【人造大理石vs人工大理石】各設備メーカーの特徴を押さえ最適素材を選ぼう

キッチンのカウンターやお風呂の浴槽の素材には「大理石調の素材」があります。

人造大理石」や「人工大理石」と呼ばれる素材ですが、これは単に設備メーカーごと呼び名が違うだけではありません。

それぞれの違いを理解し、最適な素材を選びましょう。

人造大理石、人工大理石とは何?

「人造大理石」と「人工大理石」は天然大理石の風合いをもった素材で、天然大理石の代用品として使われています。

住宅では、キッチンカウンターや浴槽、洗面カウンターなどに多く使用されています。

「人造大理石」と「人工大理石」は天然大理石の風合いをもった同じような製品ですが、主成分や組成が違います。

そのため、製品により使用感や使用上の注意点、価格も違います。

人造大理石とは

人造大理石

(出典:コーリアンホームページより)

人造大理石は大理石や大理石と似た石を粉砕した破片をセメントや樹脂に混ぜて固めた人工素材です。

固めた後、研磨して大理石の鏡面仕上げのような光沢(艶)をだして、大理石の風合いに仕上げています。

人造大理石は艶を出すための磨きが必要なため、浴槽などの複雑な形状のものは向いていません。

そのため、比較的形状が平たんなキッチンカウンターや洗面カウンターに多く使われています。

人造大理石は「テラゾー」と呼ばれ、壁材や床材、外回り製品に多く使用されていました。

固める時に使用する素材がセメントか樹脂かにより性質が違い、混入される石によって色味やデザインが変わります。

人造大理石は、表面がなめらかで手入れが楽で耐候性や耐衝撃性に強いという特徴を持っています。

人工大理石とは?

人工大理石はポリエステルやアクリルを主成分とした樹脂でできた人工素材です。

天然素材を使用していないところが人造大理石と違います。

人工大理石は人工素材であるため、複雑な形状に加工したり、多彩な色を付けたりできる加工性の良さがメリットです。

また、研磨することなく素材に透明な風合いをもたせることができるため、複雑な形状の浴槽に多く使われています。

しかし、人工素材のため傷がつきやすい、手入れを間違えると艶がなくなるなどのデメリットがあります。

また、天然石が使われていませんので大理石素材の風合いはあまりありません。

人工大理石の主成分による違い

人造大理石と人工大理石には、混ぜる素材により「アクリル系」と「ポリエステル系」に種類が分かれています。

「アクリル系」のものは、無機物をアクリル樹脂に混ぜ、加熱、加圧成型して製造します。

加熱・加圧成型するため、表面はなめらかで製品全体の組成が均一化されているため、熱に強く、汚れにくくメンテナスしやすいという特徴を持っています。

また、「ポリエステル系の人工大理石」と比較すると、加工がしやすく、衝撃に強く、耐候性も高いものです。

「ポリエステル系」のものは、無機物をポリエステル樹脂に混ぜ、加熱、加圧成型して製造します。

「アクリル系のもの」と比較すると製品精度が劣る、紫外線に弱く黄ばみや反りがおこる可能性があるので、外部などの使用には向いていません。

また、「アクリル系のもの」より汚れがつきやすい、熱に弱いというデメリットもあるため、キッチンカウンターの使用には向いていません。

「ポリエステル系」の人工大理石のメリットは価格が安いことです。

各メーカーの人造大理石の特徴

「人造大理石」を使用している設備メーカーは主に4社。

  • トクラス(TOCLAS)
  • リクシル(LIXIL)
  • パナソニック(Panasonic)
  • タカラスタンダード

です。

トクラス(TOCLAS)

トクラス

(出典:トクラスホームページ

トクラスの旧社名はヤマハリビングテックです。

ピアノをつくる鏡面仕上げの技術をキッチンやユニットバス、洗面カウンターに取り入れた、質の高いデザイン性が魅力の会社です。

トクラスの人造大理石は自社工場で製造しているアクリル樹脂を使用しています。

そのため、他社と比較すると豊富なカラーバリエーションが用意されています。

いろいろなインテリアスタイルにあわせられ、自社製造品のため高品質で価格がリーズナブルです。

他社のキッチンカウンターの中には、ベニヤ等の基材の上を人造大理石でカバーした製品もありますが、トクラスのキッチンカウンターは押出成形品で作られている1枚物の製品です。

割れに強く、熱さに強く、汚れがつきにくい、掃除がしやすいこと特徴です。

浴槽の人造大理石もアクリル樹脂なので、光沢があり汚れがつきにくく、掃除がしやすく、FRP浴槽と比べると保温性も高い浴槽です。

(FRP浴槽:ガラス繊維強化プラスチックと呼ばれるプラスチック製品。不飽和ポリエステル樹脂にガラス繊維を混ぜた素材で耐久性・防水性が高い)

リクシル(LIXIL)

リクシルの人造大理石は、アクリル系の製品です。キッチンカウンターの種類は、

  • ステンレス
  • 人造大理石
  • セラミック

の3種類があります。

人造大理石は汚れが染み込みにくい、セラミックは熱による変色、変形に強い、耐衝撃性も高いとされているので、人造大理石の熱や衝撃による性能は確認が必要です。

人造大理石の浴槽は、ユニットバスの種類により3種類あります。

  • 最高級人造大理石グランザ
  • 人造大理石クレリアパール
  • クレリア

です。「グランザ」は厚い半透明の層と表面のアクリル鏡面の透明層でできた浴槽です。

「クレリアパール」はベース層(不飽和ポリエステル樹脂・ガラス繊維)にコート層・中間層・防汚クリア層(アクリルウレタン樹脂)の4層でできた、ポリエステル樹脂を基材とした人造大理石浴槽です。

「クレリア」は、ベース層(不飽和ポリエステル樹脂・ガラス繊維)にコート層・防汚クリア層(アクリルウレタン樹脂)の3層でできた、ポリエステル樹脂を基材とした人造大理石浴槽です。

価格は、グランザ>クレリアパール>クレリアの順番で価格が高くなります。

リクシルの商品

(出典:リクシルホームページ Q&A添付ファイルより)

パナソニック

パナソニックの人造大理石は、アクリル系です。

アクリル系となっていますが、熱さに対する性能をアクリル系樹脂や不飽和ポリエステル樹脂に水酸化アルミニウム等の充填剤をいれて耐熱性を高めています。

そのため、キッチンカウンターでは熱い鍋などを置くと割れ、変色、変形の原因になるとホームページに明記されていますので、使用時の注意事項を確認しておくと良いでしょう。

パナソニックの人造大理石の浴槽は、「アクアマーブル人造大理石浴槽」です。

フッ素配合の新素材で、素材を何層も重ねる技術によって、大理石のような深みや柄を表現したデザイン性のある浴槽です。

撥水やはつ油成分を表面だけでなく素材にも練りこんでいるため、汚れが付きにくくきれいが長持ちするという特徴を持っています。

FRPとアクアマーブル人造大理石

(出典:パナソニックホームページより)

タカラスタンダード

タカラスタンダード

(出典:タカラスタンダードホームページ

タカラスタンダードのキッチンカウンターはシンク一体型のアクリル人造大理石になっています。

カウンターとシンクの間に段差や隙間がないため、より清掃しやすいことが特徴です。

タカラスタンダードの人造大理石浴槽は、一層構造のアクリル人造大理石でできています。

厚みは9mmで表面がなめらかで傷がつきにくく、長くきれいなままを保てることと、簡単なお手入れでキレイが長持ちすることが特徴です。

デュポン社製人造大理石コーリアン🄬

設備メーカーの中には、デュポン社製の人造大理石「コーリアン🄬」をキッチンカウンターの仕様の一つに使っているメーカーがあります。

クリナップとTOTOです。

「コーリアン🄬」は、天然の鉱物質を主原料としてメチルメタクリート樹脂を化学融合させたメタクリル樹脂強化無機材からできている製品です。

高級感があり、見た目も滑らかで、加工がしやすく、耐久性が高い、高品質な素材です。

しかし、価格が高いことがデメリットで、そのため各設備メーカーが人造大理石や人工大理石の製品を用意しています。

各メーカーの人工大理石の特徴

「人工大理石」を使用している設備メーカーは、主に2社で、クリナップ、TOTOです。

クリナップ

クリナップ

(出典:クリナップホームページより)

クリナップのキッチンカウンターは、大理石調のカウンターとして人造大理石「コーリアン🄬」、人工大理石「アクリストン」を用意しています。

人工大理石の「アクリストン」はアクリル樹脂製で家具の象眼技術でカウンターに柄を入れてデザイン性を持たせているのが特徴です。

衝撃に強くて割れにくい、調味料や洗剤で変色しにくい、色合いが長持ちする、熱による変色もしにくい(ただし日常の使用では鍋敷き(厚さ1cm以上))という特徴を持っています。

浴槽の人工大理石は「アクリストン」と「アクリックス」があります。

「アクリストン」はキッチンカウンターと同じ素材で無垢素材(1枚物)ですが、「アクリックス」は3層でできている素材の一番表面がアクリル樹脂となっているコーティングタイプの浴槽です。

クリナップは、大理石調の製品のバリエーションが豊富なので、ショールームでは製品を実際に手でさわり使用感などを確認しながら選ぶと良いでしょう。

TOTO

TOTO

(出典:TOTOホームページより)

TOTOの大理石調キッチンカウンターは、デュポン社製人造大理石「コーリアン🄬」、人工大理石が用意されています。

TOTOの人工大理石キッチンカウンターは、アクリル系BMCという素材です。

熱硬化性の特殊樹脂と充填剤(フィラー)、強化繊維を均一に混合した成形材料をプレス成形して作られています。

良質な成形により均一なカウンターとなるため細かくカスタマイズできることが特徴です。

人造大理石「コーリアン🄬」と人工大理石の価格の違い

2550タイプシステムキッチンの場合、人工大理石より人造大理石「コーリアン🄬」の方が上代で153,000円高くなります。

(2020年3月現在※メーカー小売希望価格より)

TOTOの人工大理石浴槽は、ユニットバスの種類によりアクリル系人工大理石浴槽不飽和ポリエステル系人工大理石の浴槽があります。

TOTOのアクリル系人工大理石浴槽「お掃除らくらく人大浴槽」は、不飽和ポリエステル樹脂を基材とし、ベース層・パール層・浴槽表面の三層となっています。

汚れ落ちがスムーズで掃除がしやすいことが特徴です。

(出典:TOTO ホームページより)

不飽和ポリエステル系人工大理石の浴槽は、アクリル系の人工大理石浴槽より価格がリーズナブルです。

選ぶ際には、色や光沢、掃除のしやすさなどの違いを確認しましょう。

④ 人造大理石と人工大理石の選び方

人造大理石と人工大理石を選ぶ時のポイントは主に3つ。

  • 素材と性能
  • 色とデザイン
  • 価格

です。

素材と性能による選択

浴槽

性能は、素材や製法・一枚物(無垢)かコーティングタイプかにより違います。

キッチンカウンターの場合は、人造大理石「コーリアン🄬」の性能が優れていますが価格が高いため、それに近い製品を各設備メーカーが用意しています。

浴槽では、無垢素材(一枚物)と基材ポリエステル、表面アクリル素材の浴槽が主流でそれぞれ汚れのつきにくさや光沢に違いがあります。

素材や各設備メーカーの商品特徴により性能に差があるので、違いを理解した上で選択すると良いでしょう。

色とデザイン性

各設備メーカーにより用意されている色とデザインが違い、光沢(透明感)も差があります。

求めるインテリア性にマッチする色・デザインがあるか確認すると良いでしょう。

価格

各設備メーカーにより価格設定が違います。

また、上代と実際の施工込みの価格もメーカー、商品により違います。

一般的には、人造大理石「コーリアン🄬」>アクリル系人造大理石>人工大理石アクリル系>人工大理石ポリエステル系という順番で価格が高くなっています。

キッチンやユニットバスの予算や施工を伴う価格を確認した上で、性能やインテリアデザインを考慮して、総合的にどの素材を選ぶか決めると良いでしょう。

大理石調の製品は熱による変色で風合いが損なわれたり、大きな傷ができた場合の補修・交換が難しいものです。

後々、後悔することがないように、性能はどのぐらいのものを求めているか明確にしながら選ぶようにしましょう。