耐震と制振の違いを解説。基本を抑えてベストな選択をしよう

耐震と制振の違い

新築では、恐らく全員が気にすると言っても過言ではない地震に対する備え。

リフォームでも都道府県や市町村での自治体での補助金もある耐震化リフォームが注目される、などと災害が多い現代には欠かせないものとなっています。

選択肢が色々ある住宅において、あなたにとってベストなものは何かこの記事で参考にして、新築やリフォームを考えてみてください。

耐震についての基礎知識

建築基準法で地震に対する最低限の規定はもちろんありますが、

建築基準法の第1条に記載の通り、

(目的)
第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

と、「最低の基準を定めて」とあります。

建築基準法での耐震となっており、現行の基準は阪神・淡路大震災の揺れに耐えれる基準となっています。

耐震等級という名前で呼ばれますが、詳しくは以下の記事を参照ください。

関連記事:いつからが新耐震?地震に強くなった新耐震の基準と旧耐震との違い

ただ、この耐震等級1では、先日の熊本地震の際にあった2回も3回も震度7クラスの地震が来た場合や、東日本大震災の時のマグニチュード9クラスの地震に耐えれる設計ではありません。

そういった地震にも耐えれるように、耐震や制震のきちんとした知識を下記でご紹介したいと思います。

耐震と制震の違いって何?

考え方としては、耐震は住宅自体を強固なものにして倒壊、損傷を最低限に食い止める考え方です。

それに対して、制震は揺れ自体をダンパーで吸収することを前提に設計され、揺れのエネルギーを逃がして倒壊、損傷を最低限に食い止める考え方です。

どちらがいいか?については一概に言えませんので、各々の特徴やメリットやデメリットを紹介していきます。

耐震の特徴やメリット・デメリット

現在、多くの住宅会社ではこちらの耐震の方が基本的な考え方で採用が多いです。

理由としては、制震にすると制震ダンパーの金額で住宅全体の費用が高くなることが前提にあることと、施工性の良いものが多いためです。

メリット:

費用が制震に比べて安い。

構造用合板によって、かなりの耐震レベルが出る。

関連記事:【もう迷わない】強度を決める構造用合板の種類や価格、使い方を徹底解説

デメリット:

揺れが軽減される訳では無いため、家の中にいる場合地震の揺れはそのまま伝わる。

歪みがどこかに来てしまうと、部分的に損傷する恐れが高い。

制震の特徴やメリット・デメリット

制震のダンパーを作っている会社は多く存在し、色々な商品があるため住宅会社のおすすめを基本的には設置することになることが多いと思います。

メリット:

揺れを吸収するので、家のなかにいた場合は、揺れが軽減される可能性が高い。

デメリット:

耐震に比べて費用が高くなることが多い。

制震の場合は、制震ダンパーを1箇所に付ければいい訳ではなく、最低でも1階には5~6箇所以上の設置が多いです。(間取りや元々の耐震等級のレベルにより設置必要個数は変動します)

横揺れ、縦揺れ、地震のエネルギーのかかり方次第では動作しない可能性もある。

費用はどのくらい違う?耐震と制震のコスト面の比較

各々の特徴は上記で説明しましたが、実際気になる費用面に関してはどうか、をお伝えしていきます。

まず耐震に関しては、法律上定まっている耐震等級3が最高なので、耐震等級1から3へのアップ額がいくらか?についてです。

工法によってかなりバラつきがあるのと、耐震等級3を取得しようとすると、

耐震の費用例:

例えば、柱が増える、筋交いが増える、窓の大きさを小さくしないといけない、などの制約が出てくる可能性がありますが、単純に間取りは大きく変わらないと仮定すると、 約数十万円~80万円未満程度と想定されます。(40坪以下の通常の大きさの住宅)

制振の費用例:

それに対して、制震システムはどこの会社の制震システムを採用するか?で金額のばらつきが大きいです。

制震システムは単純に1箇所いくら?というものですので(最低でも上記通り5箇所以上は通常必要になる)、 相場は1箇所10万円前後~となっております。

安価なものですと、10万円を切るものもあるかと思いますが、40坪前後の住宅で仮に7箇所設置したとすると、単純に70万円以上となります。

費用面だけ単純に比較すると、 おそらく制震の方が高くなる可能性が高いです。

耐震や制震の設計に関して気をつけたいポイント

耐震や制震での設計に関して気を付けておいた方がいいポイントがありますので、そちらを紹介していきます。

重要なポイント①:許容応力度計算までやっているか?

住宅を設計する段階で、建築士(または専用のソフト)が基本的には計算をして、建築基準法をクリアしている設計か否か?の計算を全棟行っています。

ただし、主に木造2階建てで用いられている計算は、専門用語では壁量計算という簡易計算でOKとなっています。

壁量計算とは、地震や台風の時に生じる横(水平方向)からの力に建物が耐えられるように、地震に対しては建物床面積、暴風に対しては外観の立面積から壁の量を求め、計画建物が持つ壁の量が必要以上満たしているかどうか、を計算する方法です。主に木造2階建て以下の建物で用いられます。

それに対して、構造計算と言われる詳しい計算方法が方法があります。

木造住宅で用いる方法の一つとして許容応力度計算という先ほどの壁量計算とは別の方法があります。

許容応力度計算は、

  • 住宅にかかる荷重(垂直方向)
  • 固定荷重(住宅自体の重さ等)
  • 積載荷重(屋根の重さ等)
  • 積雪荷重(積雪地域はどれくらい雪が載って重くなるか)
  • 風圧力、地震の力

等を各々計算をして、各部位に発生する応力度が部位が持つ強度を超えないような安全の余裕をみて、部材の量や位置等を検討計算する方法です。

木造3階建ての建物では、また更に別の詳しい計算法がありますが、内容は同じように色々な角度から計算を行います。

上記のことを要約すると・・構造計算をしてもらったほうが良い

壁量計算は壁の量のみで簡単に検討できますが、配置バランスなどは考慮されなくても計算が完了します。

それに対して構造計算は基礎、柱、梁などそれぞれの部材ごとに計算を行います。

構造計算の方が設計費用が高くなりますが、地震に対してしっかり計算をしてもらった方が良いのではと思います。

この構造計算を行った上で、制震システムや耐震の検討を行うのであれば、ばっちりですが、やみくもに制震システムや耐力面材を追加しても効果が薄れてしまう場合がありますので、住宅会社に相談してみましょう。

耐震診断とリフォーム。補助金や費用について

都道府県や市町村で、補助金の出るリフォームと言えば耐震補強です。

ただ全ての自治体で行っているわけではないため、補助金があるか否か?金額や条件などはご確認の上検討をしてみてください。

補助金が出る例として多くあるのが、

新耐震基準前に建築された住宅、具体的には1981年(昭和56年)6月以前に建てられた住宅は、「旧耐震」と言います。

関連記事:いつからが新耐震?地震に強くなった新耐震の基準と旧耐震との違い

旧耐震では想定している地震が、震度5程度の揺れで建物が倒壊せず、破損しても補修することで生活は続けられることを想定された基準となっています。

昨今では震度5ぐらいの地震はたまにある話なので、そのたまにある地震で補修できる破損が発生すること前提となっているため、ちょっと怖いですよね。

そういった住宅の改修で、現在の法律は阪神淡路大震災の揺れを想定して、その揺れに対応できる程度の耐震補強をしたら、一部を補助します、という内容が多いです。

新耐震基準で建てられた住宅も、自治体によっては条件次第で補助金が出ることもあるかもしれませんので、耐震補強を考えられている方は自宅がいつ建ったのか?自分の住宅の耐震はどれくらいのレベルのものなのか?

自治体や、住宅会社によっては無料で点検や調査をしてくれるところもあると思いますので、一度調査を検討してもいいと思います。

耐震リフォーム費用としては、かなり大がかりなリフォームになるため数百万円~1千万円以上になってきます。

その際に耐震補強だけで十分なのか?
または筋交いに制震システムを導入するか?

は住宅会社と費用や設計方法と共に検討してみてください。