都心部などの住宅密集地では、戸建の建築に十分な広さの土地を見つけることが難しいです。
特に、東京や大阪などの大都市では地価も高く、小さい土地や変形地に家を建てなければならない場合もあります。
小さな土地では、窮屈な暮らしをしなければならないと思っていませんか?
狭小住宅でも、工夫次第でのびのびとした空間で快適な家を建てることができます。
今回は、狭小住宅のアイデアと建築の際の注意点をみていきましょう。
この記事の目次
狭小住宅とは?
広さと間取りについて
狭小住宅とは、一般的に15坪以下の土地に建てられた住宅のことを指します。
15坪と言われても、どのくらいの大きさなのかピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんので、15坪以下の土地に駐車場付きの戸建住宅を建てる場合を考えてみましょう。
まず、駐車場には約4坪の広さが必要です。そうすると、残りの11坪の土地に住宅を建てなければなりません。
さらに、住宅の外壁は周辺の土地との敷地境界線から最低でも50cm離しておかなければならないという決まりがあります。
また、土地は常に四角形の整形地とは限りません。三角形をした変形地の場合、どうしても建築できないスペースが出てしまいます。
こうしたことを考慮すると、実際に建てられる住宅の大きさは、10坪以下になってしまいます。
10坪の戸建住宅を建てるとすると、1坪=2畳なので、約20畳程度の広さとなります。
では、建築面積(建坪)が10坪程度の2階建て住宅の間取りは、どのようなものになるのでしょうか。
10坪の狭小住宅設計例と、設計術とは
まず、住宅に必要な最低限の設備それぞれの一般的な面積をみていきましょう。
- 玄関(収納付き)・・・約1坪
- 風呂と洗面室・・・各1坪、計2坪
- トイレ・・・0.5坪
- キッチン・・・1.5坪
1階にこれらの設備を入れるとすると、10坪のうち、4坪を設備が占め、残りの6坪にリビング・ダイニング、廊下(ホール)、そして2階へつながる階段を入れることになります。
階段や廊下には1.5~2坪の広さが必要になりますので、リビング・ダイニングは広くても4坪(8畳)程度になる計算になります。
しかし、家族団らんのスペースであるリビング・ダイニングが4坪では、せっかくの戸建住宅なのに少々窮屈になってしまいます。
風呂と洗面室は2階に設けるなど、設備は一つの階に集中させずに各階に分散させ、リビングスペースを広げると良いでしょう。
そうすると、1階のリビングスペースは6坪(12畳)程度とることができ、2階には風呂と洗面室以外に3坪(6畳)程度の個室を2部屋設けることができます。
狭い土地で、横が無理なら縦に広げる?
では、横に広さを取れないのであれば、縦に伸ばせば良いのではないかと思われるかもしれません。
確かに、2階・3階と階数を増やしていけば、住宅の延床面積を広く取れます。
しかし、土地には必ず、建築できる建物の高さを制限する条件がついています。「斜線制限」や、「絶対高さ」と呼ばれるものです。
こうした制限によって、建築できる高さが決まってしまいます。戸建住宅用の敷地では、高くても3階建てが限度となるでしょう。
このほかにも土地には様々な制限があり、予想よりも小さな住宅しか建てられないことが多くあります。
設計事務所の建築士に相談できる方は、土地購入前にどのような住宅が建築可能か尋ねてみると良いでしょう。
30坪程度の狭小住宅とは?
狭小住宅と呼ばれるものの中では、延床面積が30坪程度の住宅は比較的広々とした住宅になります。
各階15坪の広さの2階建てと仮定して、先ほどの例から考えると、各階5坪(10畳)の広さが追加されるので、個室を増やしたりリビングスペースを広げたりできます。
これは、4人程度の家族が生活するには十分可能な広さです。
10〜20坪の実例、間取りは?
それでは、実際に狭小住宅の間取りの実例をみていきましょう。
ここでは、延べ床面積が10~20坪の狭小住宅の間取りを2件ご紹介します。
1.延べ床面積19坪の家
引用:株式会社BLISS
この住宅は、延べ床面積が約19坪のコンパクトな住宅です。
部屋を細かく区切ることはせず、各階とも限られた敷地内で最大限の空間を確保しています。
また、設備部分のスペースを最小限に抑えることで、リビングスペースなどの空間を少しでも広げられるよう工夫されています。
3階の洋室上にはロフトと吹抜を設けており、これによって収納スペースを増加させるとともに、縦方向へ空間の広がりを持たせることで、実際よりも空間を広く感じることができます。
2.延べ床面積14坪の家
引用:ミサワホーム
延べ床面積が14坪の、非常に小さな住宅です。
狭小住宅の計画で重要なのは、壁で細かく仕切らないことと、廊下などの余白空間を極力少なくすることです。
この間取りでは、そうした余白空間を最小限にし、必要な部屋や設備をコンパクトに配置しています。
狭小住宅のアイデア
有効利用法
広さに限りのある狭小住宅ですが、縦方向の空間を上手く利用することで、便利で快適な家を建てることができます。
空間構成をする上でのアイデアいくつかみていきましょう。
1.スキップフロア
スキップフロアとは、1階と2階の間に中2階といった中間階を設ける空間の構成方法です。特に狭小住宅で採用されます。
各部屋を壁で仕切ってしまうと空間を狭く感じてしまいますが、スキップフロアのように空間を壁ではなく段差で区切ることで、部屋を区切りながらも視線の抜けを残すことができます。
そのため、空間がより広く感じられるという効果があります。
2.壁面収納
狭小住宅は、隣の家との距離が近いことが多く、プライバシーなどの観点から道路に面した壁面にしか大きな開口を設けることができない場合があります。
隣の家に面しており、開口を設けることができない壁面は、ただの壁として造るのではなく、一面を壁面収納として大いに有効活用しましょう。
3.階段下
階段下のスペースは、デッドスペースになりがちです。
十分な高さを確保することができなくても、階段に引き出しを設けることで収納として有効利用できます。
また、ある程度の高さが確保できる階段下は、トイレとしても活用できます。
4.ルーフバルコニー
狭小住宅では、バルコニーに十分な広さを確保することが難しいです。
そんな時は、ルーフバルコニーを設けてみましょう。小さくて窮屈なバルコニーを無理に作るよりも、広々として便利です。
工夫
空間構成だけでなく、建具や配置する家具によっても部屋をより広々と見せる工夫ができます。
1.ガラス戸
狭小住宅では、空間を広々と感じられるようにできる限り空間を仕切りを設けないという手法がよく取られますが、どうしても仕切りを設けたい場所もありますよね。
空間の広がりをできる限り残しつつ仕切りを設けたいのであれば、建具をガラスやすりガラス入りのものにすることがお勧めです。
隣の部屋の光が入ってくるので、空間を実際よりも広く感じられます。
また、建具の上の壁をガラスに変えることで、空間に広がりを持たせることができます。
2.背の高い家具を置かない
背の高い家具は圧迫感があるため、空間を狭い印象に変えてしまいがちです。
十分な広さが取れない狭小住宅では、配置する家具の高さを抑えて家具による圧迫感を減らしましょう。
また、こうすることで天井を実際よりも高く見せることができ、より空間を広く感じることができます。
3.床面をみせる
床面を見せるスペースを広げると、空間をより広く感じることができます。
階段下や壁面収納など、収納を工夫してできる限り床には物を置くことのないようにしてみましょう。
狭小住宅を建てる際の注意点
防音について
狭小住宅は、敷地目いっぱいに建てられ、隣家との距離が非常に近くなってしまうことが多いです。そうすると問題となってくるのが、騒音問題です。
十分な広さの敷地の場合、隣家との距離を十分に取れるので、お互いの出す音をそこまで気にすることはありませんが、狭小住宅では普通に生活をしているつもりでも近所に迷惑をかけてしまったり、隣家の音に悩まされることもあります。
建築した後でも防音マットを敷くなど、多少の対策はできますが、建築時に壁内に入れる断熱材を防音効果の高いものに変更したり、石膏ボードを2重にするなどの防音対策をしっかりとすることが重要です。
その分、建築費用が高くなってしまいますが、建築後に大幅な防音リフォームをするよりは確実に費用を抑えることができるので、できる限り取り入れるようにしましょう。
維持・メンテナンスについて
戸建住宅でもマンションでも、老朽化に伴う改修・補修は必ず必要です。
快適な暮らしを維持するためにも、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。
狭小住宅で特に気を付けたいのが、外部のメンテナンスです。
外部は目につきにくいので老朽化に気づきにくい箇所でもあります。
外壁や屋根は、素材によりますが10~20年に一度補修が必要になります。
補修の際には足場を設置する必要も出てきます。狭小住宅は、隣家との距離が近いために足場の設置が難しい場合もあります。
そうすると隣家の敷地を利用させてもらう必要が出てきたり、メンテナンス時の費用が割高になる場合もあります。
こうした事も考慮したうえで建物の配置を計画すると良いでしょう。
また、周辺の住宅に囲まれていると、住宅の正面以外の壁面を見る機会が少なくなってしまいます。
そうすると、外壁のクラックなどの発見が遅くなる場合があります。
気づかずに生活し続けてしまい、発見した時にはすでに壁内に水が侵入して建物の構造に悪影響を及ぼしてしまっている可能性もあります。
定期的に建築してもらった工務店さんなどに点検をお願いするといいでしょう。
まとめ
いかがでしたか。小さな敷地でも、工夫次第で快適な住宅を建てることができます。
狭小住宅ならではの空間構成の工夫や注意点を考慮して、素敵な住宅を手に入れましょう。