「増築をしよう」と相談したら、「確認申請が必要」「その増築は難しいですね」などといわれる場合が多々あります。
では、どんな場合なら増築できるのか、増築を考えはじめたら気になる疑問点を解説します。
この記事の目次
増築のできない場合、増築できる場合
増築とは、建物の床面積を増やす建築をいいます。
既存の建物に1部屋増やす場合の他、同じ敷地内に別棟にて建物を建てる場合も増築に該当します。
増築しようと思っても、建築基準法の制限を受けるために増築できない場合もあります。
また、これまで増築は困難といわれていた条件の中には、既存建築物の救済と有効活用のために規制が緩和され、所定の手続きを行うことで増築ができる様になったものがあります。
増築ができないケース
(1) 増築によって建ぺい率・容積率がオーバーしてしまう建物
増築する場合は、新しく建てる部分はもちろんのこと、既存部分の建物も建築基準法に適合している必要があります。増築によって建ぺい率・容積率をオーバーしてしまう場合は、違法となるため増築はできません。増築によって高さ制限に抵触する場合にも同様です。
(2) 違法建築物
新築当初から違法であった建築物はもちろんのこと、新築時は建築基準法に適合していたものの、ロフトや車庫の改築で違法に増床していたり、接道条件を満たしていない等といった違法建築物も、原則として増築はできません。ただし、違法部分の是正工事を行い、建築基準法に適合している旨を示す手続きを踏むことで、可能な場合があります。
(3)3階建への増築
2階の建物を3階にする増築も、基礎などの構造上の問題でできないと考えていた方がよいでしょう。
増築できる場合はこんなとき
・建築基準法に適法している建物(検査済証有)
原則として、既存部分も含めて建築基準法に適合し構造上の問題がなければ、増築することは可能です。
手続きに際しては、適合していることを示す検査済証が必要です。
検査済証とは、新築時に確認申請によって許可された建物の完了時の検査に合格したことを示す文書です。ただし、既存建物の活用促進を目的に、下記のケースでも増築ができる場合があります。
・検査済証がない建築物
以前は検査済証を取得しない建築が非常に多くあり、1998年度の国土交通省の資料では、検査済証の取得率は実に38%でした。
これまでは増築時には検査済証がなければ確認申請が受けられませんでしたが、既存建物の調査の結果、法に適合していることが証明できれば増築ができる様になっています。
ただし、調査の結果、違法建築物であった場合は、違法部分を是正する工事が必要です。実際には構造や状況によって難しい場合が多々ありますが、木造住宅の場合は、増築できるケースもあるため、まずは調査をしてみましょう。
・既存不適格建築物
既存不適格建築物とは、新築時には建築基準法に適合していたものの、その後改正等によって現在の建築基準法には適合していない建築物をいいます。
現在の法規には適合していないものの、当初から法に適合していない違法建築物とは大きく異なります。
既存不不適格建築物も、沢山存在しますが既存建築物の活用促進を目的に、基準が緩和をされています。こちらも難しいケースが多いのは確かですが、所定の手続きを経て増築できる場合もありますので、まずは調査をしてみましょう。
増築の確認申請とは?
新しく家を建てる時には、「確認申請」といい建築基準法をはじめてした法律に準じたつくりになっている旨を申請する手続きが必要となります。
増築においても一定要件を満たす場合で、同様に確認申請が必要となります。では、どのような増築で、確認申請が必要なのでしょうか。
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確認申請が必要な場合
- 増築部分の床面積が10㎡以上ある
- 防火地域・準防火地域である
上記にあてはまる増築の場合には、確認申請が必要となります。
増築部分の床面積が10㎡未満で防火地域・準防火地域以外で増築を行う場合は、確認申請は必要ありません。しかし、確認申請が不要であっても、建築基準法に適合する必要がある点では変わりはありませんので、注意しましょう。
増築の確認申請は自分でもできるのか?
100㎡未満の木造建築物の設計・監理には資格は必要ありません。
確認申請も必要書類さえ整えることができれば、建築士等の資格を有しなくても提出することは可能です。増築の確認申請には、各種図面や構造計算書の提出が必要となります。
かつては大工さんが行うこともありましたが、耐震偽造事件等を受け規制が厳しくなった影響もあり、必要書類の作成は、より専門的な知識なくては難しくなりました。現在は建築士に依頼するのが一般的です。
増築の確認申請にかかる費用の相場とは
確認申請は行政の窓口の他、民間の審査機関で行っています。行政の地域や依頼先、建物の広さや階数によって、申請費用は異なります。
たとえば、東京都では、床面積の合計が30㎡以下場合、確認申請に5600円、完了検査11,000円となっています。
※ このほかに、申請に必要な図面や構造計算書を作成する申請手続費用として15万~25万円程度、工事の見積項目の中に含まれている場合があります。依頼先によっても異なりますので確認してみましょう。
※完了検査は、中間検査を必要としない規模・用途の建物の金額。2019年8月時点。
増築の確認申請をしなかったら、どうなる?
確認申請の手続きをせずに建築した場合は、罰則があります。
建築主と設計者などは、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。作為的であったり、延焼の恐れがあるなどの危険を伴う場合には、取り壊しとなるケースもありますので、建築士等に相談の上、適切な確認申請手続きを行って増築しましょう。
ケース別増築する費用の相場は?
増築費用の目安
新築であっても依頼先やグレード感によっても坪単価には幅があるものですが、増築では、木造住宅の場合で坪70万円程度、木造の二階部分増築の場合で坪120万円程度が一つの目安です。
建て増しした部分に基礎に外壁、屋根等が必要となる場合も多いため、新築の坪単価に対してやや高めとなることを覚えておきましょう。
増築の広さ、工事内容別の費用の目安
広さに加えて、既にある居室を広げる場合には、既存のお部屋の内装工事が必要となります。
また水回りを含む工事、二階部分へ建て増しする場合には、費用は高めになります。
一方で、外壁の必要のないベランダやバルコニー、カーポート、外階段などの増築、敷地が広く工事がしやすい、増築部分が1階である工事では、一般に相場よりも費用が抑えられる傾向があります。
内容 | 費用 |
既存のリビングルームを三畳広げる増築 | 200~250万円前後 |
六畳の洋室の増築 | 200~250万円程度 |
十畳の和室の増 | 350~400万円程度 |
四畳寝室の増築(二階部分) | 230万円~280万円程度 |
トイレの増築 | 100~120万円程度 |
バルコニーやベランダの増築 | 30~50万円程度 |
まとめ
増築を行うことで、既存の建物を取り壊すことなく、新しいライフスタイルに合わせた住まいを実現することができます。
しかし実際には、新築時の手続き状況や書類の補完の有無、違法箇所の有無、既存部分の状態等により、増築が困難なケースも少なくありません。
それでも、一棟建替えるよりもはるかにコストに抑え、まだ使える建築物を有効活用できる魅力的な手法です。建替えを考える前に、一考したい選択肢の一つです。
一方で、リフォーム会社等依頼先の中には、確認申請や構造に関わる工事を得意としない業者もあります。難しいケースが多いのは確かですが、業者の「難しい」という一言で簡単にあきらめてしまうのは早計といえます。
「構造上の可否」
「法的制限からの可否」
「費用はどれくらいかかるか」
をそれぞれを慎重に検討し、実現の可能性を探ること道が開ける場合もあります。
検討に際しては、増築工事の実績のある複数の依頼先と相談し、アドバイスを比較しながら判断するとよいでしょう。