住宅の新築やリフォームで使われる屋根材に「ガルバリウム鋼鈑の屋根」があります。
ガルバリウム鋼鈑は、どんな素材なのでしょうか?
特徴やメリット・デメリット・主なメーカーや費用、注意したいことをまとめました。
この記事の目次
ガルバリウム鋼鈑とは?
住宅で使われる屋根材の主なものには、
- 陶器瓦
- スレート屋根
- 金属屋根
の3種類があります。
ガルバリウム鋼鈑は金属屋根の一つです。
金属屋根には、「アルミ」、「ステンレス」、「銅」、「チタン」などもありますが、ガルバリウム鋼鈑が一番使われている屋根材です。
ガルバリウム鋼鈑の屋根とはどんなものか?
ガルバリウム鋼鈑の素材は鋼鉄で、その鋼鉄を板状に加工したものです。
アルミ55%と亜鉛43.4%、シリコン1.6%のアルミ亜鉛合金でメッキして鋼鈑を被覆することにより耐久性に優れた製品となっています。
よく混同されますが、亜鉛メッキ鋼鈑の「トタン屋根」とは違う製品です。
ガルバリウム鋼鈑の屋根は厚み0.35mmの物が主流で、鋼鈑メーカーが製品を作り、板金工事で施工を行います。
ガルバリウム鋼鈑屋根・4つのメリット
ガルバリウム鋼鈑は、
- 軽い=耐震性が高い
- 耐久性が良い
- 施工性が良い
- デザインが豊富
というメリットがあります。
メリット1:軽い=耐久性が良い
ガルバリウム鋼鈑は軽い素材です。重い屋根材「陶器瓦」と比較すると、地震の揺れに対する屋根の重さの影響が少なくなります。そのため、建物本体における耐震のために必要な構造壁や金物なども少なくすみます。
軽いガルバリウム鋼鈑の屋根は、新築だけでなくリフォームのカバー工法(古い屋根に新しい屋根をかぶせて屋根を新しくする方法)でも多く採用されています。
メリット2:耐久性が良い
ガルバリウム鋼鈑の屋根の耐久性が良い理由は、三つあります。
一つ目:
錆びにくいことです。同じ金属屋根であるトタン屋根(亜鉛メッキ鋼鈑)は錆びやすいため、定期的に錆止め、塗装が必要です。
二つ目:
色落ちしにくいことです。スレート屋根はリーズナブルなため、新築の住宅に良く使われますが、色落ちがするため定期的な塗装が必要です。
三つ目:
メーカー保証が10~30年と長く、メンテナンスの必要がないことです。
メリット3:施工性が良い
ガルバリウム鋼鈑の屋根の施工は、板金工事で行います。
屋根工事では軒先や棟・外壁と接する部分・屋根の谷部分などにはどんな屋根材を使用しても鈑金工事が必要になります。
屋根をガルバリウム鋼鈑で葺く場合、そのような細かい部分を屋根工事と共に施工することができるため施工性が良くなります。
ガルバリウム鋼鈑の屋根は、商品の種類も屋根の形状に合わせて色々あるため、施工性の良い商品を選ぶことができます。
また、ガルバリウム鋼鈑は厚さが薄い(厚さ0.3mmが多く使われている)ため、細かい部分の施工に向いています。
メリット4:デザインが豊富
ガルバリウム鋼鈑の屋根の種類は形状・色とも豊富にあるため、いろいろな屋根の形に対応できます。外壁材にあわせて、屋根材の形状や色を選んで、好みの外観を作ることができます。
デメリットはある?考えられる3つのこと
ガルバリウム鋼鈑は
- 断熱性能が低い
- 雨音などの音がひびく
- コストが高い
というデメリットがあります。
デメリット1:断熱性能が低い
断熱性能とは暑さ・寒さなどの外部の気温の影響を受けにくくする性能です。
ガルバリウム鋼鈑は熱を伝えやすい素材であるため、材料自体の断熱性能が高くありません。
ガルバリウム鋼鈑を屋根材として使用する場合には、建物に使用する断熱材で十分断熱するようにします。
最近では、遮熱性能の高い遮熱塗料が塗装された製品や断熱材が一体となっている製品も出てきています。
デメリット2:音がひびく
ガルバリウム鋼鈑は厚みが薄いため、屋根材の下に音を軽減する素材がなかったり、音がひびく空間があると、屋根下の部屋に音がひびきます。
ガルバリウム鋼鈑の屋根を施工する時には、音を軽減させるためにプラスターボードを下張りしたり、吸音させる断熱材を入れて、音への配慮を行うようにします。
デメリット3:価格が高い
住宅の屋根材としてよく使われている陶器瓦、ガルバリウム鋼鈑、スレート屋根の価格を比較すると、陶器瓦のコストが一番高く、スレート屋根が一番リーズナブルです。
ガルバリウム鋼鈑の屋根は、陶器瓦より安いがスレート屋根より割高な屋根材です。
ガルバリウム鋼鈑の屋根は複雑な形状になると割高になります。すっきりとしたシンプルな屋根形状にすると、リーズナブルに施工することができます。
ガルバリウム鋼鈑の種類をまとめてみました
ガルバリウム鋼鈑の屋根の種類は、屋根の形と葺き方により変わります。
種類と主なメーカーをまとめました。
屋根の形状
屋根の形状には、
- 切妻
- 片流れ
- 段違い屋根
- 寄棟
- 入母屋
などの種類があります。
ガルバリウム鋼鈑の屋根は、切妻・片流れ・段違い屋根でよく使われています。
寄棟や入母屋の屋根は、屋根の形状が複雑で、施工の難易度が高く、割高になるため多くは使われていません。
① 切妻屋根
切妻屋根は屋根の一番上の部分(棟)から両側に流れをつけた屋根で、構造が単純なため、丈夫で、雨漏りも少なく、部材の種類が少ないため、リーズナブルにできる屋根の形状です。
出典:元旦ビューティ工業HP
② 片流れ屋根と段違い屋根
片流れ屋根は、屋根の一番上の部分(棟)から一方だけに流れをつけた屋根です。
大屋根になるため、太陽光発電の普及と共に増加している屋根形状です。構造が単純なため、丈夫で、雨漏りも少なく、部材の種類が少ないため、リーズナブルにできる屋根の形状です。
しかし、屋根が大屋根となるため、屋根を流れる樋に入る雨量が多くなるので注意が必要です。
段違い屋根は、片流れ屋根を2つ、高さをかえて合わせた形状の屋根です。
出典:元旦ビューティ工業HP
③ 寄棟
屋根の一番上の部分(棟)から4方向に勾配を持った屋根で、妻側の部分は三角形の屋根、平側の部分は台形の屋根となります。雨が4方向に流れるため、雨の流れが良く、雨漏りの心配が少ない屋根形状です。しかし、寄棟の屋根を複数組み合わせると、複雑な形状になるため注意が必要です。
出典:元旦ビューティ工業HP
④ 入母屋
屋根の上の部分が切妻、下の部分が寄棟になっている形状の屋根です。寺社建築や茅葺屋根によくみられます。地域によっては入母屋屋根が多く使われている場合もあります。
出典:元旦ビューティ工業HP
ガルバリウム鋼鈑屋根の葺き方
ガルバリウム鋼鈑の屋根の葺き方には、
- タテ葺き
- ヨコ葺き
があります。
屋根の葺き方の種類をまとめました。
① ヨコ葺き
ヨコ葺きは、ガルバリウム鋼鈑を横長に張っていく葺き方です。
ヨコ葺きのガルバリウム鋼鈑屋根は、メーカーによって商品名が違い、「横葺き」・「平葺き」・「一文字葺き」・「段葺き」などがあります。
■横葺き
ヨコ葺きの特徴は、色々な形状・デザインの製品が豊富にあり、和風建築にも使いやすいことと、複雑な屋根形状でも施工しやすいこと、断熱材付きの製品があることです。
② タテ葺き
タテ葺きは、ガルバリウム鋼鈑を縦長に張っていく葺き方です。
タテ葺きには、心木を使って葺く「瓦棒葺き」と心木のない「ハゼ葺き」があります。メーカーによっては心木のない葺き方を「立平(たてひら)」というメーカーもあります。
最近では、コストが安いこともあり。「ハゼ葺き(立平)」が多くなっています。
■ハゼ葺き(立平)
タテ葺きの特徴は、ヨコ葺きより費用が安いこと、工事期間が短いこと、緩い勾配の屋根にも使えること、雨漏りがしにくいことです。
主なメーカーは?
メーカーにより商品の特徴や耐用年数・保証期間・内容が違います。屋根メーカーは主要なところだけでも10社以上あります。
主なメーカーをまとめました。
① アイジー工業株式会社
金属屋根のトップメーカーです。断熱材入りの屋根材で、「丈夫で長持ち、快適さを生む断熱・遮熱、軽量で安心」が特徴です。
HP:https://www.igkogyo.co.jp/syohin/roof/point.html
② JFE鋼鈑株式会社
鋼板メーカーとして幅広い商品を取り扱っているメーカーです。
住宅用の屋根製品の種類が多く、「地震に強く、自由にデザイン、施工がしやすい」が特徴です。
HP:http://www.jfe-kouhan.co.jp/products/metal_roof/index.html
③ ニチハ株式会社
外壁材や屋根材の総合メーカーです。金属製屋根材の種類は多くありませんが、高耐久、長期保証が特徴です。
HP: https://www.nichiha.co.jp/loof/centerloof/lineup.html
④ 株式会社セキノ鋼鈑
ヨコ葺き・タテ葺きとも豊富な商品バリエーションを持つメーカーです。瓦形状の金属屋根や太陽光発電システム・屋根緑化システムなどの商品を持っています。
HP:http://www.sekino.co.jp/product/
⑤ 元旦ビューティ工業株式会社
屋根材専門メーカーで商品の種類が豊富。住宅用の屋根も樋内臓タイプ・改修用などがあります。
HP:https://www.gantan.co.jp/products/
4つの注意点
ガルバリウム鋼鈑の屋根を使用する場合には、
- 勾配
- 音対策
- 断熱対策
- 不燃性能
に注意が必要です。
それぞれの注意点をまとめました。
屋根の勾配
ガルバリウム鋼鈑の屋根の勾配は、メーカーや屋根の形状により最低勾配が決まっています。
ヨコ葺きの場合の最低勾配は2.5寸で、地域(多雨・多雪地域)や瑕疵担保保険の保険会社の施工規定により最低勾配3.0寸以上の場合もあるので、確認が必要です。
タテ葺きの場合の勾配は、製品によっては0.1寸から可能です。しかし、屋根のサイズが大きい場合や多雨・多雪地域では、屋根下のルーフィングに指定がある場合があるので、確認が必要です。
音対策
ガルバリウム鋼鈑の屋根では、「雨の音がひびいて、テレビの音が聞こえない、眠れない」と音がトラブルになることがあります。
これは、ガルバリウム鋼鈑にあたる雨音を吸収するための工事がされていない、音が増幅されるような「タイコ構造」となっている部分があると起こるトラブルです。
特に屋根に沿った勾配天井や小さな下屋の場合注意が必要です。
音を吸収する下地材(プラスターボードなど)や断熱材(グラスウールなど)を屋根下に正しく施工することで防ぐことができます。
断熱性能
ガルバリウム鋼鈑の屋根素材には断熱性能がないため、採用する場合には屋根下の断熱や小屋裏の断熱・換気工事が必要です。
ガルバリウム鋼鈑の屋根の小屋裏は、夏とても暑くなります。
屋根下に断熱材を施工するか、天井断熱とした場合は小屋裏換気を適切に施工し、暑さを和らげるようにします。
不燃性能
屋根は、建築基準法で「不燃材料で葺かなければならない」とされています。
建築基準法の不燃材料の規定は、20分間「燃焼しない」、「防火上有害な変形、溶解、き裂等の損傷を生じないこと」、「避難上有害な煙又はガスを発生しないこと」とされています。
認定されている製品(建築基準法告示)には、金属板や厚さ12mm以上の石膏ボードなどがありますが、メーカーでは建築基準法の不燃認定を取っているところもありますので、確認すると安心です。
まとめ
ガルバリウム鋼鈑の屋根は、耐震性能や耐久性・デザイン性の良さから、人気のある屋根材です。
しかし、決してリーズナブルなものではなく、屋根形状が複雑な場合は割高にもなります。また、断熱性能や音対策にも配慮が必要で、別途費用がかかります。
ガルバリウム鋼鈑の屋根を採用する時には、シンプルな屋根形状とし、断熱や音に対する対策を確認し、費用もみておくと安心です。耐久性の良いガルバリウム鋼鈑の屋根は、完成してからのメンテナンス費用がかからないためその点は安心です。