省エネ対策は住まいにおいても、冷暖房など消費エネルギーを抑える高断熱・高気密化が進んでいます。
それに伴って換気・空調も重視されています。
家庭の消費エネルギーの約7割がエアコンや給湯によると推定されています。
特に開口部の断熱性を上げて隙間をなくし、熱の出入りを抑えて小さなエネルギーで暮らすことができれば、光熱費の節約になるだけでなく、部屋ごとの温度差による不快感も解消しますよね。
そうすれば結露も発生しにくくなるので、家も長持ちすることになります。
家の空気をどう逃さず、外気をどう入れないか、今回は開口部についてより詳しくポイントを押さえていきましょう。
この記事の目次
サッシの材質にこだわりましょう
サッシには、軽量で耐久性、防火性に優れたアルミニウムが最も多く使われていますが、熱伝導率が高いところが難点ですね。
他にどのような材質のものがあるのか、その特徴の違いをまとめました。
アルミサッシ 〜普及率No.1〜
アルミサッシは強度、耐候性、防火性に優れています。
軽量で開けたての操作が楽にできます。腐食しにくく、錆びにくいのが良いところですね。
ただし、熱伝導率が高いので、断熱性にやや劣ります。
また、結露しやすいのが難。
結露対策として最近は、外枠と内枠を分離して、間に樹脂部品を入れたものや、内枠に異なる素材を組み合わせたものも増えています。
樹脂サッシ
熱伝導率が低いので断熱性にとても優れています。
寒冷地での使用が多く、水密、気密性もあります。
アルミより強度が弱い分、厚みのある構造になっているものが多いのが特徴です。デザイン性も高いので注目されていますが、コスト的にはやや割高です。
木製サッシ
木の質感、見た目の温かさが人気で、調湿性があり断熱効果が高いので結露にも強いです。
ただし、長い間風雨にさらされると腐食するので、日頃のメンテナンスに気をつける必要があります。
木なので反り、狂いが出るのが難でしたが、十分に乾燥させた特殊な構造で気密性を高めた以下の3つのような商品も普及しています。
- 木製枠に塗装の保護被膜をつけたもの
- 木製枠にアルミをかぶせたアルミ・クラッド・サッシ
- 木製枠を樹脂でくるんだ樹脂クラッド・サッシ
複合サッシ
「アルミ+木または樹脂」のような構造で、外気に触れる外側に耐久性や強度に優れたアルミを、室内側には断熱性の高い木または樹脂を用いたサッシです。
インテリアにこだわりをもつ方にも人気です。
ガラス選びも熟考しましょう
窓枠にはめこむガラスについても、現在はさまざまな機能をもった製品が発売されています。
防犯、遮音、遮光、断熱などの目的、コスト、家に求められている性能などをよく考えて選ぶ必要があります。
・フロートガラス
ポピュラーな板ガラス。
・スリ板ガラス
片面に珪砂などで磨り加工した不透明なもの。
・型板ガラス
ガラスの片面に型模様をつけたもの。光は通しますが、視線を遮ってくれます。
浴室、トイレなどに使用されます。
・強化ガラス
フロート板ガラスを約700℃に加熱したあとで急速に冷やしてつくります。
同じ厚さの板ガラスに比べて約3~5倍の強度を持ち、万一割れても破片が粒状になるので、大きなケガになりにくいガラスです。
・合わせガラス
2枚の板ガラスの間に柔軟で強靭な中間膜を挟み、熱と圧力を加えて接着させたガラス。
割れても破片が飛び散らないので安全です。防音効果、紫外線を99%カットします。
・防犯ガラス
2枚の板ガラスの間に厚さ0.76mm以上の柔軟で強靭な中間膜を挟み、加熱、圧着したガラス。
突き破るのに時間がかかるため防犯性に優れます。防音効果もあり、割れても破片が飛び散りません。こちらも紫外線を99%カットします。
・複層ガラス(ペアガラス)
2枚または3枚のガラスの間に乾燥した空気を封入することで断熱性を高めたもの。
一口に複層ガラスといっても、いろんな種類の製品があり、性能も異なります。
複層ガラスについては次に詳しくご紹介します。
窓から逃げる熱を防ぐ!ポイントは複層ガラスサッシ
住宅のなかでも、窓からの熱損失には最も注意が必要です。
窓ガラスは単板では熱が伝わりやすいことから、複層ガラスを採用するケースが増加しています。
最近は新築戸建て住宅の80%以上で用いられているといわれています。さらには高機能な複層ガラスも登場し、とても注目されています。
複層ガラスは、2枚のガラスの間に封入された空気層が断熱材のように断熱効果を発揮して、窓ガラスによく見られる結露も防ぐことができ、健康的な室内環境を実現できるのです。
複層ガラスの種類
・複層ガラス
2枚のガラスの間の空気層が単板ガラスの約2倍の断熱効果を発揮します。結露やカビ・ダニの発生も抑える普及タイプです。
ペアガラスという言葉もよく耳にすると思いますが、基本的な構造は同じです。
複層ガラスは総称、ペアガラスは「AGC旭硝子」の商標登録となっています。
・高断熱複層ガラス
室内側ガラスの外側にコーティングした特殊金属膜で、太陽熱を入れ、室外に熱を逃さない寒冷地向きの複層ガラスです。
一般的な複層ガラスの中空層は乾燥空気が入っており、これによって熱の移動を制限して断熱効果を得ていますが、高断熱複層ガラスにはアルゴンガスという、乾燥空気よりも冷たい空気の影響を受けづらいガスが封入されているので、冬場の防寒対策にも、より効果があります。
・遮熱複層ガラス
室外側ガラスの内側にコーティングした特殊金属膜で、夏の日差しを遮り、冷房効果を高めます。西日の当たる部屋にも最適です。
・高断熱複合サッシ
室内側に熱伝導率の低い樹脂、室外側に耐久性に優れたアルミを採用。
異なるふたつの素材の特性を生かして一体化させた複合構造で高い断熱性を発揮します。
・Low-E複層ガラス
Low-Eとは、低放射(Low Emissivity)の略称です。
関連記事:メリット満載!Low-Eガラスの効果と価格。デメリットも紹介
Low-E膜と呼ばれる、透明な特殊金属膜をコーティングして、遮熱効果のある低放射(Low-E)ガラスを使用した複層ガラスです。
Low-E金属膜は、低放射性を発揮する銀などの金属が使われ、それを保護する酸化金属を重ねた多層膜となっています。
光を通し、日射や暖房などの赤外線を反射するなど、透過するものをコントロールする性能があります。高い断熱性能と、夏の日射しを遮る遮蔽性能に優れています。
・真空ガラス
中空層が真空層になっている複層ガラスです。
真空層を封入するため空気の流れを断ち切ることができるので、あらゆる複層ガラスの中でもトップクラスの断熱性能です。
また、2枚のガラスが共鳴しないため、遮音効果にも優れています。
ガラスの種類と熱貫流率
熱は熱伝導、対流熱伝達、放射熱伝達の3つのプロセスにより移動します。
建物の屋外側での表面熱伝達(対流と放射)・壁や開口部内の熱伝導・室内側での表面熱伝達(対流と放射)という現象により熱が移動します。
この一連の流れを「熱貫流」とよびます。
熱の伝わりやすさを示す熱貫流率は、値が低いほど断熱性能に優れています。
そこで、ガラスの種類別の熱貫率をまとめてみました。
フロートガラス(6mm厚) | 熱貫流率U=5.90(W/㎡・K) |
熱線反射ガラス(6mm厚) | 5.80 |
高遮蔽性能熱線反射ガラス(6mm) | 4.70 |
断熱複層ガラス(12mm厚) | 3.40 |
高遮熱断熱複層(Low-E)ガラス(12mm厚) | 2.50 |
真空ガラス(6.2mm厚 | 1.40 |
ガラス+サッシの構造と断熱性能
熱が逃げる度合いを、アルミサッシ+単板ガラスを100とした場合に、そのほかの組み合わせの構造とどのくらいの差があるのかをみてみましょう。
プラスティック+高断熱複層ガラス | 35.7 |
木製サッシ+高断熱複層ガラス | 35.7 |
【二重サッシ構造】屋外側アルミサッシと単板ガラス+高断熱複層ガラス | 35.7 |
アルミ熱遮断構造サッシ+複層ガラス | 53.5 |
アルミ樹脂複合サッシ+複層ガラス | 53.5 |
アルミサッシ+複層ガラス | 71.4 |
アルミサッシ+単板ガラス | 100 |
この結果をみると、普通の単板ガラスに比べて高断熱複層ガラスがいかに断熱効果を得られるかがよくわかりますね。
省エネで長く快適に暮らすためにも、ぜひ複層ガラスにすることを考えてみましょう。
まとめ
建物の中でガラスは熱的に最も弱い部分であり、ガラスの性能を上げることで、暖房や冷房のためのエネルギー消費量を減らし、室内の快適性も向上させることができます。
ガラスの断熱性能を上げるためには、ガラスを複層にするか、または二重窓や三重窓など多層化して熱性能を向上させる必要があります。
住宅では特に複層ガラスの使用が普及しています。
複層ガラスといっても様々な種類のものがあり、ガラス+サッシの構造によっても性能が変わってくるので、目的に合うように選び、まだ複層ガラスにしていないという方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。