社はかなり少ないのが、私の肌感覚です。(中部地方において、ですが)

あとは、本州南部~の温暖な地域と、東北北部から北海道では環境が全く異なり、必要性も変わってきますので、最終的にはコストとのバランスを考慮して、ご自身のお住まいの地域の環境と照らし合わせてご新築を設計されることをオススメいたします。

参考URL:http://www.heat20.jp/heat20towa.html

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