防蟻処理という言葉をご存知でしょうか?
住宅の天敵であるシロアリの侵入を防ぐため、薬剤を土壌に散布したり木材に塗布したりする予防工事のことで、実際にシロアリが発生した後の駆除ではありません。
しかし、シロアリ駆除後に再発を防止するものは防蟻処理となります。
シロアリはあたたかく湿った場所をすみかとしており、特に柔らかい木材を好物としています。
では、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物が安全かといえば、決してそうではありません。木造住宅以外の建物でも合板や間仕切りなど木材を多く使っています。
目の見えないシロアリはエサとなる木材にたどり着くため、コンクリートや鉄筋すらもかじって侵入することもあるそうです。
発砲ウレタンなどの断熱材は保温性が高いため、内部結露を起こしてしまうとシロアリの絶好のすみかとなる可能性も。
そのような危険を防ぐためにも、木造だけでなくあらゆる建物で防蟻処理は必要となります。
この記事の目次
防蟻処理の費用は?保証期間5年?10年?
施工業者によって価格は変わってきますが、平均価格にすると坪単価で7,000円ぐらいとなります。
坪単価で5,000~10,000円としている業者が多いようです。
業者によって坪単価ではなく平米(㎡)単価で表示される場合もありますが、1坪=3.3㎡で計算して比較してください。
ここで必ず確認していただきたいのが保証期間と無料点検です。
昔の防蟻処理は10年保証など長期に渡り効果が持続していたのですが、使われていた防除薬剤がシックハウス症候群を誘発する原因とされて使用禁止となりました。
今のものは安全性が高く人間やペットに無害とされています。
人体や環境に優しいぶん、5年以上の保証ができないほど早く効果が薄れてしまうと考えたほうがいいでしょう。
だからこそ、万が一にも薬の効果が早く切れてしまってシロアリが発生した場合の保証が必要です。
保証期間は5年とされることが多いようですが、中には10年保証のハウスメーカーもありますので確認してみてください。
無料点検とは決まった年数ごとにシロアリが発生していないか施工業者が確認してくれる保証のことです。
こちらもシロアリの発生被害の重大さを考えるなら、付与しておきたいオプションになります。
複数の業者で合い見積もりする場合、施工費用だけでなく、アフターケアがどれほど手厚いかも考慮して選定しましょう。
防蟻処理の種類
防蟻処理には、
- 土壌処理
- 木部処理
- ベイト工法
と主に3種類の防除方法があります。
土壌処理は基礎の内側や束石付近の土壌から建物へのシロアリの侵入を防ぐために薬剤を散布することです。
先ほども書いたように今の薬剤は安全性が高く自然素材のホウ酸などを使用しています。
木部処理は地面から1メートルまでの木部材に薬剤を吹き付けたり塗布することです。
防蟻だけでなく防腐効果のある薬剤を使います。
木材に穴を明け薬剤注入する方法もあります。
シロアリは湿った場所を好むので水回りの周辺は防蟻処理しておくほうが安心です。
どこまでの範囲で木部処理を行うか施工業者に確認してみましょう。
ベイト工法は薬剤を含んだエサをシロアリに与えて巣ごと死滅させる方法です。
土壌への薬剤散布を気にされる方におすすめです。
引用:construction record//kouzibunokiroku
参照:日本しろあり対策協会
新築工事での防蟻について
ここからは新築工事でおさえておきたい防蟻のポイントをご紹介。
薬剤処理だけでなく、シロアリを寄せつけにくい家づくりについても提案していきます。
1.建築基準法においての防蟻処理
何十年も長く暮らしていく住宅にとって必要不可欠ともいえる防蟻処理。
シロアリのリスクが高い木造住宅なら、建築基準法で防蟻処理が義務付けられているかというと、少々微妙になります。
第49条 外壁内部等の防腐措置等(建築基準法施行令)
一.木造の外壁のうち、鉄鋼モルタル塗その他軸組が腐りやすい構造である部分の下地には、防水紙その他これに類するものを使用しなければならない。
二.構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から1メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない
※電子政府の総合窓口より抜粋
このように『必要に応じて』という文言があるので、木造住宅を新築するとき必ず防蟻処理をしなければならないと法令で決まっているわけではありません。
だからこそ、住宅を建築するときには、見積書の中に防蟻処理の項目があるか必ず確認していただきたいのです。
そうはいっても、大手ハウスメーカーや工務店において防蟻処理は標準施工であることがほとんどなので安心してください。
引用:有限会社 利行建設
2.シロアリを防ぐ基礎工事
建物全体の荷重を支える基礎ですが、
- 布基礎
- べた基礎
の二つの工法があります。
床下全体にコンクリートを打つべた基礎と違い、布基礎は主に建物の外周と柱や壁の下に基礎を立ち上げてつくります。
そのため、柱や壁以外の場所は土がむき出しになっています。
全体を覆うべた基礎よりコンクリートや鉄筋の量が少なくコストを抑えられる分、土壌から水気が上がってくるので防湿シートを敷くなど湿気対策が必要です。
そのような理由でシロアリに強いのはべた基礎とされています。
しかし、土全体をコンクリートで覆うべた基礎だからといって油断はできません。
壁や柱を支える基礎の立上りは、型枠にコンクリートを流し込んで固めます。
そのとき、土台と立上りが一体化していなければ、その継ぎ目からシロアリが侵入する可能性があります。
大きな継ぎ目があると建物の構造上でもよくありません。
残念ながら、基礎型枠は施工する職人によって技術の差がありますし、住宅の基礎全体を見られる期間は限られています。
だからこそ、基礎工事のときは現地見学をした上で、施工管理者からしっかりと説明を受けましょう。
引用:ファインドプロ
3.床下の通気と点検口
住宅の床下は土壌やコンクリートからの湿気がたまりやすくなります。
暗くじめじめとした場所を好むシロアリにとって、住みやすい環境であるのは言うまでもありません。
だからこそ、床下の通気が大事になってきます。
昔は床下換気口を取り付けていましたが、基礎に穴をあける上に雨水が侵入しやすく通気性もよくありませんでした。
今の床下換気は基礎パッキンが主流となっています。
基礎パッキンとは基礎部と土台をくっつけずその間に挟みこむようにゴムや樹脂性の絶縁体を設置することです。
これにより基礎から土台へ湿気が浸透するのを防ぎ、建物全体に隙間があくことで通気が格段によくなります。
床下の湿気対策には、床下を強制的に換気する床下換気扇もあります。
床下の状況を目視するには床下点検口の設置が必要になります。
シロアリの点検のときに作業員が家のすみずみまで点検できるよう床下は30センチ以上の高さを確保しておきましょう。
引用:ナカ工業 床点検口
4.シロアリに強い木材と弱い木材
新築では基礎の上に組まれる土台の木材選定も大事です。
シロアリを防ぐだけでなく、腐りにくく耐久性の高い木材である必要があります。
- シロアリに強い:ヒバ、イヌマキ、カヤ、ローズウッドなど
- シロアリに弱い:アカマツ、モミ、ベイマツ、ホワイトウッドなど
簡単に言ってしまうと、シロアリは柔らかい木が好きで硬い木は苦手です。
硬さ以外にもシロアリの嫌う成分(ヒノキチオール)が含まれているかなども関係してきます。
しかし、どれだけ耐久性に優れたヒバであっても、そこに木があればシロアリは食べてしまいます。
だからこそ、硬く強い木材に防蟻処理を施すのが一般的になっています。
引用:山長商店
中古住宅の防蟻処理
中古物件を購入するときシロアリ点検は欠かせません。
物件選びの段階でシロアリが発生していないか売主や不動産屋に必ず確認しましょう。
その際に、前回の防蟻処理から何年経っているかも知っておく必要があります。
床下の通気性も購入前にチェックすべきポイントです。
他にも外壁にひびが入っているとそこから雨水が浸入して壁の中でシロアリが発生している場合がありますのでご注意を。
購入前に住宅診断(ホームインスペクション)を受けておくと、シロアリだけでなく防水や給排水も調べてもらえます。
検査箇所や項目によって費用は変わりますが5~20万円ぐらいになります。
中古物件によっては診断済みで売り出しているものもありますので不動産屋に確認してみましょう。
物件購入後は防蟻業者に床下など点検してもらいましょう。
点検と見積もりは無料という業者がほとんどなので、気軽に相談できます。
ウッドデッキなど住宅以外の場所でシロアリが発生している場合もあるので、敷地全体をみてもらったほうが確実です。
参照:LIXIL リアルティ
まとめ
べた基礎で床下の通気性が良く、耐久性に優れた木材を土台に使うことで、シロアリ被害をうけにくい家になります。
それは、シロアリに強いだけでなく長持ちする家をつくることにもつながっています。
見えない場所にこそ家を長く保つ秘けつがあるのかもしれませんね。