木造の住宅に住みたいけれど、築何年まで住めるのか?
家の寿命や、リフォーム、建て替えの費用の事を考えると、中古住宅が良いのか、新築の方が良いのか悩んでしまいます。
日本の木造住宅の寿命は、築30年と言われてきましたが、今はきちんとした計画とメンテナンス次第で寿命を伸ばすことができます。
家の30年後を見据えて、正しい情報を得ながら家の計画をたてましょう。
この記事の目次
①木造住宅の耐用年数
建物には、耐用年数というものがあります。
これは、固定資産の使用可能年数のことであり、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で決められた法定耐用年数のことです。
国税庁のサイトからも確認できます。
ー木造の耐用年数は22年
耐用年数は厳密にいうと、建物の構造体、防水、床、外装、窓の要素によって割り出されています。
- 軽量鉄骨プレハブ造(厚さ3mm以下)の場合は19年。
- 木造の場合は22年。
- 軽量鉄骨プレハブ造(厚さ3~4mm)の場合は27年。
- 重量鉄骨造(厚さ4mm以上)の場合は34年。
- 鉄筋コンクリート造の場合は47年。
これは、アパートや住宅という違いや、規模によって変わるものではありません。
ー耐用年数は何に使われるのか
木造の耐用年数は減価償却の計算や、融資期間の計算、木造住宅の寿命の計算に使われます。
建築の現場でも耐用年数という言葉が使用されます。これを物理的耐用年数とも言います。
②木造住宅の寿命を伸ばす方法
ー湿気(水)から家を守る
家の大敵は湿気です。床下や、壁の中、屋根裏にはびこる湿気が、知らないうちに柱や梁を朽ちさせます。
そんな大敵から家を守ることが、家の寿命を伸ばす重要なポイントです。
木は乾燥させるほど、強くなります。つまり、家にはびこる湿気から家を守ることで、家は強さを増していくのです。
まずは、どんな湿気が存在するのか知り、対策をとりましょう。
1)屋外から侵入する雨水
言うまでもなく、雨漏りは厄介です。
構造部材に水がかかり続けると腐食してしまうので、まずは雨漏りを確実に防ぎましょう。
2)室内から侵入する水分
台所や、浴室、洗面所など生活水で室内から床下や壁内に水が入り込むことがあります。
特にタイル張りの目地等が劣化していくと危険です。
3)地面から上昇してくる湿気
今はべた基礎が多いのできちんと湿気対策されていますが、布基礎の場合、地表が露出されていると湿気があがってくるので対策をしましょう。
4)生活環境から発生する湿気
普段の生活の中でも水蒸気は発生しています。
布団に残った水分や、洗濯物からも発生します。
微々たるものですが、きちんと窓を開けて日頃から換気を行うことが家を長持ちさせるポイントです。
5)床下の換気口から侵入する湿気
基礎断熱方法ではない場合、床下には換気口が設けられています。
床下に風を通し湿気を外へ排出するためのものですが、逆に湿気が侵入してくることも考えられます。
今は、床下換気扇などもあるので、場合によっては検討するのも良いでしょう。
6)温度差によって発生する結露
よく冬場に目にする窓の結露、実は壁の中や床下でも発生します。
壁の中の結露は悪影響を及ぼすので結露が起こりにくいよう壁や屋根の中も通気が必須です。
ー適切な時期に行うメンテナンスとリフォーム
戸建ての寿命を伸ばすためには、適切な修繕計画も必要です。
メンテナンス箇所の一覧をあげてみましょう。
1)外部
外部は、足場も必要になる可能性もあり、費用がかさむ場所です。
屋根のメンテナンスを行う場合は、外壁も一緒に行うなど、計画的に行うと良いでしょう。
雨や紫外線により、劣化が室内より激しいので、きちんとメンテナンスを行ってください。
・屋根
素材にもよりますが、スレートは10年、20年頃に点検を行い、表面に塗装を行うことで長持ちします。
30年を目安に葺き替えを行うと、より家が長持ちします。
・外壁
最近のサイディングは性能がよく長持ちします。先にコーキング部分が紫外線によって劣化し始めます。
15年~20年のあいだに点検、コーキングのやり替えを行うことをお勧めします。
30年を目安に、壁の張替を行うと、より家が長持ちします。
・ベランダ、バルコニーの防水
10年に一度は点検を行ってください。
防水には保証書があります。その保証期限が終了する間際に点検を行うと、費用が少し抑えられるかもしれません。
2)内部
・壁紙
目安は10年ですが、美観的に問題がなければ、張替を行わなくても問題ありません。
・フローリング
ワックスフリータイプのフローリングも多いですが、数年に一度ワックスや、コーティングを行うと長持ちします。
下地が軋むような音がするというような不具合があれば、張替を検討してください。
・建具
取手や丁番がゆるむことがあります。
よく利用する箇所から不具合がでることがありますし、部品がなくなってからでは遅いので、その都度修理を行いましょう。
3)設備
・キッチン
10年から20年を目安に、加熱機器や食器洗浄機、換気扇が寿命を迎えます。
本体、扉、天板などは、グラグラするなど危険がなければ使い続けて問題ないでしょう。
・風呂
20~25年を目安に、取り替えましょう。
・洗面化粧台
15年~25年を目安に、本体の交換が必要です。
・トイレ
10年~15年で温水便座の交換、20年~30年を目安に便器の交換を行ってください。
・水栓、パッキン、配管
5年ごとに点検を行いましょう。
継ぎ目からの水漏れや、割れ、劣化といった不具合が考えられます。
10年~20年で、水栓器具本体は寿命を迎えます。
・給湯器
10年~15年で寿命を迎えますので、交換を行いましょう。
4)その他
・防蟻処理
保証期間が5年なので、5年以内に点検を行い、防蟻処理を行いましょう。
ーライフプランを考える
1)長く住める間取り
・内部の耐力壁を減らす(スケルトンインフィル)
将来、子供が増えたり、二世帯になったり家族構成が変わることも考えられます。
その時に、部屋の数を増やしたり、時には減らしたりできるように、耐力壁が内部にないほうがリフォームしやすくなります。
・バリアフリー
今では当たり前の条件ですが、バリアフリーにしておくことは必須です。
・トイレの広さやドア
将来、介護が必要になったり、車椅子でも利用できるよう広めの面積で引き戸にしておくと便利です。
2)メンテナンスしやすい工夫
・露出配管
エアコンや排水の配管を隠ぺい配管した方が、見た目はすっきり綺麗に仕上がりますが、将来的に交換や掃除をすることを考えると、露出配管することも効果的です。
・掃除口
排水管の清掃をするために、掃除口もしくはトラップを設けることが必要です。
・点検口
屋根裏やパイプスペース、床下など入ることができない場所には点検口をつけて、定期的に点検できるようにしましょう。
③リフォーム済の中古住宅
現在、国策としても中古住宅の活性化に力を入れており、今後ますます中古住宅の流通も増加してくると考えられます。
築30年、40年経過した中古住宅も、リフォーム済の状態で販売されている物件が多くみられますよね。
築何年の物件まで購入して良いのか悩むところですが、決まりはありません。
きちんとリフォームを行い、住み始めてからもメンテナンスを行うことで、法定耐用年数が伸びるわけではありませんが、家と長く付き合うことができます。
ー中古住宅で注意すること
買ってはいけない中古住宅があるわけではありませんが、購入する際は将来建て替えができるのか、リフォームが行いやすいのか、長い目で見て費用との良し悪しを考えましょう。
④建売住宅は何年住めるのか?
注文住宅だから寿命が長い、建売住宅だから長く住めないということはありません。
建売住宅でも後悔しないためには、建物の間取りや価格だけではなく、性能を確認しましょう。
今は、国の税制優遇もあり、長期優良住宅や認定低炭素住宅、次世代住宅ポイント制度など、どういう家なのか確認するわかりやすい制度がたくさんあります。
購入予定の建物が、どのような制度が使えるのか確認することで、より耐久性のある建物なのかどうか見分けることができます。
⑤家の建て替えについて
築30年、40年、50年の木造一戸建ては、リフォームすべきか、建て替えるべきか悩む時期だと思います。
建物に税務上の価値はなくても、住むことは可能なのでより悩みますよね。古い建物は耐震性も気になると思います。
例えば、築50年の木造住宅で一度もリフォームをしていない場合、全面リフォームが必要になってくると思いますが、費用もかなりかかってしまうと思います。
そうすると、建て替えも選択肢に入ってきますね。
少しずつでもメンテナンスとリフォームを繰り返していると、より長く住むことができます。
ー適切な時期は?
1981年6月1日に「新耐震基準」が設定されています。
それ以前に建てられた建物は基準をみたしていないため、2020年時点で築40年以上たっていて一度もリフォームを行っていない建物に関しては、タイミングを見て建て替えの検討も視野に入れると良いと思います。
まとめ
木造住宅の寿命は住み手の知識や心がけで大きく変わります。
何もせずに家がどんどん劣化していくと、30年で住めなくなってしまうことも本当にあるのです。
これから新築住宅を検討している方は、デザインだけでなく、長く住めるように耐久性についてもよく計画をたてることが重要です。
現在住んでいる家も、メンテナンス次第で長く住むことができるので、愛着をもって家と関わりあってくださいね。築50年、100年も夢ではありません。