「長期優良住宅」という言葉をご存知でしょうか。
新築住宅を検討している方であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
様々な税制・融資等の優遇があり、利用される方が多いこの制度ですが、申請の流れや住んでからのメンテナンスなどあらかじめ知っておくべき大事なポイントがいくつかあります。
今回は、長期優良住宅として認定を受けるための費用や手順について、詳しく解説していきます。
この記事の目次
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、平成21年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」において、”長きにわたって住み続けることができる優良な住宅”として認定された住宅のことを指します。
この法律は、かつて第二次世界大戦直後や高度経済成長期において、住宅やオフィスの建設需要を満たすために「スクラップ&ビルド型」と呼ばれる、”壊しては建てる”を繰り返していた社会から、いいものを作り、きちんと手入れをすることで長く使う「ストック活用型」の社会へと転換していくことを目的として作られました。
国で定められた基準をクリアし、長期優良住宅として認定されると、住宅に関わる税金が軽減されたり、住宅ローンの金利が引き下げとなったり、様々な優遇措置や補助制度の適用が可能になります。
申請にかかる費用と手順を解説!ハウスメーカーにお願いできるの?
長期優良住宅として、様々な優遇を受けるためには、所管行政庁へ申請をして認定を受ける必要があります。
申請をするためにかかる費用や流れについて知っておきましょう。
長期優良住宅申請にはいくらかかる?
長期優良住宅の申請は、工務店やハウスメーカーにお願いするのが一般的です。
費用は諸条件によって異なりますが、おおよそ5〜6万円程度かかります。
また、所管行政庁による認定を受けるには、申請する住宅について構造や設備が良好であるか、面積は十分であるか、等の一定の基準を満たしている必要があります。
この基準をクリアするために、構造や仕様をグレードアップしなければならない場合があるかもしれません。
その場合の追加費用については、建てる工務店やハウスメーカーによって異なるため、担当者に相談しましょう。
長期優良住宅申請の流れ
- 第三者機関である登録住宅性能評価機関へ事前の技術的審査の申請を行う
- 登録住宅性能評価機関による審査
- 登録住宅性能評価機関から「適合証」を受理する
- 所管行政庁へ認定の申請
- 所管行政庁による審査
- 所管行政庁から「認定通知書」を受理する
- 着工
認定基準を満たした住宅を計画したら、いよいよ申請手続きに進みます。
所管行政庁への申請の前に「住宅の品質の確保の促進等に関する法律」に規定する、”登録住宅性能評価機関”による技術的審査を受けるのが標準的です。
認定基準について事前に技術的審査を受け、適合証の交付を受けます。
適合証を受理したら、長期優良住宅の建築及び維持保全に関する計画を作成し、適合証を添付して所管行政庁へ申請します。
この申請は、建物の工事に着手する前に行う必要があります。
所管行政庁の審査が完了すると、認定通知書が発行されます。
工事完了時には、原則として認定を受けた計画に基づいて工事が完了した旨の報告が必要となります。
ハウスメーカーはどのようなことをやってくれる?
認定申請を行う際は、下記の書類を準備する必要があります。
建築物の維持保全の方法・期間等、住宅の建築・維持保全にかかわる資金計画等について記したものです。
2.設計内容説明書
住宅の構造および設備が長期間使用できるものであることを説明したものです。
3.各種図面
付近見取図・配置図・仕様書・各階平面図・床面積求積表・2面以上の立面図等の図面です。
申請する住宅が、設計内容説明書の通り設計されていることを確認するための書類です。
4.各計算書
適合証を添付した場合は不要です。
5.その他必要な書類(所管行政庁が必要と認める図書)
登録住宅性能評価機関の技術的審査を受けた場合に受理する適合証などです。
このような非常に多くの書類を用意しなければなりません。
ハウスメーカーや工務店は、この書類の準備から申請まで一連の作業を一括して行ってくれます。
長期優良住宅とすることで住むのが遅くなる?
長期優良住宅では、認定申請に時間を要するため、一般の住宅に比べるとその分着工までに時間がかかり住むのが遅くなります。
諸条件によりますが、登録住宅性能評価期間による技術的審査に2〜3週間ほど、所管行政庁による審査にも2〜3週間ほどの余裕をみておきましょう。
長期優良住宅にはメンテナンスが不可欠!その理由と方法は?
申請が通っても気が抜けない?!長期優良住宅にメンテナンスが必須の理由
住宅を長期にわたって良好な状態で使用するためには、建築時において耐久性や耐震性を確保し、劣化対策を講じるとともに、工事完了後の定期点検や、適切に補修及び改良等を行うことが必要になります。
長期優良住宅では、住宅を建ててからの維持保全に関する基準も定められています。
認定を受けた方は、
- 申請時に作成した維持保全計画に従って計画的に点検を実施し、必要に応じて調査・修繕・改良を行う
- その内容の記録を作成し保存する
ということが求められます。
メンテナンスを怠るとペナルティも?
長期優良住宅を申請して、その優遇を受けている方は「認定長期優良住宅の維持保全状況」を報告する義務があります。
所管行政庁は、一部の方を対象に適切な維持保全・記録の作成保存がきちんと行われているかを確認するための抽出調査を行っているのです。
所管行政庁から報告を求められたときに、報告をしない、又は虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金に処せられることがあります。
また、認定を受けた者が計画に従って建築・維持保全を行わず、所管行政庁に改善を求められても従わない場合は認定を取り消されることがありますので注意しましょう。
長期優良住宅と一般住宅は何が違う?
長期優良住宅として認定を受けるためには、様々な性能が基準を満たしている必要があるとお話しましたが、一般の住宅とは違いがあるのでしょうか。
実際には、基準といっても今の新築住宅であれば当たり前のことも多く含まれているため、大手住宅メーカー等であれば長期優良住宅の申請を前提とした住宅を標準仕様としている場合も多くあります。
長期優良住宅の注意点
一般住宅建設中に長期優良住宅への転換は不可
長期優良住宅の認定申請は、前述の通り建物の着工前に行う必要があります。
そのため一般住宅として建設に着手してしまうと、長期優良住宅へ変更したいとなっても転換することはできません。
後から変更できないことを踏まえて、事前によく検討しておきましょう。
長期優良住宅を相続や売買する際は手続きが必要
相続・売買等により認定計画実施者の地位を引き継ぐ場合は、所管行政庁の承認が必要となります。
維持保全計画についても承継者に内容が引き継がれますので、計画の内容を確認した上で地位を引き継ぐ手続きを行ってください。
また、長期優良住宅を売買する際には、購入される方に対して維持保全計画に基づく更新工事、メンテナンス等を行い、その記録を保存する必要があることを伝えるようにしましょう。
まとめ
長期優良住宅は、金銭的なメリットだけでなく、今後安心して住み続けられる品質の担保や、環境への配慮にも繋がります。
費用や申請にかかる期間、工事完了後の報告義務やメンテナンスまでよく理解した上で利用するようにしましょう。