自分の住まいについて検討し始めると、工事別の金額は幾らぐらいかかるのか知りたい方が出てきます。
また、基礎工事の費用だけでなく、初めての家づくりをする多くの方が気になる「ウチの基礎の品質は大丈夫なの?」という品質面の話も交えながら、紹介したいと思います。
ここでは、品質を左右する基礎工事の費用相場の仕組み、を開設します。
まず最初に、基礎工事の費用の話をしますが、その後は、少し専門的な話もありますので、おおよその相場感が掴めたら、詳しく知りたい方のみ、読み進めてみてくださいね。
この記事の目次
基礎工事の費用相場は建物本体価格の約9%
費用相場の把握には見積りの構成比を参考にするのが早い!
一見難しく感じる基礎工事の費用ですが、まずは住宅の詳細見積書の構成比を参考にしてみてください。
住宅の詳細見積書は、住宅建築工事の積算資料のこと。住宅ローンの審査で金融機関に提出する見積書とは少し違い、工種ごとに積算する見積書になります。
財団法人経済調査会の「積算資料」を見ると、基礎工事にあたる「仮設工事」と「基礎工事」の構成比の合計が8.45%と示されています。
もちろん、この構成比は現場ごとに変わりますが、住宅の基礎は現場や業者によって基本仕様が大きく異なるものではありません。
そのため、 2,000万円が建物本体価格だとすれば、概ね9%前後が基礎工事の費用相場ということです。
ザックリと金額で示すと約180万円です。
ただし注意として挙げたい点は、
- ここ数年の間で、住宅の基礎の仕様がベタ基礎に移行している
- 地盤工事を基礎工事として含めるか?
などがあります。
しかし基礎の仕様がベタ基礎に変わっても、金額はそれほど変わるものではありません(これについては後で説明します)。
また地盤工事を基礎工事として含める場合は、地盤工事の金額を除外すれば良いだけです。
よって、概ね9%前後が基礎工事の費用ということは、まず頭に入れておきましょう。
知っておくと何かと便利です。
実はこのほかにも、意外なことで基礎工事の金額は変わります。
基礎工事の費用はこんなことでも変わることがある!
基礎工事の費用相場は本体工事価格の概ね9%前後ということでしたが、もちろん現場によって変わっていきますし、現在ではむしろ上昇しています。
ここではいくつか例をあげてみます。
職人不足による労務費の高騰
特に東日本大震災以降は、職人不足による労務費の高騰が著しく、その影響は住宅建築の基礎の現場にも出ています。
費用相場は本来なら8%でも良いのですが、構成比の説明で、9%前後という言い方を選んでいるのはこのためだったりします。
基礎断熱により工程数が増すことも
基礎空間は住宅の外部に当たりますので、普通は断熱しません。
ただ住宅の高性能化が進むなか、外張り断熱や一部の充填断熱工法でも基礎断熱工法が選ばれることで、基礎の工程数が増しています。
1階2階の面積比率
住宅の間取りに平屋を選択するケースが増えています。
しかし平屋と総2階建ての家を比べればわかりますが、同じ床面積なら平屋のほうが基礎面積は大きくなります。
つまり、1階2階の面積比率でも工事の構成比も高くなります。
ベタ基礎が標準仕様の時代に変わった?
従来の木造住宅の基礎は布基礎が一般的でしたが、2000年に建築基準法が改正され、長期許容力度が20kN/m2(ニュートンと言います)以上、30kN/m2未満の軟弱な地盤では、ベタ基礎あるいは杭基礎を用いるように定められました。
(もちろん、杭基礎の基礎部分は布基礎でも構いません。また長期許容力度が30kN/m2以上の地盤なら、これらにあわせて布基礎も使用できます)
実はコストパフォーマンス性に富む「ベタ基礎」
この法改正で多くの工務店ではベタ基礎が使われ、今では半数以上の住宅業者でベタ基礎を標準採用しています。
ベタ基礎には接地面積が布基礎よりも広く取れるなどの利点がありますが、その反面、コストがかかるとの認識があります。
しかし、現在の法改正で使われているベタ基礎は、それほどコストがかかりません。
従ってベタ基礎は布基礎に比べ、コストパフォーマンス性が高いといえます。
「ベタ基礎」が「布基礎」に比べ、コストパフォーマンスが高い理由
ベタ基礎がコストパフォーマンスが高い理由をあげておきます。
(少し専門的な用語解説となりますので、さらっと飛ばしていただいても大丈夫です。)
ベタ基礎の耐圧盤はシングル配筋で良い
以前のベタ基礎の耐圧盤(基礎スラブ部分)は、曲げに強いダブル配筋とするのが一般的でした。
俗にベタ基礎がコスト高だと言われるのはこのためです。
しかし2000年の法改正での仕様は、ダブル配筋と特に指定していません。
そのため現在のベタ基礎はほとんどがシングル配筋で、布基礎とコストが大きく変わりません。
基礎の根切りと埋め戻しの関係
それでもベタ基礎は布基礎と比べると、材料(コンクリートや鉄筋)のコストは確かに高くなります。
しかし手間を考えると、ベタ基礎は布基礎との関係は逆転する場合があります。
例えば、ベタ基礎は残土を埋め戻すのに、建物の外周部を埋め戻すだけです。
しかし布基礎は、筋状に立ち上がり部分を根堀しますので、残土を戻す際は再度筋状に埋め戻します。
どちらの方が、手間が掛かるか、自ずとわかるでしょう。
割栗(砕石)地業の施工面積は布基礎の方がやや広い
布基礎の基礎形状は、ベース部分(フーチング)が外側に突き出ています。
そのため、地業の面積は布基礎の方がベタ基礎に比べて少し広くなります。
ベタ基礎はポンプ車の配車が2回で済む
現在の布基礎は、防湿コンクリートを打設するのが常識です。
そのため布基礎では、ポンプ車の配車が3回必要です。
いっぽうのベタ基礎は、耐圧盤と立ち上がりの2回で済みます。
当然ながら、配車回数が2回で済むベタ基礎のほうがコストはかかりません。
ベタ基礎にも注意点がある
ベタ基礎は布基礎に比べ、コストパフォーマンス性が良いということは分かりました。
だからといって、ベタ基礎が万能とは安易に考えないほうがいいでしょう。
たとえば大手ハウスメーカーでは、現在でも基本仕様は布基礎で施工しているところがたくさんあります。
この理由のひとつとして、シングル配筋のベタ基礎では、同じ4号建築物(※)でも構造計算が通らないからなどの理由が推測できます。
※4号建築物:木造2階建てで延べ面積が500m2以下のもの。4号建物とも言う。4号建築物には、建築確認申請時に4号特例(構造計算の不要)が認められている。
同じベタ基礎でも地盤の特性を考慮し、場合によってはダブル背筋を検討できるくらいの柔軟な対応が求められるのではないでしょうか。
季節や天候にも影響を受けるコンクリートの「呼び強度」とは
基礎を形成するにはコンクリートを使いますが、コンクリートには「呼び強度」というものがあります。
コンクリートの「呼び強度」とは
コンクリートの「呼び強度」とは、基礎業者が図面に記載している設計強度に温度補正を考慮し、工場に発注する際のコンクリート強度のことです。
「呼び強度」は季節や天候にも影響を受けます。
この設計基準強度とは、住宅会社が設定したコンクリートの圧縮強度で、そのコンクリートがどれだけの力(重さ)に耐えられるかを示します。
たとえば設計基準強度が18N(ニュートン)/mm2ならば、1cm2当たり約180kgの重さに耐えられる強度があるということです。
このとき図面上の設計基準強度が18N/mm2以上と決めてあれば、これに温度補正値を足して発注に使うのが「呼び強度」です。
その結果「呼び強度」は、
- 春秋は24N/mm2
- 冬季は27~30N/mm2
などのように、季節や発注する日の天候によっても違う値になります。
「呼び強度」の維持とコストの関係
特に冬期(または寒冷地)の基礎工事は設計強度を維持するため、コンクリート代が高くなる場合があります。
そのため厳密に言えば、「呼び強度」によっても基礎工事のコストは変わってきます。
コンクリートに「呼び強度」があるということは、知らない方もいたことでしょう。
「呼び強度」も建築コストと密接な関係があるのです。
基礎の寿命を左右する鉄筋の「かぶり厚」とは
基礎コンクリートの寿命を左右するといわれるのが鉄筋の「かぶり厚」です。
一見コストとは無関係とも思える鉄筋の「かぶり厚」ですが、実は鉄筋の「かぶり厚」も基礎の費用とも密接に関係しています。
「かぶり厚」はどれぐらい確保できれば良い?
なぜ鉄筋を覆うコンクリートの厚さが基礎の寿命に関係あるのでしょう。
それはコンクリートが鉄筋のサビを防いでいるからです。
元々コンクリートはアルカリ性ですが、表面から少しずつ中性化が始ります。
そして中性化が進んだコンクリートは亀裂を起こし、亀裂のすき間から雨水が染み込むことで、内部の鋼材が酸化してしまいます。
こうして鉄筋の錆が徐々に始まります。
鉄筋が錆だすと、鉄筋の膨張で表面のコンクリートが断面欠損します。
そしてコンクリートが崩れ出し、やがて鉄筋コンクリートは寿命を迎えます。
鉄筋の「かぶり厚」はどのくらい確保されていれば良い?
日本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針」によれば、基礎の立ち上がり部分は40mm以上、耐圧盤は60mm以上確保することが望ましいとしています。
適切な「かぶり厚」を確保するには、現場ごとに配筋検査が必要です。
これはどうしても検査を徹底したいところです。
立ち上がり幅が150ミリになったのは「かぶり厚」確保のため
実は基礎の立ち上がり幅が150mmになったことと、「かぶり厚」の適切な確保に関係しています。
と言うのも、基礎の立ち上がり幅が従来の120mmだと、よほど施工精度が良くなければ、日本建築学会が定めた「かぶり厚」は守れないからです。
鉄筋の「かぶり厚」が騒がれたことで、基礎の仕様の立ち上がり幅が150mmなのが徐々に当たり前になってきています。
冬季間と基礎工事と工事期間について
最後に冬季間と基礎工事と工事期間について簡単に触れておきます。
基礎工事の標準的な期間は4〜5週間
基礎の場合は天候条件にも左右されますが、戸建住宅の基礎工事の標準的な期間は、仮設工事を含めて大体4〜5週間です。
ただしこの期間が短いからといって、手抜き工事をしていると考えるのは早計です。
なぜなら工事業者には、いつまでに現場を納めなければならない事情があるからです。
4〜5週間というのは、あくまでも標準的な目安として押えておきましょう。
冬季間や寒冷地の基礎工事では特殊なセメントやヒーター等の準備もある
ただ注意して欲しいのは、基礎工事が冬の期間と重なる場合です。
冬場の基礎工事は前述の「呼び強度」も絡んできますし、凍結抵抗のある混和材の使用するケースもあります。
また、それによって養生期間を長く取ったり、逆に通常より短い期間で済むケースもあります。
そのため、いつもより現場監督とコミュニケーションを密にして、お互いに誤解が生じないように努めることが大切です。
また北海道の現場では、現場をシートなどで覆う「冬囲い(または仮囲い)」が定着しており、シートの中でヒーターを使って工事を進めるのが一般的です。
もちろんこうなると、冬場の基礎工事は通常より金額は高くなりますし、期間も変わってきます。
北海道地区に限られた特殊なケースですが、知識として覚えておきましょう。
基礎工事の費用相場のまとめ
かなり踏み込んだ情報で、専門的な話が多くなりましたが、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- 基礎工事の費用相場は建物価格の約9%
- ベタ基礎はコストパフォーマンス性は高いが、いくつかの注意点もある
- コンクリートの「呼び強度」と鉄筋の「かぶり厚」の基礎知識を得よう
- 基礎工事の期間は4〜5週間。冬工事における基礎工事は注意点もある
基礎工事は大前提としてこれらコストに絡む要素があり、それによって住宅の基礎の費用は決まります。
住宅の基礎の品質は、仕様と工事の進め方で決まるといっても過言ではありません。