家づくりでどうしても後回しにしてしまうのが、住宅の基礎工事に関する理解です。
ただ基礎工事は全工程を業者任せにしてしまうと、位置的にも後から修正が効かず困ることになりかねません。
そこで、ここではお家の「基礎工事の流れ」を工程に沿ってわかりやすく解説してみました。
この記事を読むことで、基礎工事のチェックポイントが、手に取るように分かります。
この記事の目次
地縄出し〜遣り方
基礎工事は「土工事」と「基礎工事」に分かれますが、ここではそれ以前の作業となる地縄出しや遣り方から解説していきます。
地縄出し(じなわだし)
整地した敷地に、配置図を基準にロープや縄を使って住宅の外周を出すことを地縄出し(または地縄張り)といいます。
地縄を出す作業は地鎮祭の前日までに終えておくのが普通で、通常は住宅会社の工務担当が行います。
地鎮祭当日は、施主も工務担当がいる中で建物の配置などを確認できます。
建物の配置確認には、地鎮祭当日は最適です。
特に最近の住宅は、建物の北側にヒートポンプの室外機を複数設置することも多くなっています。
こうした計画の住宅では、隣地との離れが十分とれているか、適切な配慮が必要です。
水盛り遣り方
水盛り遣り方(みずもりやりかた)とは、地縄を出した外側に、木杭と貫で組んだ木塀のようなものをいいます。
基礎工事が始まる現場で、遣り方で囲まれた風景を何度か見かけたことがあるでしょう。
ただ、現場における遣り方とは、いわば「ベンチマーク」のようなもの。
つまり遣り方とは、柱や壁の中心や基準となる「水平」を出し、またこれによって基礎根切りの深さと基礎の高さを決めます。
なお遣り方も地縄出しと同日に設置します。そのため地鎮祭の時には、遣り方も一緒に見られるでしょう。
ただ、近年では「レーザーレベル」を使う現場も多くなりました。そのため、水盛り遣り方を省略する現場も増えています。
建物の配置で微調整が効くのは、この地縄出しが最後です。
当日は必ず地鎮祭に出席して、現場担当者と建物の配置についてしっかり打ち合わせしましょう。
土工事
地縄出し〜遣り方が終わると、いよいよ基礎工事の前半に当たる土工事が始まります。
ここでは土工時の流れを解説します。
根切り
根切り(または根堀り)とは、地盤を掘削する作業のことです。
根切りはパワーショベルなどの機械も使いますが、細かなところは現在でもほぼ人力で作業を進めます。そのため根切りは、土工事のなかでもっとも労力と手前がかかる工程です。
根切りで掘り出された残土はすべて処分するわけではなく、埋め戻す際にも使われます。
割栗地業・砕石敷き
割栗地業(わりぐりぢぎょう)とは、建物を安定させるための地業工程のひとつ。
具合的には、根切りをした「根切り底」に割栗石を地盤に差し込みやすいように小端を上にして縦に敷き詰め、その後ランマーで突き固めます。
また割栗石が使えない現場では砕石を用いますが、どちらかというと、近年では砕石敷きの方が多くなっています。
砕石敷きの場合も、同様にランマーで突き固めて地盤をより強固なものにします。
防湿シート敷きと捨てコンクリート
割栗石や砕石を敷いた後、地面からの湿気を抑えるため、防湿シートを基礎全体に渡って敷きます。
そして、基礎の外周部に捨てコンクリートを敷き均します。
基礎工事の流れ(1):基礎配筋〜型枠設置
土工事が終わり、ようやく基礎本体を作る工程に進みます。
基礎工事は、今回3つの工程に分けてみました。
1)基礎配筋〜型枠設置
基礎工事1)では、重要な基礎配筋の工程から解説していきます。
(なお近年、基礎の形状は、布基礎よりベタ基礎が主流です。ここではベタ基礎を想定し、各工程の流れを説明します)
基礎配筋
基礎配筋とは、基礎の鉄筋部分を組む工程で、通常は2、3日程度掛かります。
基礎配筋には設計強度を出すため、それに則った配筋が必要です。
そのため基礎配筋はチェック項目も多く、本来ならすべての現場で検査を実施したしたいところ。
少なくとも注文で建てる住宅では、必ず配筋検査を実施しましょう。
型枠組立(外周部)
ベタ基礎では、はじめに基礎の床ベースにコンクリートを打設します。
このとき、打ったコンクリートが建物の外周に流れ出ないよう、基礎外周にも型枠を組み立てます。
役所の検査は、基礎については現場検査がありません。
そのため、基礎の配筋検査は原則として自社で行います。
ちなみに地域の工務店やビルダーでは、住宅保証会社の保険(瑕疵保険)に加入すれば、第三者の検査員による配筋検査が受けられます。また、ハウスメーカーや設計事務所では自社で検査をします。
検査項目はとても多く、
- 鉄筋の形状
- 径配筋ピッチ
- 鉄筋のかぶり厚
- 継手長さ
- 補強筋の有無
- スリーブ(逃げ配管)の処理など…
ザッとあげただけで、これだけあります。
そのため、配筋検査は2工程に分けて実施するのが普通です。
特に鉄筋のかぶり厚は、工事の精度とコンクリートの強度を決める重要な部分。もちろんコンクリートを打ってからでは修正が効きません。
大切な家のためにも、配筋検査を忘れず実施しましょう。
基礎工事(2):生コンクリート打設
基礎工事(2)では生コンの打設工程について説明します。
生コン打設(床ベース)+基礎立ち上がり部の型枠組み
配筋検査が終了したら、いよいよ生コンを床ベース部分に打設します。
コンクリートの打設はミキサー車が現場に入りますが、注入された生コンを平板に均すのは基礎の職人です。
床ベースのコンクリートが乾くと、基礎立ち上がりの型枠組みに進んで行きます。
アンカーボルト設置
続いてアンカーボルトの設置です。
アンカーボルトとは、基礎の立ち上がりの上端(うわば)から突き出したボルト状の金物のこと。
アンカーボルトには建物が風圧力や地震などで基礎から外れないよう、基礎と建物の土台を緊結する役目があります。
以前は「田植え式」といって、コンクリートの打設後にアンカーボルトを差し込む方式が取られいたこともありました。しかし「田植え式」は、ボルトが土台の中心からずれて、垂直に埋設できないなどの理由で、この方法で設置する業者はまずいません。
生コン打設(基礎立ち上がり)
いよいよ、基礎の立ち上がり部分にコンクリートを打設していきます。
この工程での現場の仕事は次の2つに集約されます。
- コンクリートを隅々まで行き渡らせるため、バイブレーターという振動機で生コンの強度を出していきます
- 基礎立ち上がり部の水平を出すため、レベラーとよばれる専用のモルタルを基礎の天端に施工する(この作業を「天端均し」といいます。以前はコンクリートが打ち上がってから、天端均しを行なっていました)
なおバイブレーターは棒状の機械で、生コン内に振動を与えることで気泡の脱泡を促し、コンクリートの強度を高めます。
これも現場でよく見かけるものなので、覚えておくと良いでしょう。
基礎工事(3):養生〜仕上げ工事
ここでは最後に、基礎の養生や仕上げ工事について説明します。
養生〜型枠ばらし
基礎を長持ちさせるために、十分な養生期間を確保することは重要です。
建築学会刊行の「建築工事標準仕様書(JASS5)」では、基礎の養生は5日以上となっています。
また気温が高くなる夏季は、大体3日以上とあります。
平均的な気温のもとでの基礎の養生は、3日から5日以上と考えれば良いでしょう。
基礎は型枠を外してからも水分を放出し、強度も日々増していきます。そして正しく養生を行なった鉄筋コンクリートは、なかの鉄筋を錆びにくくさせ、基礎を長持ちさせます。
なぜ養生にこだわるかが分かったでしょう。
仕上げ工事
基礎の型枠をばらすと基礎の全貌が明らかになりますが、同時に立ち上がりの継ぎ目や基礎の天端部などにバリが目立ってきます。
これらは基礎の仕上げ工事として、サンダーで削り取っていきます。
まとめ
この記事のポイントを振り返ります。
- 地縄張り(または地鎮祭当日)は家の配置を修正できる最後の機会です。
- 基礎配筋は基礎工事の中でも最重要箇所! 必ず検査を受けましょう。
- 養生が短すぎる業者は要注意。会社で設定している養生期間を事前に聞き出しておきましょう。
以上が3つが基礎工事の流れで、施主が関われるポイントです。
この記事がきっかけで、住宅の基礎に少しでも興味が持てることを願っています。