人工大理石という言葉をご存知の方は多いと思います。
住宅業界では『人大(じんだい)』と略されており、すっかり定番の素材となりました。
しかし、その種類や特性はあまり知られていないのではないでしょうか。
天然の大理石以外で、人工的に作られた大理石にも『人工大理石』と『人造大理石』があり、同じようで異なります。
その違いや人大のメリットとデメリットを紹介していきましょう。
この記事の目次
大理石の種類
天然大理石
人工的に作られた大理石と区別するために『天然』とつけていますが、一般的に『大理石』といえば天然のものをさします。
石灰岩が熱と圧力で結晶化することにより硬化した岩石のことで、中国、ヨーロッパなど世界各地で採掘されています。
他の石材よりも柔らかくデリケートな性質で、取り扱いに注意が必要です。
酸性にもアルカリ性にも弱く、特に酸性のものに触れると変色やシミの原因となるので、キッチンのワークトップ(天板)にはあまり向いていません。
天然石なので希少性も高く、価格も人工大理石の5倍以上します。
資源の枯渇が叫ばれる昨今では、これから更に価格が高騰する可能性もあります。
人造大理石
天然大理石が主な原料で、大理石を粉砕したものをセメントなどで人工的に固めたものです。
原料は天然で製造は人工と言うとわかりやすいかもしれませんね。
別名『テラゾー』と呼ばれています。
仕上げに研磨作業が必要になるので、浴槽など複雑な形のものには適しません。
板状に加工して使用されることが多いです。人造大理石には、
- レジン系人造大理石(テラゾー)
- セメント系人造大理石(テラゾー)
主に二種類あります。レジン系はアクリルやポリエステルなどの樹脂で固めたものです。
石材を砕いたチップ(小片)を大きくして固めることができます。
石の粒の大きいレジン系は華やかなので装飾的な内装に向いています。
セメント系のほうは石を細かく砕いたものを固めており、レジン系より固いのが特徴です。
材質的にはコンクリートに近くなります。その特性から、床など外構に使われます。
天然大理石よりもコストは安いですが、材料が天然のものなので人工大理石よりも割高になります。
種類にもよりますが、人工より2倍以上の価格になります。
天然大理石よりも多少は耐久性があるものの、材質が天然のものなので、やはり酸やアルカリに弱いです。
人工大理石
こちらは材料も製造も全て人工で作られたものになります。
その分、天然大理石や人造大理石よりも安価になり、柄や色や形も自由自在に選べるのも魅力です。
住宅業界で大理石とえば、人工大理石が主流になっています。
その中でもアメリカのデュポン社で開発されたコーリアンが有名で、人工大理石と言えばコーリアンと呼ぶ人が多いようです。
人工大理石でも固める成分で値段や耐久性に違いがあり
- アクリル系
- ポリエステル系
主にこの2種類があります。
ポリエステル系のほうがアクリル系よりも価格は安いのですが、その分、熱や衝撃に弱く経年劣化もしやすくなっています。
ポリエステル系は黄ばみやすく汚れも落ちにくいので、キッチンの天板には向いていません。
加工もしやすいので、水回りに使うならアクリル系の人工大理石をおすすめします。
人工大理石は安価なことも魅力ですが、その使い勝手の良さも大きな魅力です。
天然大理石や人造大理石では作るのが難しい丸みのある浴槽や洗面台なども、型枠で製造する人工大理石ならお手のものです。
人工大理石の用途としては主に下記のものがあります。
- キッチンのワークトップ(天板)
- 浴槽
- 洗面台
- テーブル
- カウンター
- 窓台
台所や浴室、洗面に使うのは一般的ですが、窓台に使うのもおすすめです。
窓台とは、窓枠の下部の水平な枠のことです。
窓枠の一部なので普通は木材を使いますが、ここに人工大理石を使うとお部屋のアクセントになり人目を惹きます。
新築やリフォームを考える時に、こういった使い方もあると知っていれば選択肢がより広がると思います。
引用:アイカ工業
引用:Archi EXPO
人工大理石のメリット、デメリット
ここからは人工大理石のメリットとデメリットを紹介します。
メリットとデメリットに関しては人造大理石もそんなに変わりはありません。
メリット
- 高いデザイン性
- 豊富なカラーリングと模様
- 高級感がある
- 自由自在な形
- 水垢が目立ちにくい
人工大理石が一番使われるのはキッチンのワークトップ(天板)です。
キッチンのワークトップは、ほぼステンレスか人工大理石かに分かれます。
どちらもメリットとデメリットはありますが、人工大理石のメリットとしては、豊富なバリエーションから成せるデザイン性です。
壁紙や食器棚、インテリアなどと合わせてコーディネイトしやすいのがメリットになります。
ステンレスは無機質な印象を与えますが、人工大理石は温かみがあるのも魅力のひとつでしょう。
大理石を模しているので華やかな印象もあります。
色柄が豊富なので他のインテリアにあわせやすいのもいいですね。
天然や人造のものと違い型枠に流し固めて製造する人工大理石は、自由自在に様々な形のものがつくれます。
型枠からつくるので、大きなものでも継ぎ目なく仕上げられるのも魅力です。
金属性のものと違い、人工大理石はサビつかないのと、水垢が目立ちにくいので、お掃除は比較的に楽です。
ただ、汚れがついてしまうとシミになりやすいので注意が必要です。
お手入れ方法は後述に記載します。
デメリット
- ステンレスと比較するとコストが高め
- オーダーメイド(特注)に向かない
- 耐熱性、耐久性が低い
- 本物の大理石より風合いに欠ける
ワークトップとしてなら、人工大理石はステンレスより価格は高めになっています。
しかし、昨今の人工大理石の普及によりかなり値段が下がってきているので、メーカーに見積もりを取って比較したほうがいいでしょう。
意外と人工大理石のほうが安くなっているかもしれません。
しかし、その際にはアクリル系かポリエステル系であるか確認しましょう。
特にキッチンのワークトップは耐熱性と耐久性のあるアクリル系をおすすめします。
ポリエステル系は安いので値段で飛びついて後悔しないようにしましょう。
人工大理石は型枠に材料を流し固めてつくられているため、量産性に優れていますが、オーダーメイドには向いていません。
規格外のものとなると型枠製作から始めなくてはならないので、思わぬ高額になる可能性もあります。
そして、これは人造大理石でも天然大理石でも同じですが、熱や衝撃に弱いです。
熱々のフライパンなど直に置くと跡がついてしまうので要注意です。
天然大理石に比べると割れにくいですが、強い衝撃を与えるとひびが入ったり、割れることもあるので気をつけましょう。
これは致し方ないことですが、人工大理石は天然のものに比べると風合いには欠けます。
しかし、今では技術革新が進んでおり、人工大理石でも遜色ないほど高級感があるものもあります。
一見では並べても区別がつかないかもしれません。代理店等を通して現物サンプルやショールームなどで実物を見て確認してみてはいかがでしょうか。
人工大理石のメンテナンス
耐熱性や耐久性が低く、汚れもつきやすい人工大理石は、その欠点をいかにカバーするかが鍵となります。
人工大理石を少しでも長持ちさせるために、ここからは使用上の注意点やお手入れ、研磨(コーティング)などを紹介します。
使用上の注意点
先に書きましたが、人工大理石は熱に弱いので熱せられたフライパンや鍋をワークトップの上にそのまま置くと跡がついてしまいます。
どうしても置くスペースが必要ならば、鍋敷きなどを敷いてワークトップに直接熱が伝わらないようにしましょう。
また、色の濃い野菜(例えばカボチャなど)をワークトップの上で切ってしまうと色移りします。
このシミはなかなか取れません。基本的にワークトップの上で直接作業をしないほうがいいでしょう。
包丁で何か切る時はまな板の上なら安心ですよね。
そして、少しでも汚れがついたら、すぐ拭くように習慣づけることも大事です。
お手入れ
天然大理石や人造大理石の場合、酸性にもアルカリ性にも弱いので、お掃除は家庭用の中性洗剤を使います。
人工大理石でも同様に基本的には中性洗剤を使ったほうがいいでしょう。
その際にはあまり強くこすらないことが重要です。
表面のコーティングを傷つけると、更に汚れが目立ってしまうことも。
中性洗剤で落ちない汚れは、クレンザー(研磨剤)やメラミンスポンジなど、磨いて汚れを落とす方法がありますが、こちらも注意が必要です。
クレンザーに使われている研磨成分やメラミンスポンジの使用上の注意をよく読んで使うことをおすすまします。
シミを漂白してくれる塩素系漂白剤は、人工大理石の種類によっては使用禁止になっていますので、あまり使わないほうがいいようです。
研磨(コーティング)
どれだけお手入れをしていても経年劣化は避けられません。
お掃除をしてもどうしても取れない汚れがついた時はどうすべきか。
人工大理石の上面をサンディング(研磨)して仕上げる方法があります。
費用はかかりますが、新品のような美しさが蘇ることが魅力です。
研磨作業だけでピカピカになりますが、コーティング剤を塗布して、抗菌したり汚れにくくすることもできます。
人工大理石に小さなヒビが入っている場合も研磨がおすすめです。
ヒビを放っておくと、そこから劣化して割れてしまう可能性もあるので、早めに業者に見てもらったほうがいいでしょう。
小さなヒビや傷は研磨で修復可能です。
費用は業者によって様々ですが、大手クリーニング会社によると、研磨とコーティングを合わせて1㎡あたり約4000円となっています。(ただし1回の施工11000円以上から)
浴槽や洗面にも対応していますので、まずはお見積もりを取ってみてはいかがでしょうか。
人工大理石はインテリアの顔であり、高価なものです。
へたに傷をつけてしまっては取り返しがつかなくなりますので、自分の手(DIY)でやることはおすすめしません。
引用:タジマクリーンサービス
まとめ
人工大理石の魅力は、大理石の美しさや温かみを一般家庭でも手が届く価格で使えることです。
しかし、それだけでなく耐久性の向上や本物と見まごう風合いなど、年々進化しており、人工大理石の可能性はどんどん広がっています。
近い未来には、もっと身近になっていて、あらゆる場所で使える素材になっているかもしれませんね。