一軒家に地下室があったら、音楽室やシアタールーム、ダンスルーム、ワインセラーなどの趣味を楽しむ部屋ができたり、地下室を寝室などの居室として利用すれば、家全体を広々とした家にすることができますよね。
地下室を作ることで、楽しく、過ごしやすい家になるため、実際に地下室付き一軒家は人気があります。
では、地下室を作る時の費用相場や工期はどのぐらいかかるのでしょうか?地下室の特徴・注意点を知って、快適な地下室を作りましょう。
この記事の目次
地下室を作る費用相場は?
地下室を作る費用は、
- 地下室を作る前にかかる設計等の費用
- 工事費用
が必要になります。それぞれの費用相場をみていきましょう。
設計等の費用相場
地下室の設計では、設計前に行う地盤調査やプラン設計、構造設計の費用がかかります。
・費用相場
内容 | 費用相場 | 備考 |
地盤・地質を調査する費用 | 25~30万円 | ボーリング調査などを行う費用 調査面積や追加調査の有無などで費用が変わります |
プラン設計費用 | 30万円~ | 面積により費用が変わります。増築の場合は、増築部分だけでなく既存部分の調査費用もかかります |
構造設計費用 | 20万円~ | 面積や地下室上部の建物の構造により費用が変わります |
※敷地や地下室の広さや道路の状況により費用が変わります。
地下室工事の費用相場
地下室を作るためには、地下室の周りの土を留め、地下室になる部分の土を掘り、処分する費用がかかります。
また、快適な地下室にするためには、防水やドライエリア、断熱、換気などの工事費用もかかります。
費用相場や坪単価
内容 | 費用相場 | 備考 |
土留め工事費用 (地下室周辺の土を留める工事) |
150~200万円 | 土質により工事の方法が変わります。工事方法と規模により、費用が変わります |
土を掘削し、処分する費用 | 150~200万円 | 掘削する広さと処分する土の量により費用が変わります |
地下室本体の工事費用 | 坪単価:80~120万円 | 断熱や防水の工事費用も含みます |
ドライエリア工事費用 | 100~150万円 |
※敷地や地下室の広さや道路の状況により費用が変わります
地下室の工事費用は、地下室上部の建物構造や地盤の状況により変わります。また、地下室を利用する方法により、防音や吸音、調湿、換気などの追加費用がかかります。
工事費用は、調査、設計~躯体・内装・設備工事の費用までトータルに考え、把握するようにすると良いでしょう。
地下室の工事期間の目安
地下室を作るには、まず地盤調査を行い、調査報告を元に設計を行います。
地下室周囲の土留め工事、地下室になる部分の土の掘削から工事がはじまり、地下水位の確認を行い、状況によっては排水処理工事を行いながら、地下室の工事を進めます。
工事期間を
- 地盤調査
- 地下室のプラン設計及び構造設計の期間
- 建築確認申請・許可の期間
- 地下室の土の掘削
- 建築を行う期間
に分けて、目安をみてみましょう。
工事期間の目安
内容 | 工事期間(目安) | 備考 |
地盤調査・プラン設計・構造設計期間 | 2~3ヶ月 | プランが決定してから構造設計が終了するまで1~2ヶ月かかります |
建築確認申請・許可期間 | 1~2ヶ月 | 地下室の上部の建築物も含みます |
土留め、土の掘削~地下室の建築期間 | ヶ月半~2ヶ月半程度 |
※地下室の広さや工事内容、地盤や敷地、道路の状況により工事期間が変わります。
地下室作る前に知っておきたい:地下室の特徴
地下室は、『鉄筋コンクリート造』で作られています。そのため、耐震性能や防音性能などに優れています。また、地下室には、『容積率の緩和』という延べ床面積を増床できるメリットがあります。
地下室を作る前に知っておきたい7つのこと
地下室にはいろいろなメリットがありますが、決してリーズナブルではありません。
地下室を作る前に、地下室の特徴や注意したい点をよく理解して、一軒家を建てるかどうかよく検討しましょう。
①地下室は地震に強い
地下室の建物構造は鉄筋コンクリート造でできているため、地震の揺れに対してばねのようにはたらき、建物に対する地震の揺れを軽減する役割をします。
そのため、地下室付きの住宅は、耐震性能が高くなります。
②防音・防振性能が高い
鉄筋コンクリート造の地下室は、上部の住宅部分を支える基礎でもあるため、床や壁・天井の鉄筋コンクリートが厚くできています。
そのため、音が漏れにくく、振動しにくいというメリットがあります。
地下室を音楽室やシアタールーム、ダンスルームとして利用するのは、家の中(1階、2階)や外に音や振動が漏れにくいため、趣味を安心して楽しめるからです。
また、地下室は騒音によるご近所トラブルの心配がないため、プレイルームやパーティルームとして利用できると人気があります。夜遅くまでのパーティや雨の日に子どもがおもいきり遊ぶことができる部屋として利用できます。
③安定した温熱環境
地下室は、地中に埋まっていることや鉄筋コンクリートという構造から、外部の気温の影響を受けにくいというメリットがあります。
夏は外気の日最高気温より3~10度ほど低く、冬は7~10度程高くなり、夏は涼しく、冬は暖かい、一年を通して安定した温熱環境となっています。
安定した温熱環境の地下室は、食品の貯蔵に適しています。
ワイン貯蔵庫として、保存食(発酵食品や梅酒など)の貯蔵場所として利用に向いています。
④建築基準法:容積率緩和で床面積UP
地下室には、建築基準法の容積率緩和があり、延べ床面積を増床することができるメリットがあります。
容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の上限を定めたものです。
敷地面積30坪、容積率150%の場合、延べ床面積の上限は45坪です。
地下室の容積率の緩和は、延べ床面積の1/3の面積が受けられます。延べ床面積30坪ならば、15坪の緩和が受けられます。
【容積率緩和を受けられる延べ床面積の例】
- 敷地面積30坪 容積率150%=延べ床面積45坪まで
- 1階床面積 20坪 2階床面積15坪 地下床面積 15坪
- 延べ床面積 50坪
- 地下室15坪分が容積率計算の対象となる床面積から除かれることとなります。
延べ床面積の1/3 45坪☓1/3=15坪
容積率150%:延べ床面積上限45坪>50坪-15坪=35坪
容積率の緩和は、特に狭小敷地に家を建てる時にメリットがあります。
狭小敷地に家を建てる時には、容積率制限で限られた床面積までしか床面積を確保することができません。
しかし、 地下室を作ることにより、容積率の緩和を受けられるため、限られた広さの土地でも居住スペースを確保することができ、ゆとりある家にすることが可能になります。
建築基準法上、地下室として認められるにはいくつかの条件があります。
条件 | 内容 |
地階であること | <地階である条件>
・地下室の床の高さが地盤面より下にあること ・地下室の床~地盤面の高さが、地下室の天井高さの1/3以上であること |
天井高さの規定 | 地盤面から地階の天井が1m以下である |
用途は住宅であること | <住宅の用途>
・住宅の居室(リビング・寝室・洋室など)・トイレ・浴室・物置 ・住宅として認めらない用途:車庫・事務所・店舗 |
注意点の話
地下室には、プラン・見積もりを行う前に知っておきたい注意点があります。
使用用途や周囲の環境などにも考慮しながら理解して、快適な地下室を作りましょう。
⑤湿気対策と換気
地下室には、「暗い」「湿度が高く、カビが発生しやすい」というデメリットがあります。
その対策として、ドライエリアを設けたり、換気設備を設置する対策を行います。
・ドライエリアって何?
ドライエリアは、地下室の外壁に沿って作られる「からぼり」のことで、窓をもうけます。この窓から光がはいり、風通しを良くすることができるわけです。
また、外への目線を確保でき、閉塞感が緩和され、地下室でも開放感がある部屋をつくることができます。また、緊急避難経路としての役割もあります。
しかし、地下室にもうける「ドライエリア」や「換気扇」は、地下室内の湿気発生の原因にもなります。
窓や換気扇から湿度が高い外気が地下室内に流入することで、地下室内の冷たい空気に湿度の高い外気がふれ、水滴が発生しやすくなります。この水滴がカビの発生の原因となるケースがあります。
地下室内の湿気防止のために、以下の対策を行っておきましょう。
- 湿度の高い外気を地下室内に入れないこと
- 地下室内の湿度を低くするために、換気をする時にはエアコンなどを使用し除湿する
- 地下室の窓で通風する場合は、通風の出口を確保すること(二ヶ所以上の窓で通風)
- 常に除湿器を使用して、一定の湿度を保つ
- ドライエリアの雨水排水対策も考えておく
⑥構造上、増築をするのは条件が厳しい
地下室の構造は、鉄筋コンクリート造です。
地上の建物の基礎も兼ねているため、既存の住宅の下に地下室を増築するのは、とても条件が厳しいものになります。
地下室の施工は、地面を地下室より広い範囲を掘削します。
既に一軒家が建っている場合は、広い敷地や一軒家の十分な構造強度が必要となり、工事費用も高額です。
一部の住宅会社やリフォーム会社では、既存住宅の補強をしながら施工を行うことで一軒家の下に地下室を作る工法を導入していますが、地盤の強度や住宅の構造などの制限が厳しくなっています。
広い敷地の場合は、一軒家が建っていない庭や駐車場に地下室を作るケースもあります。
⑦固定資産税は高くなる
地下室の固定資産税は、住宅の固定資産税のなかでも高額となっています。
住宅の固定資産税は、構造の種類により金額が変わり、
木造 < 鉄骨造 < 鉄筋コンクリート造
の順番で高くなっています。
税金額差の目安は、木造1に対して、鉄骨造約1.28倍、鉄筋コンクリート造約1.58倍です。
地下室は鉄筋コンクリート造なので木造の1.5倍以上の固定資産税がかかる計算となります。
「地下室付き住宅、容積率緩和」は、建築基準法に基づく法令で、一軒家全体の設計プランに適用されるものです。
固定資産税の地下室面積に容積率緩和はありません。実際の床面積が算定面積になります。
地下室つき一軒家の固定資産税は高額になる傾向がありますので、注意しましょうね。
まとめ
地下室を作るのはメリット、デメリットいずれもありますが、それらをきちんと踏まえたうえで、検討することをオススメします。