『フィックス窓』という言葉をご存知でしょうか?
一軒家の住宅であれば、どこかしらにこのはめフィックス窓があるかと思います。
開閉できないものであれば天窓や明かり窓もその一つになります。
住宅業界では『フィックス窓』と呼ばれることが多いので、ここではフィックス窓(FIX窓)として記述していきます。
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この記事の目次
フィックス窓のメリット・デメリットは?
開け閉めのできないフィックス窓のほとんどは採光と眺望のためにつけられます。
そんなフィックス窓のメリットから
1.通常のサッシよりも安価である。
窓枠がほとんどいらず鍵も必要ないフィックス窓はそれだけ価格が安くなります。
同じ大きさのサッシでも値段がかなり違ってきます。
例えば、階段室の採光のために設置される小窓の場合、開閉ができる滑り出し窓にするとフィックス窓より2~3倍高くなります。
つまり、フィックスにするだけでコストが抑えられるということです。
2.太陽光を取り込める。
フィックス窓にする 一番の目的はなんといっても採光でしょう。
やっぱり室内が明るいと気分が晴れやかになりますもんね。
人は太陽光を浴びることで脳や体を活性化したり自律神経を整えることができます。
そんな太陽光を余すことなく室内に取り込めるのがフィックス窓の魅力でしょう。
また、フィックスは開け閉めしないことにより他のサッシよりガラスを大きくとることが可能です。
大きな開口でも一枚ものガラスですっきりと納めることができます。
天窓(トップライト)もフィックスが多いですが、最近は開閉式のものもありますのでメンテナンスを考慮して選んでください。
3.ピクチャーウィンドウとして
開閉機能のないフィックスは窓枠部分を極力まで細く目立たなくすることができます。
庭園だけでなく海や山など自然の眺望まで壁にかけた絵画のように室内に取り込めます。
そのような窓をピクチャーウィンドウと呼びます。
室内に自然の風景を取り込めば開放感もあり部屋をより広く感じられることでしょう。
4.デザインが自由自在
フィックスは丸や三角など好きな形で作れるデザイン性の高さも魅力です。
住宅の外観は窓で決まるといっても過言ではなく、それだけ窓の大きさや設置場所により住宅の印象が変わるものです。
明かり窓などの小さな窓を丸い形や細いスリット状にすれば個性的でオシャレな印象になりますよね。
よりデザイン性を追及するならステンドグラスにすることだって可能です。
5.転落防止
窓が開かないので幼児の転落事故の心配がありません。
子育て世代には安心ですよね。鍵のかけ忘れもありません。
フィックス窓のデメリット
では、ここからデメリットです。
フィックス窓の場合は、せっかくのメリットがデメリットに転じる場合が多いようです。
1.メンテナンスが大変
窓が開かないので外側が汚れた場合の掃除が大変です。
特に2階など手の届かない場所だと脚立を使ったり屋根に上ったりと危険が伴います。
場所によっては足場を組まないと届かない可能性も。
そうなると掃除のたびにいちいち業者を呼ぶことになり、せっかく施工費用が安かったのにメンテナンス費用が高額で大失敗なんてことがあるかもしれません。
新築の場合、そういう後々のメンテナンスを考慮してフィックスの位置を決めたほうがいいでしょう。
2.プライバシーの問題
ピクチャーウィンドウとして風景を借りる(借景)ことが目的のフィックス窓は、開口が大きくなるほど外部から見えやすくなります。
特に道路や隣家に面している場合は塀やフェンスで目隠しを施さないと家の中が丸見えなんて悲劇も起こります。
外の視線を気にしてカーテンやスクリーンで窓を覆ってしまっては、せっかくのピクチャーウィンドウの良さが半減してしまいます。
ピクチャーウィンドウの設置については住宅の外回り(エクステリア)工事と並行して考えたほうがいいでしょう。
3.断熱性や通気の問題
やはりガラスはガラス。壁面より断熱性は劣ります。
例え、遮熱断熱に優れたLow-E複層ガラスであっても、ガラス面からの熱吸収や放熱は避けられません。ガラスが大きくなればなるほど冷暖房効率が下がると考えたほうがいいでしょう。
関連記事:メリット満載!Low-Eガラスの効果と価格。デメリットも紹介
また、窓が開かないフィックスは換気ができません。「あの窓が開けば風を通せたのに」なんて後悔しないように空気の流れも考えて計画を立てたいものですね。
これなら後悔しない!フィックス窓の効果的な設置方法。
ここからは 効果的でかつリスクの少ないフィックスの使い方を提案したいと思います。
奥行きを感じさせたり坪庭を美しく見せる地窓として
地窓の良さは何といってもプライバシー性の高さでしょう。
足元の低い位置に設置されているので、ほぼ外部からの視線は届きません。
そして、人間の視覚は景色が途切れることでかえって奥行きを想像して、足元から見えるわずかな空間でも実際より広く感じることができるそうです。
特におすすめなのは坪庭(建物や塀に囲われた小規模な庭)を見せる地窓でしょう。
地窓でも小さな坪庭であれば一望できます。
玄関に設置された坪庭なら玄関を広く感じられて家のアクセントにもなります。間違いなく来客の目にとまることでしょう。
瞬間調光ガラスという選択
さきほどピクチャーウィンドウのデメリットはプライバシーの問題にあると書きましたが、外から見えない不透明なガラスであればなんの心配もありませんよね。
しかし、それではピクチャーウィンドウの意味がなくなります。
だったら、 透明と不透明を切り替えられたら解決するわけですが、実はそんな夢のようなガラスが存在します。それが瞬間調光ガラスです。
瞬間調光ガラスとは、合わせガラスの間に特殊な液晶シートが組み込まれており、そのシートに通電させることで不透明と透明を切り替えることができるものです。
スイッチでONとOFFの切り替えをするので、サッシ工事と別途で電気工事も必要になります。
まだ開発されてから日が浅くそれほど広まっていない技術なので、コストを考えるとまだまだ現実的ではないかもしれません。
しかし、今はガラスだけでなく瞬間調光シートの開発も進んでおり、もっと世の中に広まれば誰でも手に届くものになる可能性もあります。
瞬間調光シートは今や不透明にしてプロジェクターのスクリーンとして活用したり、スマホやAIスピーカーと連動させたりできるそうです。
このような技術を普段使いできるようになれば、これからのライフスタイルはガラッと変わるかもしれませんね。
まとめ
結局のところフィックス窓というのは窓が開かないことがメリットでありデメリットにもなります。
そこをよく理解して設置しないと後悔することになります。
フィックス窓を改修する場合、カバー工法(既設の窓枠を利用して新しいサッシを設置する)というやり方があります。
デメリットは既設の窓枠を利用してその上からかぶせて設置するのでサッシ枠が増えガラス面が狭くなるので採光性が悪くなります。しかも、小さな窓でも工事費が1か所10万円以上かかる場合が多いようなのでご注意を。
そのような後悔や余計な出費を避けるには、やはり設置する前の段階での設計者や施行業者との密な打合せが欠かせません。
それはフィックスだけに限ったことではありません。どんな小さなことでも相談できる関係を築いていきましょう。